冬の軽井沢(9) | 緑の錨

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歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

軽井沢から大宮まで、現在では新幹線で一時間もかからないわけですが、やはり到着してみると別世界であると感じます。観光には季節はずれの冬には街は喧噪からほど遠く、多くの教会や文学的記念碑が大正から昭和にかけての文化的所産との結びつきを感じさせてくれます。


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写真は聖パウロ教会であり、レイモンドの作品です。レイモンド、ヴォーリーズといった建築家の作品が軽井沢には数多あり、下調べをしてからいかないと、このような大家の手になる傑作を見すごすことになってしまいます。

私も軽井沢から帰った後に調べて、もうすこし事前の準備をしっかりしておけばよかったなと後悔することしきりでした。

ただ、よかったのは、宿から旧軽井沢ロータリー、そして有島武郎終焉の地と旧三笠ホテルまでかなりの距離を歩いたことです。自動車を用いても、あるいは自転車に乗ってももっと手軽だったでしょうが、歩く過程で軽井沢の大きさを感じとることができました。

外国人が多かった軽井沢は、日本とヨーロッパの接点でもありました。シロタ、ローゼンシュトック、モギレフスキーなどの音楽家が、この街に足跡を刻んでおります。ユダヤ系の音楽家が教会(どのような教会かは不明)で演奏会を開くということもありました。

ヨーロッパからきた音楽家と日本音楽界の関係は受容や影響という言葉で語られがちですが、ものごとはそう簡単ではありません。両者の複雑な相互作用をとらえて、はじめて日本の楽壇と在日外国人演奏家の関係は語ることができるのでしょう。