ニュースで、こどもファストトラック導入、ということを報じていた。

施設などで子連れの人が優先的に入場できる取り組みだという。

 

自分の場合、ファストトラックと聞いて真っ先に思いつくのは空港でのチェックインだ。

ファーストクラスやビジネスクラスには専用のカウンターがあって、利用者はほとんど並ぶことなくチェックインできる。

 

一方、大多数のエコノミー利用者は限られたカウンターに殺到する。ファーストクラスのカウンターには誰も並んでいないのに、エコノミーは大行列をなしている。

 

持つ者と待たぬ者の格差がこれほど歴然と、大っぴらに展開される例は珍しい。もはやそれは格差社会の縮図と言える。もっと言えば差別になる。

 

これが日本国内ならまだいい。日本人はお行儀がいいのだ。中東などに行くと早い者勝ちというか、割り込み上等、すり抜け御免と油断していたらいつまで経っても自分の順番が回って来なくなる。

 

自分もほとんどの場合、エコノミーなのであって格差社会の底辺を味わう。出張先から帰る日は早めに空港へ行く。カウンターがあくまでしばらく待つにしても、行列ができてしまってから並んで待つよりまだましだ。列をなすおじさんの中には後ろから妙に間隔を詰めてくる人もいるし、中には実際に手でこっちの背中を押してくるヒゲ面もいたりする。それにカウンターでチェックインするのにやたら時間がかかる人がいたり、これは見るからに問題になるなと思うくらい大荷物を抱えている人がいたり、不快指数は結構高い。

 

ところが、おおむね時間にルーズなその国の人たちが、空港へは随分早く来て、カウンターが開く前にすでに大行列だったりすることがあったりして愕然とする。あんたら、いつも時間に遅れて来るのに、飛行機だけはこれかい!と突っ込みたくなる。

 

しかしそれは過去の話だ。オンラインチェックインがすべてを変えた。

 

自分はほかの人より早くこれを利用し始めた。オンラインチェックインを済ませてきた人専用のカウンターがあり、人口密度はビジネスクラスのカウンター並みだった。オンラインで済ませてない場合は2時間前には来い、ということだったが済ませておけば1時間前でも大丈夫。そのうちほとんどの人がオンラインで済ませるようになった。

 

ただし油断はならない。帰国前日、オンラインチェックインをしようとするとホテルのWIFIがうまくつながらなかったり、航空会社のサイトがちゃんと動作しなかったりする。まあ、それもコロナ前のことで今ではそんなこともなくなってるかもしれない。

 

さて、こどもファストトラックだが、その発想は、子供を連れた人たちはその場においては社会的弱者であるから手を差し伸べようというあたりにあるのだろう。

 

賛否分かれそうな話だ。なぜ子供ばかり優先するのか、とか、子供を甘やかすな、とか、待つことも教育の一つ、とかの反対論は容易に想像される。一方、子供を抱えた当事者からは歓迎されるだろうし、そうすることによって全体の流れがよくなると考える人もいるだろう。

 

しかしより広範な目で、社会的弱者に手を差し伸べると考えるのであれば、ほかにも優先されるべき人はいる。高齢者、妊婦、障碍者など。しかし中には、わしは優先されるほど年は取っておらん!と骨のある人も必ず、すくなからずいるはずだ。

 

一方、子供の中にも、おれっちはこんな元気だ、優先されるなんてまっぴらだい!という気骨のあるガキもまだいると思う。ひとくくりに、こづれ優先、というのもおかしなルールにも思える。

 

思うに、社会的弱者かどうかは、自分がそう感じてしまうかどうかではないか。若くて普段は元気でも残業の連続で時限的に疲れてしまっている人だっている。その状態ではさっき食事を済ませたばかりの高齢者より弱者かもしれない。おれは太っていて格好悪い、と思えば弱者だが、恰幅があって貫禄があると考える人は弱者ではない。毛髪が不自由な人(つまりハゲ)だってそれを負い目を感じていたら社会的弱者だ。一方、自ら好んでスキンヘッドにしてしまう人だっている。コンプレックスを持つ人はすべて社会的弱者であり、現代社会で社会的弱者でない人などいないだろうと思う。

 

ハゲ・ファストトラックだって、デブ・ファストトラックだってありうるわけだ。ハゲに誇りを持っていればそのトラックを使う必要はない。一体どんな施設でデブ・ファストトラックを用意するのかって?うーん、デブやハゲを優先的に入場させるべき施設か。そこまでは考えていなかったが考えれば何かありそうな気もする。社会的弱者ってなんだって考えていたらこんなアホで無茶苦茶な記事になっただけだ。コンプレックスまみれの自分などは多重債務者ならぬ、多重社会的弱者である。

 

こどもファストトラック。これが異次元の少子化対策の一部らしい。少子化対策はもっと別なやり方があるような気がするし「異次元」に限って言うなら、Lousめのハゲ・ファストトラック論の方がすっと異次元だと思う。政権には、おれがびっくりするような、それがたとえ笑ってしまうようなものでも、それは苦笑いではなくて、アホすぎて涙が出るほど呆れ笑いするような、本当に異次元な政策を大胆に打ってもらいたいと願う。