こんにちは。
考えたこともありませんでしたが、受験生とボクサー似てますね。
試験日(試合日)に向けて試験勉強(調整)をする訳です。
最高の状態に仕上げ、最良の結果を得るために最善を尽くす訳です。
う~ん、受験生もある意味アスリートってことなんでしょうかね。。。
今日の過去問は、平成19年度問33の問題をやりたいと思います。
設例
AはBから中古車を購入する交渉を進めていたが、購入条件についてほぼ折り合いがついたので、Bに対して書面を郵送して購入の申込みの意思表示を行った。
Aは、その際、承諾の意思表示について「8月末日まで」と期間を定めて申し入れていたが、その後、契約の成否について疑問が生じ、知り合いの法律家Cに相談を持ちかけた。
この内容で法律家のCさんが答える「はい、そのとおりです。」又は「いいえ、そうではありません。」で解答しましょう。
それでは、早速。
問題
「私は、申込みの書面を発送した直後に気が変わり、今は別の車を買いたいと思っています。Bが承諾の意思表示をする前に申込みを撤回すれば、契約は成立しなかったということになるでしょうか。」
正解は?
「いいえ、そうではありません。」
この問題はいかがですか
問題を読んだ感じではAさんは相当気が変わりやすい性格のようですね。
この問題のポイントは何でしょう
そうですね、設例にあるように承諾の意思表示を「8月末日まで」と期間を定めていることです。
と言うことは、Aさんの申込み、「契約」の申込みですね、それに「8月末日まで」拘束力をもたせると言うことです。
条文を確認しますね。
(承諾の期間の定めのある申込み)
第五百二十一条 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。
2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
1項です。
「8月末日まで」と期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができません。
ですので、期間内にBさんが「承諾の意思表示」をした場合は、Aさんが撤回しても契約は成立してしまいます。
「期間内に」
そうです、2項を見て下さい。
期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失うとあります。
Aさんは、「承諾の意思表示」が来ないことを祈るしかありませんね。(爆)
問題
「Bには、『8月末日までにご返事をいただきたい』と申し入れていたのですが、Bの承諾の意思表示が私に到着したのは9月2日でした。消印を見るとBはそれを9月1日に発送したことがわかりました。そこで私は、これをBから新たな申込みがなされたものとみなして承諾したのですが、契約は成立したと考えてよいでしょうか。」
正解は?
「はい、そのとおりです。」
これは、Aさんが「8月末日までにご返事をいただきたい」と申し入れたのに対し、Bさんが9月1日に返事を発送し、9月2日到着した訳です。
と言うことは、先ほどの条文で言うところの2項です。
(承諾の期間の定めのある申込み)
第五百二十一条
1 略。
2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
Aさんは、「設定した期間内に承諾の通知を受けなかった」訳ですから、申込みの効力自体は失われています。
にもかかわらず、Bさんは「承諾の意思表示」を送り付けてきた訳です。
Bさんの遅延した意思表示と言うことになりますね。
(遅延した承諾の効力)
第五百二十三条 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
Aさんは、Bさんの遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる訳です。
そのため、Aさんがこれに対して承諾すれば、契約は成立します。
問題
「Bからは8月末を過ぎても何の通知もありませんでしたが、期間を過ぎた以上、契約は成立したと考えるべきでしょうか。実は最近もっとよい車を見つけたので、そちらを買いたいと思っているのですが。」
正解は?
「いいえ、そうではありません。」
おぉ~っぅ
これは、承諾の期間を過ぎている訳です。
と言うことは、申込自体、効力が失われていますね。
契約は成立していないと考えるべきです。
法律家Cさん「どうぞ、お気に入りのをお買い求め下さい。」
と答えるべきです。(笑)
問題
「Bは、『売ってもよいが、代金は車の引渡しと同時に一括して支払ってほしい』といってきました。Bが売るといった以上、契約は成立したのでしょうが、代金一括払いの契約が成立したということになるのでしょうか。実は私は分割払いを申し入れていたのですが。」
正解は?
