コラム第69回 2015年12月14日 「属すること、行うこと」 | GTBコンサルティング 平賀 正志(中小企業診断士)

師走も半ばになり、忙しくなどしたくなくても勝手にそうなる季節になりましたが、皆様におかれましてはどんな年末へのアプローチをされていますでしょうか。
済ませてしまうべきことは、年を越さないようにしたいものです。


さて、「中小企業における人材採用の困難さ」というものをよく言われます。
「大企業だとネームバリューがあるから人(=求職者)が集まりやすいが、中小企業はそうでない」と。

これは、非常に日本的な発想が根源となって起こっている事象だと私は考えます。
(私自身は過去に、全く一般の求職者として英国で就職活動を行い、就職し、かつ4年以上に渡ってその会社にて仕事した経験がありますので、単なる知識としてだけでなく、自らの体験としてもこれを語ることができます)

と言いますのは、日本の就職活動と外国のそれが完全に異なるが故、だからです。

これは近頃になってようやく言われるようになりましたが、
日本では「就社」
外国では「就職」

をしようと求職者が考えるからなのです。

日本では「どの集団に属するか、が最も関心の高いこと」であり、
外国では「自身がどんな役割を演じるか、が最も関心の高いこと」であります。

例を挙げますと、

…日本にて「お仕事は?」と尋ねると、「●●に勤めています」と答えるのがその代表例でしょうし(最近はご自身の個人情報を守るという観点が出て来たからか、単に「会社員」とお答えになる方が増えてきているとは思いますけれども)、

…外国で同じように尋ねると、「セールスの仕事をしている」「広報の仕事をしている」「フロアマネジャーだ」など具体的に担当している業務が答えとして帰って来るでしょう。
(会社の名前は、尋ねれば教えてくれるでしょうが、尋ねたところで「聞いたことないよね」となるのが積の山でしょう)


この考え方が、根本において変わらない限りにおいては、中小の事業者様は採用に苦しまれ続けると考えます。だって、その会社でご自身が何をするかよりも、会社の看板だけを見ようとすれば、それは大きな企業(プラス役所・公立学校など)のほうが安定度は高いし、周囲の方々にもどんなところに勤めているのかがわかりやすいわけですからね、そちらを選ぶ方が多くてもおかしいとは言えません。
(私個人としては、あまりに夢のない職業選択の仕方だとは思いますけれど)

では、そういうマインドセットの中で、どうやっていくか。

私としては、ベタに、その仕事を通して、

「一緒に、どんなふうに成長していきたいか」
「会社全体として、どんな人々の集まりになりたいか」
「社会にどう貢献するか」

を熱く語るしかないと思うのです。要は、

「今、出来上がっているもの(大企業、役所)ではなく、自分達が本当になりたい姿に自力でなっていこう。そのプロセスを楽しもう」

ということを、きちんと会社の方向性として打ち出して、求職している方々に言えるのかどうかではないでしょうか。

このことができたからと言って、すぐに日本の風潮が変わるとは思いません。
ですが、「自分が会社やお店を経営する」のは何故なのでしょうか。他の誰でもない自分がやることによって、「何かしら世間に問いたい、世間の役に立ちたい」からだと思います。それは従業員の方(もしくはこれから入社する方、求職中の方)でも同じはずです。

それを経営者である、皆さんが論理的に、かつ熱く語れているかどうか。
そこが不十分なのです。
故に「属すること」や「単純に金銭の寡多」のみに焦点が集まるのだと思います。そうなってしまっては、全てが大きいものに飲まれていくだけです。だとしたら、我々はなぜ存在するのでしょうか・・・?

禅問答のようになっていますが、そのくらい根本まで突き詰めて考えるべき事柄なのだと私は考えます。求職を受ける(採用する)ということは、その採用者の生活のいくばくかを引き受けることでもあります。彼らに誠意を求めるならば、こちらも誠意をもって対応しなくてはなりません。

きちんと、自分達が「行うこと」「行いたいこと」「行うべきこと」を明確にして、旗色鮮明にし、世間に自分達の姿を映していきたいと思うのですが、皆様は如何思われますでしょうか。

こういうお話しも経営者の方とぜひさせていただきたいと思っておりますので、お声掛けくださるのをいつもお待ちしております!

では、年末慌ただしいですが、頑張っていきましょう。



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