『万葉の人びと』 犬養 孝 著 | ぷぷぷ日記

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この本は、万葉集の一般向きの講義録というようなもので、とてもわかりやすいのです。最初に紹介されているのは、雄略天皇が野道にて求婚する歌。 籠(こ)と堀串(ふくし)を持ち、乙女は菜を摘んでいる場面。

 籠もよ み籠もち 堀串もよ み堀串もち        
 この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね
 そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ
 しきなべて われこそ座せ
 われこそは 告らめ 家をも名をも

訳:籠 あなたの籠 堀串 あなたの堀串 それもすてきだ 名はなんというの・・・
  大和の国は  すべてを治めている 私がいるのだよ。  私は告げよう 家をも名をも 。

私こそ天皇なのだ。 あなたも名を告げ、求婚を受けておくれ。 という歌です。
牧歌的な恋の歌ですね。自信に満ちた天皇がまっすぐに乙女に歌いかけ、乙女は返事に困っている・・・(とりあえず受ける気持ちがあっても一度は断らなくてはいけない)。ほほえましい情景だと思います。

しかし、ここで犬養先生がおっしゃるには、「われこそ居れ 座せ」というのは「治めていらっしゃる」という敬語であるから、これは天皇自身が詠んだ歌ではなく、人が天皇を讃えて詠んだと考えるのが自然ではないかと。 なるほど~ そう考えると 、「そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ」のくだりが、より雄々しく感じられます。 人が天皇を憧れ慕う気持ちをこめて歌ったものなんですね。

『万葉の人々』という本はこのように、詠み人の背景や気分、歴史風土というものをわかりやすく解説してくれるよい本でした。NHKの講座をそのまま書き起こしたそうで、何より講師の歌を語る嬉しさが伝わってきて、楽しく読めました。

和歌は苦手な私としては、読み飛ばさずにゆっくり読むよう心がけたので、読了までずいぶん長いことかかりましたけど・・・・。時代順に歌をとりあげていく講座全37回分を読み終えると、歌の解説本というよりは万葉の時代の流れを見せてくれた本として貴重に思います。終章では、はからずも感動してしまいました・・・・ああここまできたなと。