こんにちは。
今日は問題の前振りが長いので、直ぐに始めたいと思います。
今日の過去問は、平成22年度問3の問題をやりたいと思います。
基本的人権の限界に関して、次のような見解が主張されることがある。この見解と個別の人権との関係に関わる次の記述について正誤判定してみましょう。
見解
日本国憲法は、基本的人権に関する総則的規定である13条で、国民の権利については「公共の福祉に反しない限り」国政の上で最大の尊重を必要とすると定めている。
これは、それぞれの人権規定において個別的に人権の制約根拠や許される制約の程度を規定するのではなく、「公共の福祉」による制約が存する旨を一般的に定める方式をとったものと理解される。
したがって、個別の人権規定が特に制約について規定していない場合でも、「公共の福祉」を理由とした制約が許容される。
それでは、早速。
問題
憲法15条1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定めるが、最高裁判例はこれを一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。
正解は?
×
今日の1問目は、この問題です。
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2~4 略。
この問題では、最高裁が、この規定を「一切の制限を許さない絶対的権利とする立場を明らかにしている。」と言っています。
条文を見てみると「固有の権利」としているのは、「選定」と「罷免」ですね。
選定=多くのものの中から、目的・条件に合ったものをえらんで決めること。
罷免=公務員をその意に反してやめさせること。職務をやめさせること。免職。
これは内容からすると選挙権ってことになりそうです。
と言うことは、「一切の制限を許さない絶対的権利」は、「選挙権を奪われることはない」ってことですよね。
そうでしたっけ
公職選挙法
(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一 削除
二 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
三 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
四 公職にある間に犯した刑法第百九十七条から第百九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律第一条の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
五 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者
2、3 略。
公職選挙法第十一条に、「次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。」とあります。
つまり、選挙権を奪われている人がいるってことです。
となると、これが合憲なのか ってのが問題になりますが、、、
昭和29(あ)439 公職選挙法違反 昭和30年2月9日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
国民主権を宣言する憲法の下において、公職の選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一であることは所論のとおりであるが、それだけに選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであつて、一旦この公正を阻害し、選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当であるからこれを以て不当に国民の参政権を奪うものというべきではない。
されば、所論公職選挙法の規定は憲法に違反するとの論旨は採用することはできない。
されば=そうであるから。だから。そんなわけで。前述の事柄の当然の結果として起こることを表す。
最高裁は、絶対的権利とする立場を明らかにはしていないってことです。
問題
憲法36条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。
正解は?
×
引き続いて2問目です。。。
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
この規定についてです。
問題では、この規定について「最高裁は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。」と言っています。
「拷問」、「残虐な刑罰」です。
なんかの(プレイ)ではありません。
この問題は、「公共の福祉」のためなら、公務員が拷問しても良いってことを言っている訳です。
どこぞの国とは違い日本は法治国家です。
そんなことが認められたら世間が許しませんね。
大騒ぎになるでしょう。
しかも、憲法の条文に「絶対にこれを禁ずる。」と言っている訳ですから、それを最高裁が「許容する」ってのはどうも、、、ね。。。
ですので、これを認める判例はありません。
問題
憲法21条2項前段は、「検閲は、これをしてはならない」と定めるが、最高裁判例はこれを一切例外を許さない絶対的禁止とする立場を明らかにしている。
正解は?
○
3問目は、この問題です。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。後段略。
検閲=行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認められるものの発表を禁止すること
これは受験生であれば知らなきゃいけない知識です。
最高裁は、これを一切例外を許さない「絶対的禁止」とする立場を明らかにしていますよね。
ただ、条文上は、「検閲は、これをしてはならない」と規定するだけです。
原則禁止なのか、絶対禁止なのかは、条文からは読み取れません。
昭和57(行ツ)156 輸入禁制品該当通知処分等取消 昭和59年12月12日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 札幌高等裁判所
憲法二一条二項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。
中略
憲法二一条二項前段の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の絶対的禁止を宣言した趣旨と解されるのである。
参照
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
この問題の内容、過去記事で、行政書士試験 平成28年度問41 憲法の問題 でも取り扱っています。
問題
憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。
正解は?
×
この問題は、憲法十八条です。
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
問題は、前段部分についてですね。
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。」
問題では、この規定について、「最高裁は「公共の福祉」を理由とした例外を許容する立場を明らかにしている。」と言っている訳ですが、、、
つまり、「公共の福祉」を理由に奴隷的拘束をしても良いって言っている訳です。
これは有り得ませんね。。。
今、悪いことして刑務所に入るときちんと食事も出ますし、役務も与えられます。
役務= 他人のために行なう、労役のつとめ。
起床、就寝時間も管理され、逆に健康的になるんではないでしょうか。
軽微な犯罪を犯して刑務所に入りたがる人もいるって聞いたこともあります。
つまり、刑務所に入ってた方が良いって思っている人もいるってことです。
あ、脱線ですね。。。
問題に戻ります。
条文は、「何人も」、「いかなる」です。
何人も=どういう人でも。いかなる人でも。何者でも。なんぴとでも。
いかなる=どのような。どんな。どういう。
この「何人も、いかなる」の表現から、例外を認めない趣旨ってのが解ると思います。
つまり、公共の福祉を理由とした例外を許容する立場を明らかにした最高裁の判例はないってことです。
問題
憲法21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めるが、最高裁判例は「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。
正解は?
○
この問題は、憲法二十一条1項の問題です。
「表現の自由」ですね。
先ほど条文自体は載せてあるんですが、、、
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 略。
この内容、、、
「最高裁は、「公共の福祉」を理由とした制限を許容する立場を明らかにしている。」と言っています。。。
こ、これは、、、
記憶にありますよね。
穴埋め式でじっくり確認しています。
判例の抜粋部分に、
「しかしながら、……憲法21条1項も、[ア:表現の自由]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。」
記憶にある方はあるでしょうね。。。
昭和28(あ)1713 猥褻文書販売 昭和32年3月13日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
憲法の保障する各種の基本的人権についてそれぞれに関する各条文に制限の可能性を明示していると否とにかかわりなく、憲法一二条、一三条の規定からしてその濫用が禁止せられ、公共の福祉の制限の下に立つものであり、絶対無制限のものでないことは、当裁判所がしばしば判示したところである。
書かれていますね。
「公共の福祉の制限の下に立つものであり、絶対無制限のものでない」
裁判官さんが、「しばしば言ってますぜ。」っておっしゃっています。
昭和61(オ)1428 損害賠償請求事件 平成5年3月16日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
憲法二一条一項にいう表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがあり、その制限が右のような限度のものとして容認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。
この判例は、「制限が容認されるかどうか」の判断を示しています。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところは、ここまでです。
んでまずまた。
読んだついでに押してって。。。
来たよって方はこちらをポチッと。