塩野七生の歴史物語作法 | ぷぷぷ日記

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更新は思いついたとき。

この数年、いくらか日本の歴史小説を読むようになりました。
歴史探索の入り口としておもしろいものを読みたいのです。
というわけで、大枠できるだけ史実をふまえた作品で、なおかつその時代のダイナミズムと登場人物の日常の両方をリアルに感じられるようなものを探しています・・・
しかし私の求める条件を満たす作品はどれか???と本屋で悩むことが多く、冊数はなかなか増えません。

ところで 、塩野七生の『サイレント・マイノリティ』(新潮文庫・初出は1985年)という古い本を読み返していたら、『歴史のそのままと歴史ばなれ』と題したエッセイがありました。
ここで塩野さんは「史料そのままを引いて書けばよいというものではない」と言っています。

第一級の史料でも真実度は自明のことではないからだ。 しかし、私(塩野さん)は史料からうかがわれる  「自然」を尊重する念は持っている。 そこから様相を知り、それを読者に伝えることが可能になる。 それが歴史の醍醐味である・・・

ふむふむと読んでいて感動したのは次の箇所。
「この歴史への対し方は、自分の意図することを表現する手段として歴史を使ったことの一度としてない私にとっては、ごく自然な選択でもあった。」

さらに、 「いつ、どこで、だれが、何をしたか」という史実に膨大な史料と推理を加えて、「なぜ、どのように」を追求して作品の詳細までを練り上げていく苦労や、定説をくつがえすこわさについても述べられている。 歴史家と自分の史料の扱いの差異について例示もあった。

塩野さんという人はやはり只者ではないですね。 第一に、ここまで言えるのは、自分のほうが歴史家よりも真実をついていることもあるという自信がある。 第二に、作家としての創意は歴史を歪めることではない という信念がある。

このような人の書いた本をたくさん求めて読みたいものです。 他に同じ見解の作家はいるものでしょうか。 塩野さんが日本ものも書いてくれてたらよかったのに・・・ と切なく思います。


蛇足ですが同じ本のなかで  「私も西洋史上の人物などは放っておいて、日本史にきりかえようかしらん。そうすれば私の作品も、ついにテレビ化される幸運に浴するかもしれない」なんて冗談をおっしゃってました。ホントそうですネ。