そこそこ面白いドラマはあったのですが、待ちきれないほど楽しみなドラマはなく、面白いと思われたドラマも3ヶ月間の1クール中その面白さが続くことはなく、なんか不完全燃焼的な気分です。多様性をモチーフにしたドラマが台頭していました。

 

今回チェックしたドラマは

【競争の番人/魔法のリノベ/ユニコーンに乗って/プリズム/オリバーな犬、このヤロウ シーズン2/家庭教師のトラコ/六本木クラス/純愛ディソナンス/オクトー~感情捜査官心野朱梨~/石子と羽男/NICE FLIGET!/雪女と蟹を食う/初恋の悪魔/空白を満たしなさい/僕の大好きな妻!/個人差あります/オールドルーキー/新・信長公記/拾われた男/事件は、その周りで起きている/あなたのブツが、ここに/トモダチゲームR4/テッパチ/あなたはだんだん欲しくなる(計24作品)(最後2つは途中で棄権)】

 

 

2022夏 MYアカデミー賞

 

主演女優賞 仁村紗和(あなたのブツが、ここに)

 

春はあれほど主演女優に恵まれていたのに、今回は候補となる人が見当たらず(どこまでを主演にするかという問題もあるのですが)参りました。主演という意味で生き生きと魅力的でした。ピンクのマスクがすぐにずれ落ちて最初はイライラしながら見ていたのだけれど、彼女はきちんとそれを使いこなしていることに気づいてからは、顔を見せる意味とコロナ対策という意味のバランスが取れていて気にならなくなりました。

 

次点:榮倉奈々(オールドルーキー)

 

爽やかで明るいお母さんであり、魅力的な奥さんを演じさせたら、榮倉奈々か上野樹里かって思った私ですが、榮倉奈々の方が上品な妻にも合っている。頑張るけど結構ダメダメな面もある夫を支える凄い妻でした。そして決して失わない明るさが救いです。

 

主演男優賞 永瀬廉(新・信長公記)

 

男性はいい人が何人もいた中で、主演とはこうでいいのではないか…という観点から、永瀬廉を選びました。周りに個性的な役者がたくさん居て、その中心にいる主役が、いつも涼しい目をして余計な芝居を何もしない。これこそが主演たるものと感じさせられた次第です。

 

次点:藤原季節(プリズム)

   綾瀬剛(オールドルーキー)

   重岡大毅(雪女と蟹を食う)

 

考えてみたら今回の主演賞、仁村紗和、永瀬廉、そして藤原季節の3名は、名前と顔が一致しなかった、つまり私にとって初めて見る役者さんです。それが多少影響しているかもしれません。初めて見る人が主演をしていてそれなりに魅力があったということです。それと比べると、重岡大毅は今までとはかなり違う、そして感情の起伏の多い難しい役を体当たりで、とにかく頑張って演じていた。綾瀬剛も、これほど真っ直ぐで熱い男をあまり見た記憶がなく、インパクトがあったのだと思います。

 

助演女優賞 鈴木杏(拾われた男)

 

久しぶりにテレビドラマで鈴木杏だと思ったら、NHKで2つのドラマに出演していて、その存在感たるや凄いものがありました「空白を満たしなさい」の演技も加味されているかもしれませんが、この当たりのきつい思いやりのあるマネージャーは魅力的でした。

 

次点:北香那(魔法のリノベ)

   玉木ティナ(NICE FLIGET!)

