切手の収集を趣味にしたことはない。

しかし、ある日思いついて職場に届く郵便物の消印入り切手を娘に持って帰って見せてやった。定規とカッターで封筒から丁寧に切手を切り取る。

 

締め日の20日から数日は、いらないのに請求書がたくさん来る。開封して中身を改めてため息をついてから切手の切り取り作業にかかる。思った以上に娘が喜んだので、調子に乗ってすべての郵便物から切手を取りあさる。同じ切手が何枚あってもいいというので、一番多い梅の図柄の82円切手は相当な数がたまった。初めて見る柄の切手があるとなんだかうれしくなり、大きな郵便物についてくる120円切手などあると、娘の喜ぶ顔が目に浮かぶ。珍しい切手があるとそれに気が行ってしまって、開封する前に切り取ってしまい、中身の請求書まで四角く切り抜いてしまうこともあった。

 

こどもだから消印入りのものでいいのだ。世の中にはこういうもの(本当は新品を)を集めるのが趣味の人がいるんだよ、と教える。よく見ればどの柄もきれいだ。集めてみると小さな美術館のような気がしてくる。切手集めも悪い趣味じゃないな、と思えてきた。娘は100円ショップで買ったカードホルダーに入れて大事にとっている。今に見返り美人が欲しいとか言ってきそうな気もする。

 

話は変わる。

先週末は娘のバトミントンの試合を見に行った。始めたばかりだが相手も始めたばかりの同級生の3年生の子だった。コートを挟んで握手してから試合開始だ。二人ともべた足で、サーブが入った方が勝ち、といった試合展開。相手がサーブを打つ順番なのに自分がサーブを打ったり、サーブごとに打つポジションが変わるのにそうしなかったりでやり直しが多く、また落ちた羽をサーブする相手にもっていくのにのんびり歩いて行ったりで、打ち合いがほとんどない割には試合時間が長い。間違えるとお互いににこにこしちゃって緊張感もない。バトミントンをやっているというよりか、羽子板で羽根つきをやっているように見えた。たまに奇跡的にラリーが続くと歓声が上がる。黄色いユニホームが娘ちゃん。

 



点数だけは大接戦で、結局負けた。上級生のお姉さんたちの中には負けて大泣きしている子もいたが、うちの子はやっぱりにこにこして帰ってきた。娘に勝った子は勝ち上がって同級生ながら経験者の子にコテンパンにやられた。娘が練習してもあの子ほどうまくなれるとはとても思えなかった。それでも後で娘にきいたら、試合ってのは面白いものなのだそうだ。

 

切手集めという大人っぽい趣味に足を踏み入れたり、初めての子とバトミントンの試合をしたり、だんだん世の中に出ていくのだなあと思う。抜けた後なかなか生えてこなかった前歯がやっと生えてきた、と喜んでいる。こんな子でもすぐ大人になるんだろうな、とちょっと実感した。