「読まなくてもいい本」の読書案内 | 後藤組社長 後藤茂之のブログ

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橘玲著『「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する』
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この著者の本を読む度に頭が良い人だなぁと思っていたが、今回は呆れた。
呆れたというのは、その頭の良さにです。
こんな変な題名の本を買ったのは著者が橘玲だからなのですが、買って大正解でした。

なにせ、複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学をこんなに平易にわかりやすく説明してくれる本があるでしょうか?
それぞれの専門書を自分で読んで理解しようとしたら何百時間かかるかわからない(あるいは自分の頭のレベルでは難解で一生理解できない可能性が高い)ものをたった一冊で概略が理解できるようになるのです!
しかも、それぞれの理論を簡単に説明するだけでなく、それぞれの関連性と未来への応用方法にまとめてあるという素晴らしい本。
知的好奇心が旺盛な人なら絶対に買いです。

以下、ほんのちょっとだけ抜粋。

DNAはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四種類の記号(塩基)でできているから、どんな複雑な組織も単純な暗号(なんといっても四文字しかない)の組み合わせから作られているはずだ。そんな制約の中で「複雑」なものを生み出そうとすれば、いちどできた組織を次のステップでもまた使う以外に方法はない。これが、「自己組織化」で、自分のなかに自分を取り込んだり、自分の一部を外に押し出したりして成長していくことだ。カリフラワーだけではなく、巻貝やシマウマの模様、シダの葉脈、肺の気管支や脳のシナプスなど、自然のなかに同様の構造はいくらでも見つけることができる。マンデルプロはこれを、「割れた」「砕けた」を表すラテン語の形容詞「fractus 」から「フラクタイル」と名づけた。自分を次々と複製する「自己相似」によって「自己組織化」し、「ラフネス(複雑さ)」を生み出すことで、そこには必ず「ベキ分布」があるのだ。

日本ではあいかわらず「文系」「理系」の二分法が使われていて、進化論は理系の世界の話しだと思われているが、進化論はいま、社会学や、心理学といった「文系」の分野にも拡張され、社会科学を根底から組み替えようとしている。「現代の進化論」こそが知の最先端なのだ。

矛盾する認知に直面した状態を「認知的不協和」という。このケースでは「笑った」という認知と、「笑う理由はない」という認知が矛盾している。これはきわめて気味の悪い出来事なので、自意識は(脳のなかにふたつの人格があるという)不愉快な真実を嫌って、「先生が面白い顔をした」という快適なウソをでっちあげるのだ。

ヒトやチンパンジーのような社会的な生き物は、外見(表情)から相手の内面を読めないと群れのなかでうまく生きていくことができないのだ。

意識に現れる「自由な心」はよくできた幻想にすぎない-----これはほぼ間違いないでしょう。「意思」はあくまで活動の結果であって、原因ではありません。

幸福なひとは幸福な隣人と、不幸なひとは不幸な隣人とつき合う傾向があり、ネットワークの本線にいるほど幸福度が高い。同様に喫煙者は喫煙者と、非喫煙者は非喫煙者とつき合い、ヘビースモーカーほど枝の末端にいることが多い(友達がすくない)。

脳科学は、ぼくたちのこころ(意識)がニューロンの電気的・化学的反応、すなわち物理現象にすぎないことを明らかにしつつある。脳のネットワークは単純な規則から自己組織化する複雑系のスモールワールドで、そのとてつもない複雑性から”意識”が立ち上がってくるのだ。

遺伝子、脳化学、進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学、統計学、ビッグデータ、複雑系などの新しい”知”は、進化論を土台として一つに融合し、ニューロンから意識(こころ)、個人から社会・経済へと至るすべての領域で巨大な「知のパラダイム転換」を引き起こしている。これによって自然科学と人文諸科学は統合され、旧来の経済学、哲学、心理学、社会学、政治学、法学などは10年もすればまったく別のものになっているだろう。

もし世の中のひとの六割(五割でもいい)がトレードオフをちゃんとわかっていれば、戦争や内乱、飢餓や貧困などの悲劇のほとんどは解決できてしまうだろう。