こんにちは。
普段はのことをちょこっと書くんですが、そう言えば、イチローさんが引退してしまいましたね。
スポーツ選手ですから引退は付き物なんですが、少し寂しいです。
大きな怪我もなくやって来られた方なので、公言していた50までやってほしかったと思うのは私だけではないはずです。
準備を怠らない点は、見習わなければなりませんね。
WBC決勝の感動をありがとう。。。
今日の過去問は、平成30年度問9の問題を○×式でやりたいと思います。
行政上の法律関係に関する次の記述について、最高裁判所の判例に照らして、正誤判定をしてみましょう。
それでは、早速。
問題
公営住宅の使用関係については、一般法である民法および借家法(当時)が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用されることから、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。
正解は?
×
今日の1問目はこの問題です。
まぁ、有名な判例ですね。
公営住宅云々と言えば、必ず出てくるものです。
と言うことで、 〇 って訳にはいきませんね。
最初、サラッと読んじゃって引っ掛りそうでした。
注意すべきは、、、
「一般法である民法及び借家法(当時)が、特別法である公営住宅法及びこれに基づく条例に優先して適用されることから、」
特別法と一般法の関係は、「特別法優先の原則」ですね。
昭和57(オ)1011 建物明渡等 昭和59年12月13日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
したがつて、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。
信頼関係の法理の適用があるって結論は正しいです。
なかなか上手く作るもんですね。
問題
公営住宅を使用する権利は、入居者本人にのみ認められた一身専属の権利であるが、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するという公営住宅法の目的にかんがみ、入居者が死亡した場合、その同居の相続人がその使用権を当然に承継することが認められる。
正解は?
×
この問題も「公営住宅」の問題です。
公営住宅の使用権が相続により当然に承継するのかって問題です。
問題には、
・入居者本人にのみ認められた一身専属の権利である
ってことと、
公営住宅の目的は、
・住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸すること
・国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与すること
ってのが書かれています。
早速、判例を確認してみます。
ちょっと長いです。
平成2(オ)27 建物明渡 平成2年10月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするものであって(一条)、そのために、公営住宅の入居者を一定の条件を具備するものに限定し(一七条)、政令の定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、入居者を決定しなければならないものとした上(一八条)、さらに入居者の収入が政令で定める基準を超えることになった場合には、その入居年数に応じて、入居者については、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならない旨(二一条の二第一項)、事業主体の長については、当該公営住宅の明渡しを請求することができる旨(二一条の三第一項)を規定しているのである。
以上のような公営住宅法の規定の趣旨にかんがみれば、入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はないというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
公営住宅を使用する権利は、承継しないって知っていれば直ぐに切れた肢ですね。
問題
食品衛生法に基づく食肉販売の営業許可は、当該営業に関する一般的禁止を個別に解除する処分であり、同許可を受けない者は、売買契約の締結も含め、当該営業を行うことが禁止された状態にあるから、その者が行った食肉の買入契約は当然に無効である。
正解は?
×
この問題は、「営業許可を受けないでした者の売買契約の効力」の問題です。
この問題は、私的には印象に残っているものです。
売買契約ですから「私法上」の問題です。
私法=私人間の権利義務関係など私的生活上の法律関係を規律する法規範。民法・商法など。
問題では、「営業許可を受けないでした、売買契約の締結は、営業を行うことが禁止された状態にあるから、その者が行った食肉の買入契約は当然に無効である。」と言っています。
はたして、、、
昭和33(オ)61 売掛代金請求 昭和35年3月18日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はない。
それ故右許可の有無は本件取引の私法上の効力に消長を及ぼすものではないとした原審の判断は結局正当であり、所論は採るを得ない。
結論は、
「上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はない。」
否定される理由はない=無効ではない
ですね。
ですので、許可の有無は、私法上の効力には影響せず、「売買契約は有効」と言うことです。
問題
租税滞納処分は、国家が公権力を発動して財産所有者の意思いかんにかかわらず一方的に処分の効果を発生させる行為であるという点で、自作農創設特別措置法(当時)所定の農地買収処分に類似するものであるから、物権変動の対抗要件に関する民法の規定の適用はない。
正解は?
×
この問題は、「租税滞納処分」についてです。
問題では、
「租税滞納処分は、国家が公権力を発動して財産所有者の意思いかんにかかわらず一方的に処分の効果を発生させる行為である」と言っています。
そのため、自作農創設特別措置法(当時)所定の農地買収処分に類似するものであるから、「物権変動の対抗要件に関する民法の規定の適用はない。」と言っています。
つまりは、
租税滞納処分=農地買収処分=「物権変動の対抗要件に関する民法の規定の適用はない。」と言っている訳です。
物権変動の対抗要件に関する民法の規定
民法
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
これなんですが、どうなんだべかってところですね。
最初に、類似すると言われている「農地買収処分」について判例を確認してみます。
昭和25(オ)416 行政行為取消請求 昭和28年2月18日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所
政府の同法(自作農創設特別措置法)に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであつて、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。
従つて、かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた民法一七七条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないものと解すべきである。
と言うことで、問題後半は○です。
次に、本題の「租税滞納処分」について判例を確認してみます。
昭和29(オ)79 公売処分無効確認等請求 昭和31年4月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所 金沢支部
国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。
それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法一七七条の適用があるものと解するのが相当である。
結論が違いますね。
農地買収処分、国税滞納処分、どちらも公法関係です。
公法=公的な関係(国・地方公共団体と国民)を規律する法の総称。権力関係や公益に関する法をいう。憲法・行政法など。
と言うことは、公法関係においては、民法一七七条が一切適用されないと言う訳ではないと言うことです。
農地買収処分=民法一七七条の規定は、適用されない
国税滞納処分=民法一七七条の規定は、適用される
ここは、注意しなければなりませんね。
問題
建築基準法において、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができるとされているところ、この規定が適用される場合、建物を築造するには、境界線から一定以上の距離を保たなければならないとする民法の規定は適用されない。
正解は?
○
この問題は、「建築基準法と民法」の適用に関するものです。
普通に考えて、家を建てる、建築する=建築基準法が優先する、「特別法優先の原則」が成り立ちそうですが、、、
一概にはそうは言えないようで、、、
問題では、「防火地域又は準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のもの」について問うています。
建築基準法=その外壁を隣地境界線に接して設けることができる
民法=境界線から一定以上の距離を保たなければならない
ちょっと条文を確認してみましょう。
建築基準法
(隣地境界線に接する外壁)
第六十五条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
書いてますね、「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のもの」
後半部分も問題に書かれているとおりです。
次に、民法を、
民法
(境界線付近の建築の制限)
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 略。
問題に書かれた一定以上の距離は、「境界線から五十センチメートル以上の距離」ってことです。
と、ここで疑問が、、、民法には、「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のもの」って条件がありません。
建築基準法の方が設定が細かいですね。
と言うことは、その辺の判断ってことになるんでしょうね。
昭和58(オ)1413 建物収去等請求事件 平成元年9月19日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所
建築基準法六五条は、防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは、同条所定の建築物に限り、その建築については民法二三四条一項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である。
建築基準法六五条は、建物を建築するには、境界線から五〇センチメートル以上の距離を置くべきものとしている民法二三四条一項の特別を定めたものと解して初めて、その規定の意味を見いだしうる
この問題は、〇と言うことです。
特別を定めたもの=建築基準法全てを民法の特別法と解釈することはせず、「個別の条文」ごとに、民法の特別法として判断するってことのようです。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
なかなかオモロ~。。。
来たよって方はこちらをポチッと。