大人の社会科見学――上野アンダーグラウンド | Love&Sex Navi!

大人の社会科見学――上野アンダーグラウンド

先月、7月30日(土)に「大人の学校」の亀山早苗ゼミ第1回「ゲスか、純愛か――“不倫”を考える!」をお陰様で盛会に終えることができた。花火や帰省など、夏の忙しい中、ご来場いただいた方へ感謝である。
 
常任講師の亀山早苗様の8月に出る(現在はアマゾンの社会心理学部門の第1位を獲得!)新刊『人はなぜ不倫をするのか』 (SB新書)と、ゲスト講師の坂爪真吾様の昨年、出版された話題作『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』 (光文社新書) を“教材”に「不倫」を語りつくす。ゲスやダブル、アモーレ・ラブホ、プラトニックなどの不倫から交際クラブ、ポリアモニー、不倫の損害賠償、ジェンダー研究、動物行動学、性科学、婚姻制度まで…縦横無尽、快刀乱麻。亀山・坂爪流の「不倫学」の確立か。まさに“All About 不倫”。大人が不倫と向き合う3時間だった。
 
知的好奇心を満たし、新たな視点を獲得する。詳述は改めるが、いま、不倫について、聞くなら亀山早苗様、坂爪真吾様しかいないと言われている。実際、メディアへの登場回数も半端ではない。不倫のエキスパートによる不倫談義。五輪の金メダル級のゼミナールになったのではないだろうか。次回も楽しみにしてもらいたい。夏休み明けには告知したいところである。
 

知的好奇心を満たし、新たな視点を獲得する――そんな“大人の社会科見学”へ行ってきた。先日、8月9日(火)に、神田・神保町の東京堂書店で、ノンフィクション作家の本橋信宏の新刊『上野アンダーグラウンド』(駒草出版)の出版を記念するトークイベントが開催されたのだ。
 
同氏は1956年4月4日所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。現在、都内暮らし。半生を振り返り、バブル焼け跡派を自称する。執筆内容はノンフィクション・小説・エッセイ・評論と、多岐に渡る。私の好きな作家である。AVの帝王・村西とおるとの交流(村西の会社でスタッフとして働いていた)から生まれた自伝的ノンフィクション(!)『裏本時代』 (幻冬舎アウトロー文庫) 、『AV時代―村西とおるとその時代 』(幻冬舎アウトロー文庫)はお勧め。昭和エロスをプレイバックしている。
 
プロフィール紹介が長くなったが、新聞や雑誌、ネットなどで話題になり、各書店のベストセラーにもランクインしている『上野アンダーグラウンド』の目次を引用しておく。
 
 第1章 高低差が生んだ混沌
 第2章 上野“九龍城ビル”に潜入する
 第3章 男色の街上野
 第4章 秘密を宿す女たち
 第5章 宝石とスラム街
 第6章 アメ横の光と影
 第7章 不忍池の蓮の葉に溜まる者たち
 第8章 パチンコ村とキムチ横丁
 第9章 事件とドラマは上野で起きる
 
と、目次を見るだけでも血沸き肉躍るだろう。詳述すると、上野の寺社や博物館、動物園、ホモ映画館、ホモバー、ホモサウナ、中国エステ、出会い喫茶、ハプバー、アメ横、キムチ横丁、パチンコ村、ジュエリータウン、スラム街…など、魅惑(困惑!?)のスポットを中国エステ嬢、フィリピンパブ・ホステス、男色家、不倫人妻、愛人、似顔絵描き、路上占い師…など、個性豊かな登場人物とともに紹介していく。
 

『上野アンダーグラウンド』に先駆ける“台東区シリーズ”の第1弾として『東京最後の異界鶯谷』(宝島社)も出ているが、突撃、潜入取材を試みつつ、過去と現在、聖と俗を行き来しながらその土地を深淵と表層を描いていみせる。本橋流のタウンガイド“台東区の歩き方”か。“墨東綺譚”ならぬ“台東奇譚”。アングラ版“アド街”という趣だ。
 
同イベントは 同書に登場し、取材中に衝撃告白をしたK編集長、パチンコ業界事情通I編集長、突撃取材の杉山編集長、不忍池に集う男女を撮りつづけるカメラマン・山縣勉、田中角栄の甥・官能作家・ポルノ男優・ホモ映画界のレジェンド男優・山科薫をゲストに上野のディープエリアをトークと秘蔵写真でガイドするというもの。
 

1時30分ほどの講演時間にしてはゲストも多数、登場人物や紹介すべき場所も少なくなく、収まるかと思ったが、見事に同書でも報告された事件や人物が余すところなく紹介される。本橋自らリオ五輪の卓球団体チーム、日本競泳リレーチーム(いまなら陸上男子400mリレーチームか)ようなチームワークの良さというが、小気味いいテンポ、絶妙な間合いである。口舌の滑らかさは寅さん並み。上野の闇がぱっくりと目の前に立ち現れる。気付くと、“上野アンダーグラウンド”をバーチャル体験している自分がいた。
 

