剣持久木『記憶の中のファシズム--火の十字団とフランス現代史』(講談社選書メチエ) | 緑の錨

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歴史家の山本尚志のブログです。日本で活躍したピアニストのレオ・シロタ、レオニード・クロイツァー、日本の歴史的ピアニスト、太平洋戦争時代の日本のユダヤ人政策を扱っています。

 読了。鮮烈な印象と強い感銘を受けました。フランスで第二次世界大戦以前の時期から第二次世界大戦中に大きな勢力をもった「火の十字団」と指導者ラロック中佐に関する本なのですが、専門家ですら誤解している問題について、その誤解を正すというだけでなく、歴史と集合的記憶と個人という、もっと大きな問題に踏みこんでいます。

 歴史と記憶、記憶と責任、映像と歴史についての議論はさかんに行われていますが、その問題について本当にまじめにつきつめて考えたすばらしい著作です。分析視角の新鮮さもまたずばぬけています。詳細な感想は後日書きますが、まず、とにかくお勧めしておきます。特に、歴史的記憶に関して論じる人は必ず読んでおくべき本であり、そのような人はきわめて多いはずなので。


記憶の中のファシズム―「火の十字団」とフランス現代史 (講談社選書メチエ 409)/剣持 久木
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