太田道灌は和歌の達人ですが、古い和歌の知識も豊富です。


  今回は、道灌の柔軟な頭脳が、古歌の知識を戦(いくさ)に活用して成果を挙げた、というユニーク話を二つ紹介いたします。


 ○ ある夜、古河公方軍を攻めるため利根川を渡ろうとしていた

   が、浅瀬を探すにも暗くて判らない。 どうしたら良いでしょう

   と部下が相談にきた。 道灌は、しばし沈黙してから「川音の

   大きな場所を探せ」と指示したのです。 兵士達は川音をたよ    

   りに無事に河を渡ることが出来たという事です。  


   底ひ無き 淵やは騒ぐ山川の 

               浅き瀬にこそ あだ波は立て


   川の底が判らないような深い処は波の音も立たないもの   

    浅瀬にこそ波立つ音がするのです、 という 古今集)


                           以下 次号