読書感想駄文【桜の森満開の下】坂口安吾 | お小遣い2.5マソだけどリッターバイク買っちゃった

お小遣い2.5マソだけどリッターバイク買っちゃった

ヨメさんに事後承諾で買ったリッターバイク
維持費はお小遣いで賄う事になりました。本当にやっていけるのかしらん?

初めて中型のバイク手に入れて浮かれていた時代の話。にやり

近所に桜トンネルと言われる桜の名所があって、
深夜にバイクで行ってみた訳。

街灯に照らし出される満開の桜とバイク。

普段は花見の人で溢れてるのだが、深夜なので誰も居ない。
しばらく、缶コーヒーでも飲んでバイクを眺めていようと思ったんだけど、
なんとも落ち着かない気分になってきて、そそくさと引き上げてしまったのよね。

何故か逃げだしたくなるような感情。

 

そんな出来事もすっかり忘れ、

大分時は流れて

 

坂口安吾の作品『桜の森の満開の下』を読みました。

(今は青空文庫で読めます。)

 

 

 
 

 

桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足だそく)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。

桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になる――

 

ん?

なんか気になるフレーズだなと思いましたが、読んだ時はバイクの事も忘れていて、

なんだか話も正直ピンときませんでした。

 

そして、

さらに時は流れて


私の好きな作家、森見登美彦による短編小説集『【新釈】走れメロス 他四篇』を読んだのです。

 

 

基本的に有名小説のパロディとなっていますが、
あなどる事なかれ!
原作を人一倍解釈していて、更に原作への愛がなければ書けない作品となっていて至極の名作群なのです。

その中に坂口安吾の『桜の森の満開の下』のパロディも載っていて
それを読んだときに、あの時のバイクの光景が蘇り、

何故あんなにも落ちつかない気持ちになったのか完全に理解できたのです。

なるほど、坂口安吾はこういう事が言いたかったのだと、

つまりはかけがえない人が居なくなってしまった事への風景を連想させる訳なのです。

家庭をもって初めて解る事もあるのだと気付かされました、坂口安吾を理解するには若すぎたのかもしれません。
どんな解説よ読むよりも理解が出来るとは凄い事じゃないですか?
森見登美彦はやっぱり好きだな。
まあ、

私が坂口安吾を読み解くことが出来なかっただけなんでしょうが、、、


さらに

これには後日談がありまして、


安吾が後に書いたエッセイ『桜の花ざかり』を知る事となり

(これも青空文庫で読めます。)

三月十日の初の大空襲に十万ちかい人が死んで、その死者を一時上野の山に集めて焼いたりした。
 まもなくその上野の山にやっぱり桜の花がさいて、しかしそこには緋のモーセンも茶店もなければ、人通りもありゃしない。ただもう桜の花ざかりを野ッ原と同じように風がヒョウヒョウと吹いていただけである。そして花ビラが散っていた。


東京大空襲の死者たちを上野の山に集めて焼いたとき、折りしも桜が満開で、人けのない森を風だけが吹き抜け、「逃げだしたくなるような静寂がはりつめて」いたと記されている。
これが『桜の森満開の下』を書くきっかけになった原風景だそうだ。


ふと気がつくと、にわかに逃げだしたくなるような静寂がはりつめているのであった。


まさに、あのバイクの時に感じた感情であった。

さらに蛇足的に付け加えるなら、あの場所は戦時中海軍の大規模な工場があり、爆撃を受けてかなりの死傷者が出たまさにその跡地の公園なのであった。(後に知る事となる

この怖いほどの符丁はなんなのであろうか?


信じるか信じないかはあなた次第です。


お は り !