木曜日の午前中は書道教室に通っている。教室の会場の市の施設は職場から自転車で15分ほどのところにある。

 

教室といっても市が主催するカルチャーセンターみたいなもので本格的なものではない。生徒は主にリタイアした市民で、それも女性ばかり8人で、市外から高名な女性の先生をお招きして開かれるほのぼのとしたものだ。その中で55歳男性の自分は異質といえる。

 

2時間ほどの教室だが、それでは十分ではないので毎回宿題が出て、次回までに自習する課題が与えられる。

 

自分はまじめな生徒で、これまで出された課題以上の自習をこなしてきた。

 

まじめな、と書いたけれど、実際は酒を飲んで興が乗ってきて書きまくる、といったほうが正しい。教室のやや緊張した環境より、自宅で酔っぱらって書いた方がなんだかうまく書ける気がする。事実そうだったと思う。

 

ジャッキー・チェンの出世作に、酔拳という映画があったのを思い出す。酔えば酔うほど強くなるというコメディのカンフー映画だ。酒飲みとしては全くの理想で、酔えば酔うほどなんでもうまくできるのであれば、自分などはあらゆる道の達人になれるのではないか。少なくとも書はそれに近い、といささか錯覚して筆を執る。

 

自宅で書いたものを次回の教室で先生に添削してもらう。酔拳になったつもりで書いた自分の書に先生の朱が入ると嘘のようにいい字になる。酔拳は鼻をへし折られて、添削していただいた書をその場で練習しなおす。

 

それが、先週は断食断酒などしてしまったりしたこともあって宿題はさぼった。完全にさぼった。一枚も書いていない。断酒をしていては話にならなかった。酔拳の中のジャッキーも、酒がないとごくありきたりのカンフーの使い手に過ぎなかった。添削していただくものもないでの今日は教室にいっても何を書いたものだか。2時間針の筵か。一気に不良学生になって、やさぐれた気分である。

 

それどころか、先週居残りして先生と二人で世間話などしながら、使っている小筆が娘のおさがりでこんなボロですと見せたら、先生のお手持ちの小筆を勧められてその場でその新品の小筆を買ったのだが、それを下ろしてさえいない。



頂いた筆を下ろさず、宿題も一枚も書かず、とても行きづらい今日の教室である。


それでも、同好の人が集まってそれぞれ書に向かうのは楽しみではある。こっそり見せあって微笑んだり、お世辞だけど褒めあったりする。今日は居心地悪くなりそうだが、新品の小筆を下ろす楽しみもある。

 

書道のあとは駅まで出てとんかつ屋で昼食をとるのがこれまでのパターンだったが、健診まではそれは封印する。


書道の日は仕事時間がその分短くなるので早く出勤するが、今朝出社してみるとこれといったメールもなく、部下に回せるメールはさっさとメモをつけて転送しておき、昨日やり残した仕事もなく、書道教室の時間を待ちながらつまらない記事をだらだらと書いて過ごしている。