明日は娘の○○高校の進学説明会だから、と家内に言われたのは昨日の夜のことだ。その言外には、前にも言ったけど、という含みが感じられた。
ああ、そうだったね、とすっかり忘れていたことをうまく隠す。
で、明日は中学校のPTAの役があるので私はそっちに行きます。
え?
だから一人で行って来てください。
(それは初耳だ。聞いてない。)
で、行ったら出来る限り情報を集めて来てください。
もちろんだとも。
おれは諜報活動については高度な訓練を受けている。情報収集は得意分野といえる。
確か説明会の会場は新宿だったね、と知ったかぶりをする。一つ前の説明会は池袋だった。
渋谷だよ。
え、そうだったっけ?と軽くかわす。
開始は10時。遅れないでね、と念を押された。
となると、終わるのは昼時だな。
今の渋谷には詳しくない。
渋谷は庭だと豪語する友に、渋谷で激盛りの店を知らないか聞いてみる。
こんなとこしか思いつかない、とすぐに返事が来た。
沖縄料理か。おれ、沖縄料理は苦手なんだよね、と返事をすると、
泡盛出す店、ここくらいだよ、との返事。
は?泡盛?泡盛じゃなくて激盛りだよ、ゲキモリ!
多分もう飲んでいたのだろう。脳みそまで肝臓のような友である。それか、さりげなく頭の回転の早いところ見せつけたか。ははは。まあ、自分で探すか。
今朝。
かなり早く家を出て、普通列車で渋谷へ向かう。普通列車に乗ったのは座って読みかけの小説を読むためだ。30分は読書できる。案の定、普通列車はガラガラで、ガンガン冷房が効いていた。
小説のクライマックス寸前まで読んだところで明大前駅に着き、乗り換えて渋谷へ。説明会場は駅からそばで、ゆっくり歩いて早めに着いた。
ビルに入ると立看板があり、8F ○○高校説明会、と書かれてある。○○高校?
XX高校ではなかったか?場所間違えたか。
家内に慌てて電話をする。幸い家内はすぐに電話に出た。○○高校だったっけ、XXじゃなくて。
○○だよ、と呆れたような返事。まあ、ちょっと暑かったからだ。
説明会は盛況で、自分が着席した時はガラガラだったが、会が始まるころには満席になった。
重要事項は全て書き留め、さらに大事な点には赤線で下線を引いておく。こんな学校に通えるようになれば、と思うが、この高校を受けるかどうかは娘次第だ。受かるかどうかも娘次第。親としてはできるだけ情報を集めて選択肢を増やし、やる気を育てることしかできない。しかし、渋谷はちと遠いな、とは思った。
会が終わったのは12:30であった。激盛りの店は数軒調べてあったが、暑さのせいか食欲がない。どーすっかな。
いつの間にかこんなに高いビルが建っていた。
自分もガイジンになった気がする。
シブヤの顔はシロー•イトー。
めしは抜こう。今月はダイエット月間だし。一応、歩くことも考えて、短パンとTシャツは持って来てある。どこかで着替えないとおニューの長ズボンが汗だくになる。食事を抜いて、散歩する。明大前まで歩くことにする。
結局、渋谷から出て、代々木公園でトイレを見つけてそこで着替える。
何かの祭をやっていた。
マスコットくんがおれに向かって手を振ってくれた。
タイ料理もある。だが、この炎天下では食べる気にならない。
シンハがないではないか。
歩く。
山手通り通過。
暑い。
この登り坂がネフド砂漠の砂丘に見えた。
砂漠と思ったらモスクまであった。暑いと思ったが、ここはアラブか。東京ジャーミー。
気温が体力を奪って行くのがわかる。何か飲んだ方がいいか。いや、もう少しがんばろう。ここは砂漠だ。水などない。
こんなところで遭難するわけにはいかない。帰宅して、今日集めた高校の情報を参謀本部(家内)と前線部隊(娘)に報告しないといけない。そこまでやって任務完了だ。
環七通過。もうすぐだ。
1時間くらい歩いただろうか。でも、汗びっしょりだ。
明大前駅が見えてきた。
松のやもあった。電車に乗る前に食べるか。でも、クーポンは早まって息子にあげてしまったし、食べたら必ずおかわりするにきまってる。おかわり無料だ。ダイエット中だ。やめとく。
6キロしか歩いてない。
渋谷と明大前って、自宅と職場より近いのか!
帰宅して、水シャワーを浴びて、体重を測ったが、ほとんど昨日と変化なし。早くも停滞期に入ったようだ。しばらくは辛抱だ。多分、いつかガクンと落ちる。
とりあえず、夜を待たずに氷水を飲んだ。