煙草も若い頃ずっと吸っていた

俳優養成所に入った時、

一番仲の良い年上の女性が、格好良くタバコを吸う人で、

「役者なんだから、タバコ吸えないと困る」と言い訳しつつ

「一本ちょうだい」と言って吸い始めた

煙草を吸うシーンは、それなりにあったし、

煙草は小道具としては非常に役に立つものでもあった

 

格好良く吸う努力は重ねたけれど、

結局は習慣に流されて行った

 

そのうち、辞めたくても辞められなくなる

禁煙は、本当に大変な作業だ

 

食後や、お酒を飲んだ時、コーヒーを飲みながらの喫煙はとても美味しいのだけれど、

時々、習慣でただ吸った時の恐ろしくまずい煙草の味も知っている

 

辞める時は、その一番まずい煙草の味を思い出すように心がけた

 

吸うのを辞めて、

灰皿を捨てると、

家の中が綺麗になって嬉しかった

あの灰皿の汚らしさ、

それにともない、空気はもちろん、家の壁紙が黄ばんでくる

あの汚らしさから解放された

 

短い休憩時間に、わざわざ喫煙に行く煩わしさもなくなった

(分煙が厳しくなる頃には辞めていたんですけどね)

 

ドラマから煙草を吸うシーンが圧倒的に消えた

古い台本を使用すると、喫煙シーンが出てくる

小道具としてはとても使い勝手のいいものなので、そのまま生徒にやらせる

稽古場で、ボールペンを煙草がわりにして稽古していみると

煙草の吸い方を知らない人が多くいることに驚いた

持つ指が違ったり、

なんと、ただ手で煙草を持って(口にはつけていない状態)火をつける仕草をするのだ

 

時の流れとともに、あらゆるものが変化している

煙草の代わりに、感情表現に使える冴えた小道具は、何になったのだろう