こんばんは。
今日は民法です。
法的対応について、民法の規定及び判例に照らして○×れって問題です。
法的対応って言われるとちょっと引いちゃいますが、内容自体は軽いジャブのような問題です。
冷静に考えれば解けない問題ではありませんからね。
今日の過去問は、平成20年度問30の問題を○×式でやりたいと思います。
本試験では妥当なものを問う組合せ問題でした。
それでは、早速。
〔設例〕
Aは、自己所有の土地につき、Bとの間で賃貸借契約を締結した(賃借権の登記は未了)。
AがBにこの土地の引渡しをしようとしたところ、この契約の直後にCがAに無断でこの土地を占拠し、その後も資材置場として使用していることが明らかとなった。
Cは明渡請求に応ずる様子もないため、AとBは、Cに対して法的対応を検討している。
問題
Bが、自己の不動産賃借権に基づき土地明渡請求をすること。
正解は?
×
設例に対して聞かれていることが短いですね。
いかがですか
まず、Aさんが自己所有地をBさんと賃貸借契約を締結していますね。
Bさんの賃貸借契約に基づく賃借権は「債権」です。
債権=特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利。
BさんがAさんに対して、一定の行為(賃借権に基づく土地の引渡し)を請求することを内容とする権利ですね。
これが、所有権のような物権に基づく権利であれば、返還請求権に基づく土地明渡請求ができるんですが、賃借権は、あくまで債権です。
第三者に対抗するには、対抗要件を具備していないといけませんね。
対抗= 私法上、当事者間で効力の生じた法的関係を第三者に主張すること。互いに張り合うこと。
具備=必要なものが十分に備わっていること。完全に備えること。
Bさんが、不動産賃借権に基づく権利を主張するのに必要な「対抗要件」とはなんでしょう
そうですね、「登記」です。
(不動産賃貸借の対抗力)
第六百五条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
設例では、(賃借権の登記は未了)と書かれており、Bさんは、対抗要件を具備していません。
そのため、Bさんは土地の明渡請求はできません。
残念ですね、不動産賃借権を登記(対抗要件)していれば直接言えたんですけどね。。。
問題
Aが、自己の土地所有権に基づき土地明渡請求をすること。
正解は?
○
ありゃりゃ、またやらかしましたね。
Aさんは、土地の所有権者です。
所有権は物権ですね。
Aさんは、自己所有地を侵害されているため、物権的請求権である妨害排除請求権物権的返還請求権を行使することができます。
物権的返還請求権に基づき、土地の明渡請求をすることができますよね。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
問題
Aが、Cの行為を不法行為として損害賠償請求をすること。
正解は?
○
Cさんの行為が不法行為にあたるのかと言うことですね。
CさんはAさんに無断で土地を占拠し、資材置場として使用しています。
明渡請求にも応ずる様子はないようですよね。
困ったもんですね。。。
不法行為とは
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
故意又は過失=無断で他人の土地を占拠し、資材置場として使用
他人の権利=Aさんの土地を利用することができる権利
法律上保護される利益を侵害=所有権に基づき、土地を利用することで生まれる利益が侵害
生じた損害=Aさんは、Bさんから得られるはずの家賃収入が得られていません。
条文にあてはまりますね。
と言うことは、「賠償する責任を負う。」訳ですので、Aさんとしては、不法行為に基づく損害賠償請求ができますよね。
問題
Bが、占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすること。
正解は?
×
この問題は占有回収の訴えですね。
占有回収の訴えとは
(占有回収の訴え)
第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 略。
占有を奪われたときに、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる権利ですね。
ただ、この条文には重要なことが書かれていますよね。
「占有者が」ですね。
設例では、「AがBにこの土地の引渡しをしようとしたところ、」と書かれていますので引渡し前ですね。
と言うことは、Bさんは土地の占有者とはいえません。
そのため、Bさんは、占有回収の訴えを提起することはできません。
ちなみに、Aさんは占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすることができます。
Aさんは、「占有回収の訴えに基づき土地の明渡請求」も「物権的返還請求権に基づき土地の明渡請求」もどちらも行うことができます。
所有権者ですからね、Aさんは。。。
問題
Bが、AがCに対して行使することができる、所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使すること。
正解は?
○
この事例はどうでしょうか
最初に、「Aが所有権に基づく土地明渡請求権をCに対して行使することができる。」のは問題ないですね。
Aさんは、土地所有者であり、所有権は物権で絶対効があります。
そして問題では、Bさんが、その「Aさんの所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使する」とあります。
代位行使する=債権者に代わって行使する
債権者代位権ですね。
(債権者代位権)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
Bさんは、賃借権を「登記」していないので、賃借権に基づく明渡請求は出来ませんよね。
この事例の場合、AさんがCさんに対して所有権に基づく土地明渡請求権や占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をせずに放置していたとしたら。。。
Bさん「んじゃ、俺、どうしたらいがんべ。」
そりゃそうですよね。
そこで、「債権者代位権」の出番と言うことです。
この債権者代位権は、原則は金銭債権について行使するものです。
今回のBさんのAさんに対する被保全債権は金銭債権ではなく賃借権ですので転用事例と言うことですね。
昭和4年の判例ですので結構古いんですが、賃借権に対して債権者代位権を転用することが認められています。
この問題では、AさんとBさんの間では、Aさんの土地を賃借する契約を締結していますよね。
と言うことは、本来、AさんはBさんに対して賃貸借契約に基づきその土地を引き渡さなければなりません。
その土地の引渡しがなされていない状態のもとで、Cさんが何の権原もなく土地を占有してしまった訳です。
先ほども書きましたが、Aさんが、土地の返還請求をせず、放置していた場合、Bさんは土地を使用することができず、賃貸借契約をした目的を達成することができません。
そのため、Bさんは、Aさんに対して有する賃借権を保全するために、債権者代位権を転用する訳です。
Bさんは、自己の賃借権を保全するために行使することができると言うことです。
今回のケースは、Bさんが「登記」をして、対抗力を備えた不動産賃借権だった場合は、直接、賃借権に基づいて土地明渡請求ができます。
しかし、今回は、「登記」がなされていないため対抗することが出来ません。
対抗力を備えてない不動産賃借権の場合に、賃借権を保全するために「代位行使」することができると言うことです。
今日は妥当なものを問う組合せ問題でしたが、どうでしたか
珍しく○が三つの組合せ問題でした。
組合せ問題=○が二つ、×が二つ
○が二つ出たから後は×だ、なんて思っちゃダメですよ。
きちんと肢を検討して判断するってところが重要ですし、学習の仕方として癖付けをして下さいね。
今日も最後まで有難うございました。
今日のところはここまでです。
んでまずまた。
是非、是非、ポチッとお願いします。
来たよって方はこちらをポチッと。