エディット・ピアフを讃えて(1) | 緑の錨

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歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

フランシス・プーランクの即興曲第15番『エディット・ピアフを讃えて』に関連してピアフのこと、彼女の恋人であったマルセル・セルダンのこと、ジネット・ヌヴーのことなどを調べなおしています。

マルセル・セルダンはフランス・ボクシング史上もっとも偉大なボクサーのひとりとされています。「鋼鉄の人」トニー・ゼールを破ってミドル級の王者となり、かの「レイジング・ブル」ジェイク・ラモッタと戦って不運な負傷のために敗れ、決着をつける再戦のためアメリカに赴く途中、航空機事故で世を去りました。

かれがヴァイオリンを手にして女性と談笑している写真が残っています。

この写真が有名なのは、セルダンの最後の写真であるからで、手にしているのはストラディヴァリウス『ヌヴー』。セルダンが話している相手は、同じ飛行機に乗るヴァイオリニストのジネット・ヌヴーなのです。

1949年のことで、ヌヴーはカーネギー・ホールでの演奏会を、セルダンはラモッタとの再戦を控えていました。

二人が乗った飛行機は墜落して、ヌヴーもセルダンも世を去りました。

ヌヴーの遺体がヴァイオリン・ケースを摑んで離さない状態で見つかったという逸話があります。従って、これはジネット・ヌヴーの最後の写真でもあります。

このときの事故から、今年は60年です。