本橋探検隊が巡る上野は“気にスポ”満載だが、“遊び人”には馴染みのあるところも多い。ハプニングバーなど、同書では簡単に紹介されているが、度重なる摘発で、上野はハプバーのメッカであることは有名。カップル喫茶なども多かった。いまも「まべnavi」で検索すると、いろいろと出てくる。
 
いまは上野で遊ぶことはないが、私が“大人の遊び”を始めた20年以上前は、上野は、新宿とともに修業の場でもあった。リアル体験では試行錯誤を繰り返し、辛酸をなめることもあった。
 
既にないと思うが、思い出深い(!?)のが上野広小路にあった「城」という元祖カップル喫茶だ。中高年(というか、お爺さん・お婆さん)カップル(男色の町らしく、おかまの街娼を同伴するものも多かった)の阿鼻叫喚、強烈な毒気に当てられ、その場にいるのがいたたまれなくなった。当時は繊細だったのかもしれないが、気持ち悪く、吐き気をもよおしたものだ(苦笑)。
 
同じく20年以上前、新宿の元祖変態サロン(フェテッシュバー、ハプバーの走り!)のマスターに「ホモバーには淫乱な奥妻が多いからナンパしにいこう」と、誘われ(騙され!)、同書にも紹介されているホモバー密集地帯にある兄貴系の店に潜入。当然の如く、淫乱な奥様などはおらず、偽カップルとばれるといけないので、キスをせがまれ、おしっこや精液を飲ませろと迫られる始末。危ないところだったが、勿論、なんとか、切り抜け、キスだけで我慢してもらった(再び、苦笑)。
 
伝言ダイヤル華やかなりし頃にはニューハーフの乱交パーティが上野の“連れ込み旅館”であるといわれ、会場まで行ってみたものの、ただの男しかおらず、危うくおかまをほられそうになるところ。幸い旅館の前に集合だったため、危険を察知し、すぐにその場から駆け足で逃げ去ることができた(しかし、私もチャレンジャーだ。三度、苦笑)。
 
同書では九龍城ビルと紹介されている中国エステ・ビルには、当時はエステだけでなく、SMクラブなども入っていて、知り合いのSM嬢が同所で働いていたため、中に入ったこともある。一見、普通の、何の変哲もないビルだが、中は風俗店ばかり。駅前風俗という感じで驚いたものだ。
 
九龍城ビル周辺には大人のおもちゃ屋(最近のアダルトグッズ・ショップのようなお洒落要素は皆無で、スケベな親父の溜まり場だった)、同所では一般書店ではなかなか、入手困難な『ホームトーク』や『オレンジピープル』を極秘購入、ネットもない、SNSもない時代、貪るように熟読し、勉強もした。
 
ポルノ映画館は、ホモのハッテン場だけではなく、露出や覗き、相互鑑賞、スワップ愛好家の巣窟で、映画館の2階席はお互いの行為を見せ合うカップルも多かった。以前、ある女性に依頼され、潜入を試みたが、その時には警察の指導が入り、そのような行為は厳禁とされていたため、池袋へと河岸を変えたこともあった。
 
とてつもなく、鄙びてはいるが、“性の解放区”、“性癖のデパート”が上野だ。私の遊び人としての原点(笑)。ほろ苦い思い出ばかりで、郷愁を美化するようなものはないが、いまだに甘酸っぱい思いがこみ上げる。久しぶりに裏・上野を散策。アメ横ガード下の餃子を食べたくなった。「昇竜」はお勧めである。
 
いつの間ATSUSHI流の“上野アンダーグウランド探訪”、“我が青春の上野アンダーグラウンド・プレイバック”になってしまい、恥ずかしい限りだ。本橋流のタウンガイド、“台東区シリーズ”の第1弾、第2弾の間には『迷宮の花街 渋谷円山町』(宝島社)もあるが、次はどこを案内してくれるか、楽しみである。
 
なお、9月9日(金)には「本橋信宏『上野アンダーグラウンド』出版記念トーク」の第2弾が、「大人の学校」も利用している『Cafe Live Wire新宿2』で行われる。今回は先日のメンバーに新たに『上野アンダーグラウンド』にも登場している五十嵐泰正(筑波大学准教授・都市社会学者)もゲストとして加わるという。お時間のある方は是非、「大人の社会科見学」へ出かけていただきたい。知的好奇心を満たし、新たな視点を獲得するはずだ。
 
Live Wire 16.9.9(金) 本橋信宏「上野アンダーグラウンド」出版記念トーク
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