週に一度、蜷川さんの演技レッスンがあった

使っていた題材は、

清水邦夫作「明日そこに花を挿そうよ」

5分くらいの男女2人のシーンで、

クラス全員が、パートナーを持ち、同じシーンを演じていた

 

出席番号順で組まされると、いつも組むことになるSくんが私のパートナーだった

 

取り立てて、好きでも嫌いでもなく、

芝居が上手でも下手でもなく、

何より良かったことは、絶対に休まないことだった

それは、私も同様で、

稽古日に相手役がいないと、自分も演じられなくなってしまうが、

私とSくんは、絶対に休まないし、最低限準備もしてくるので、いつも発表させて貰えた

 

ところが、蜷川さんの前で、何度かやらせて貰えたけれど、

ダメ出しは全てSくんに対してで、

私はひとつもダメ出しを貰えなかった

 

とにかくなんでもいい、何か言って貰いたい

ダメ出しが欲しいのだ

 

「ダメ出し」という言葉が悪いのか、

最近、それを嫌がる人がいる

役者なら間違いなく、ダメを貰いたいと、私は思ってきたのだけれど

 

「明日そこへ花を挿そうよ」以外に、

好きな人と組んで、好きな台本をやっても良いと言われたので、

私は親友を誘って、カフカの「  」をやった

わー、思い出せない

カフカの戯曲ってどのくらいあるんだろう?

タイトルを見たら思い出せるのに、ネットには出てこない

確か、妻と愛人のシーンだったような…

 

親友は私より4歳上で、タイプの違う素敵な役者だった

そして、私は、目論見通り、蜷川さんからたくさんのダメ出しをいただいた!!

 

芝居の稽古をやって、褒められることは嬉しいかもしれないが、無意味だ

だって、役作りに完成形はない

いつもいつも更なる高みを目指し続けることが、役を追及することだ

自分ではない人間を100%理解出来ないように

自分ではない人間を演じることに終わりはない