昨日は思いがけず時間が出来たので、
新宿の小さな映画館で、これを見てきました!
先週まで、日比谷シャンテ・シネで上映していたんだけど、もっと小さなところへ移っていまして、昨日がラスト2日でした(上演は今日まで)。
※千葉中央と、埼玉県の幸手市では、もう1週間ほど長く上映しています。
この↑説明を読むと、固~い映画?かと思うけど、まったくそんなことない、オリンピックもののエンターテイメント映画。
でも単なるスポーツものに終始せず、「戦争直前」、「人種差別がまだ法律で禁止されていなかった時代背景」、「主催国が、人種差別的政策を前面に出していた、ナチス政権時代のドイツ」、などなど、これは実話なのですが、ストーリーに緩急があり、笑って感動して、最後には「いい話!」と視聴後は暖かい気持ちになれる映画で、本当に見に行ってよかったと思いました。このような上映規模の映画だと、すぐ終わっちゃって、将来的にTV放送もなさそうで、しかも、DVDも販売されるかどうかがわからなかったりするので・・なにしろ、直接的に日本に関係のない分野、に見えますもんね。
でもでも、平日のお昼すぎからの上映で、56人ぐらいしか入らない小さい映写室に、私も含め11人ほどの、いかにも映画好きそうな年配の方、主婦、まじめそうな学生さん、などなどが静かに集結して始まった映写。シネコンのようなポップコーン販売も無かったりするし。すごい良い雰囲気で鑑賞できました。
日本に一見関係の薄そうなテーマだと書きましたが、私たちだって「有色人種」なのですから、今現在でもアメリカ南部のルイジアナ集などにいくと、「ここは有色人種が来る場所じゃないよ」などと露骨な嫌がらせをする白人専用バーバーとかもあるとかないとか。ひとごとと思っているなら本当はそんなことは無いのですけどね・・。
主人公のアスリートは、大学に入って名コーチのもとでトレーニングを重ね、全米選手権でだいたいどの種目も「世界新記録」で優勝しており、本当ならそのままオリンピック代表に危なげなく選出され、ベルリンに行っても当然金メダルを量産できるような逸材なんです、が、
まるでロールプレイゲームのように、幾重にも課題が仕掛けてあります、しかし、これ、実話です、凄いドラマチックな実話。
①アメリカが、ベルリンオリンピックに出場するかどうか自体が、とっても危うかった。
ナチス主催のオリンピックに出るなんて反対だ!とのデモ行進の場面もあったり。ユダヤ系の移民も多いアメリカとしては、本当はボイコットしたいオリンピックでした。しかし、組織委員のジェレミー・アイアンズ演じるおぢさま(私はこの人の演技も大いに目当てで見に行きました)の尽力で、辛くも出場を決定できました。
②家族や牧師さんから、出場を反対されたりした。
なにしろ人種差別主義者(ヒットラー)が主催しているスポーツの祭典になんて、出ること自体、人種差別を受けている側の、アメリカ全土に住む黒人たちの心情を踏まえたら、やめたほうがいいんでないの?と、実家まで牧師さんがお願いにくる場面があります。
そこで心は揺らぎますが、しかし代表選手になりたくても、オーエンスに負けたためベルリンへ行けない選手だっているのです!その彼の説得もあって、最終的にはベルリン行きを決意します。
③いったらいったで、ナチスも冷たかった。
当然ですが、ヒトラーは港へお出迎えに来ませんし、100mで金メダルを取ったって、会ったり写真を一緒に撮ったりするのを、さりげなく拒否します(まったくさりげなくないけれど。。。)
しかしいいこともありました。ドイツの走り幅跳びの選手がいい人だったんです!二人はお友達になります。
④さらに、ユダヤ人はリレーから外せ!との、お達しが・・。
アメリカ代表チームの、100×4人リレーの選手のうち2人はユダヤ系の子でした。で、出た~!!宣伝相・ゲッペルズのいやがらせ!!そこで、コーチたちはやむなく、その二人をはずして、オーエンスに第1走を任せようとします、が「彼らとの友情を思うと、そんなことはできない。。」なにしろリレーの練習すらしていなかったんですからムリがありますし。
しかしレース前日夜中に、その二人がオーエンスを説得。「勝たなきゃ意味がない。勝たなきゃ、ナチスにメダルを渡すことになる。僕らの代わりにぜひ走ってほしい。」二人が応援する中、オーエンスが1走で大差をつけたためアメリカはリレーでも金メダルを獲ります。
⑤帰国しても国も冷たかった?!
祝賀会の主役(金メダルを4個も獲った)なのに、オーウェンスはホテルのドアマンから「決まりごとなので、裏の通用口から入ってください」と言い渡されます。しかし裏口のエレベーターを操作していたイタリア系の少年は「サインください!!」とニッコリ。いかにもな「いい話」で終わることができました。
映画パンフを見ると、帰国しても大統領からいっさいのねぎらいの話もなし。1980年に亡くなってから10年後にやっと名誉回復されたような、オーエンスの生涯について、もっと知ることができます。
パンフには役者さんだけでなく、モデルとなった本当のオーエンスの走る姿(白黒写真)も載っています。みごとな斜め45度ほどもありそうな前傾姿勢!すがすがしい写真の下にはオーエンス自身の言葉が載っています。
オーエンスと、ドイツ人の走り幅跳びの選手との間の友情と、正々堂々と戦いたいというスポーツマンシップには、感動で胸が熱くなります。
また、この映画が見たかった理由のひとつが、このオリンピックを撮影した有名な実録映画の女流監督、レニ・リーフェンシュタールがどう描かれているのかに興味があったからでしたが、
私が思っていたとおりの、素敵な女性でした!そして宣伝相のゲッベルズは、これも実在したとおりの、小男で目つきがナルシストそのもので超キモ男という描かれ方をされていて、それも痛快でした。周りの、英語ができる将校なんかは、背丈もドイツ人らしく大柄で、よっぽど有能そうなのに、こんなキモいゲッベルズが威張っていたあたりからして、すでに敗戦を招いた1要素だったのではないでしょうか?(というのは、ドイツが負けた大戦が史実にあるから言えることですが・・。)
オーエンスを演じたステファン・ジェームスはカナダ出身。まだ21歳の新鋭です。これからの活躍も期待されますね。
あとは、全編にわたりたくさんの出番があり、あまりにもオーエンスと一緒にいるので、当たり前すぎてついつい書き忘れそうになりましたが、コーチとの、人種の違いは関係ない絆が、この映画の大切な柱になっています。
このコーチは大学からですが、パンフによると、映画に描かれていない中学校時代に別の白人教師に走りの才能を見出され、バイトが忙しく陸上部に入れないからと、この先生が夕方から特別に走りを教えて下さったのがオーエンスの転機になりました。やはりコーチも自分がもとランナーなもので、素晴らしい走りの才能を持った子を見たら、人種の違いは気にならず、教えて伸ばしてあげたいものでしょうね。金メダルはアスリートとコーチが二人三脚で獲得するものですから、そこに人種による偏見が挟まっていたならメダルは取れないことでしょう。どんな時代背景でも、素晴らしいものを見たときの人間の素直な感情は古今東西みな同じだなってことが良くわかります。
歴史が好きな人もスポーツ好きな人も、両方を感動に導いてくれる、人種も国の違いも混ぜこぜでみんなで競うオリンピックってやっぱりいいな!と思える映画でした。