「いいえ、そうではありません。」
う~ん、契約の実務的ですね。
Aさんの「車を譲ってほしい。」って意思表示に対し、Bさんは「代金一括払い」と言う条件を付しています。
交渉と言うやつですね。
売る側も買う側も良い条件にしたい訳です。
そして折り合いどころを見つけて契約をする訳ですよね。
(申込みに変更を加えた承諾)
第五百二十八条 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
つまり、Bさんは、最初の申込みは拒絶して、Aさんに新たに条件付き、「代金一括払いの契約」の申込みをしたものとみなされます。
Aさんは、「代金一括払いの契約」を受けることも、新たに「分割払いの契約」の申込みをすることも、「契約をやめる」こともできます。
この問題は、Aさんが承諾すれば、「代金一括払いの契約が成立した」ことにはなりますが、条件を変えることも契約をやめることもできますので契約自体は成立しません。
問題
「Bの承諾の通知は8月28日に郵送されてきました。私の不在中に配偶者がそれを受け取り私のひきだしにしまい込みましたが、そのことを私に告げるのをうっかり忘れていましたので、私がその通知に気がついたのは9月20日になってからでした。私は、Bが車を売ってくれないものと思って落胆し、すでに別の車を購入してしまいました。もう、Bの車は要らないのですが、それでもBとの売買契約は成立したのでしょうか。」
正解は?
「はい、そのとおりです。」
この問題では、Bさんは期間内に「承諾の通知」を郵送しています。
と言うことは、Bさんに落ち度はありません。
基本的な条文に照らすと、
(隔地者間の契約の成立時期)
第五百二十六条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2 略。
契約自体は、「承諾の通知」を発したときに成立しています。
「8月28日に郵送されてきました。」とありますので、その前日又は前々日辺りでしょうね。
その通知を9月20日にAさんは気づいた訳です。
Bさんの意思表示は、
(隔地者に対する意思表示)
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 略。
到達した日の8月28日に効力が生じることになります。
Bさんに落ち度はなく、Aさん側に落ち度があるので契約は成立するでしょうね。
以下、判例です。
昭和41(オ)743 電話料金請求 昭和43年12月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 名古屋高等裁判所 金沢支部
思うに、隔地者間の意思表示またはこれに準ずべき通知は、相手方に到達することによつてその効力を生ずべきものであるところ、右にいう到達とは、相手方によつて直接受領され、または了知されることを要するものではなく、意思表示または通知を記載した書面が、それらの者のいわゆる支配圏内におかれることをもつて足りるものと解すべきである。
右原審の確定する事実関係のもとにおいては、上告人自らは右の場所に居住していなくても、右の場所に居住する者によつて、本件電話加入契約、本件専用契約に関して被上告人より加入電話加入者たる上告人に対して発せられた意思表示、その他の通知を記載した書面が受領されたときは、右書面は上告人のいわゆる支配圏内におかれたものと解して妨げなく、このような場合には、右意思表示その他の通知が、上告人に到達したものと解するを相当とする。
判例では、「到達とは、相手方に直接受領され、了知されることを要せず、意思表示の書面が、それらの者の支配圏内におかれることをもって足りる」としている訳です。
Bさんの承諾の通知は期間内に郵送されています。
Aさんの配偶者がこれを受け取り、Aさんのひきだしにしまっていますので、Aさんの支配圏内に置かれたといえます。
Bさんの「承諾の意思表示」は、Aさんのもとに期間内に到達している訳ですから、契約は成立します。
実際にありそうですね。。。
ただ、書類に紛れるってのはあるかもしれませんが、「ひきだしにしまい込む」ってのは信じられません。
しかも、伝えるのをうっかり忘れるなんて。
Aさんの奥さん、そりゃ~やっちゃいけませんぜ。。。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
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