   久保田紗友(雪女と蟹を食う)

 

北香那は、達者な子で、性格の悪い女をサラッと演じていました。あまりに嘘つき女でインパクト半端なかったです。それと比べると玉木ティナ演じたやはり性格の悪い子、に見える子は、実は彼女なりにキチンと筋が通っていて、役者としてそれを成立させたところが素晴らしい。久保田紗友は、このくらいの役をやって貰いたい。「トモダチゲーム」みたいなどーでもいい高校生役をそろそろ卒業して大人の役。強さと弱さと女らしさと恋心と色々な感情が見えました。何よりも美しかった。

 

助演男優賞 岡田義徳(プリズム)

 

多様性を扱ったドラマが多かったので、おカマなのか、女装なのか、ホモセクシュアルなのか、アセクシュアルなのか、男なのか女なのか、なんと表現したら良いのか分からない人の役がとにかく多いのだけれど、岡田義徳演じる男性とカップルを組む人は、はみ出さず、優しく、控えめだけれどいじけていず、魅力的な人でした。アメリカにいた時にホモセクシュアルの男友だちがいたのだけれど、とても優しくて穏やかで大好きだった。それを思い出しました。お友達になりたい。

 

次点:矢本悠馬(六本木クラス)

   大倉孝二(競争の番人)

   阿部サダヲ(空白を満たしなさい)

   横浜流星(オールドルーキー)

   馬場徹(個人差あります)

 

六本木クラスの矢本悠馬は、回想シーンの刑務所に面会に来たシーンのみです。素晴らしかった。

大好きな大倉孝二は、テレビドラマだとこのくらいの役が最高です。阿部サダヲは、逆に舞台でも通用しそうな役作りを楽しんでいました。横浜流星は、わがままな役が合うと思います。馬場徹は、優しい時と冷たい時のはっきりした違いが、2面性ではなく、一人の人間として見えていて、また優しい彼に会いたいと感じさせてくれました。

 

気になる役者

本田望結(オクトー~感情捜査官心野朱梨~) 

青山テルマ(ユニコーンに乗って)

畑芽育(純愛ディソナンス)

日比美思(オクトー~感情捜査官心野朱梨~)

 

タイトル賞 「ユニコーンに乗って」

 

最近、妙に長くなったり、冴えないタイトルが目についていたのですが、端的で、興味が持てて、ドラマを見てみたらきちんとハマっていて素敵なタイトルでした。

 

タイトルバック賞 「雪女と蟹を食う」

 

ドライブする先の空に赤い大きな蟹がいるあの絵が忘れられません。

 

キャスティング賞 「ユニコーンに乗って」

 

素晴らしいキャスティングだったと思います。お陰でみんながバランスよく光っていました。

西島秀俊が出しゃばらないのに、とても頼りになる重要人物で、若い杉野遥亮が、嫉妬したり。社員の前原滉も青山テルマもそれぞれが引き立っている。以前、気になる役者に上げた坂東龍汰は、その直後からずーっと連ドラレギュラー出演中だが、今回は特に面白い役だった。なんと言っても武山瑠香の出演は嬉しかった。気になる役者に書く時は、他の役でもう一度見てみないとよく分からないなぁと思っている人も多いのだが、武山瑠香に関しては、芝居している?それともそのまま? 真剣に今後役者やる気あるのかなぁ?と気になっていたのでした。今回、声ですぐに彼女だと気づき、相変わらず真っ直ぐ前に出る芝居で魅力的な子です。敢えて言うなら、広末涼子がこの役にベストかなぁ?とは思いますが、主演の永野芽郁の横に静かに西島秀俊がいることで全てのバランスを成立させてしまっていました。

 

主題歌賞

「ヤバいね愛てえ奴は」原由子(プリズム)

 

番組のラストで彼女の声が聞こえるたびに、その声質にドキドキしました。

 

 

ここからは、演出家賞、脚本賞、作品賞にかこつけて、気になるドラマの感想を(全て敬称略です)

 

演出家賞 該当なし

 

シーズン1の時、確か演出家賞にした、「オリバーな犬、このヤロウ シーズン2」は更に遊びまくっています。これがNHKで、テレビドラマとしてOKなことがもうびっくりです。でもオダギリジョーの演出は見えるんです。演出が見えるということが、果たして作品の評価として良いかどうかはともかく、それ以外のドラマを見ていて、(演出がいいわぁ)って感じたり、演出のお陰で良くなったのねって気づいたりできることが殆どないです。悪い時は演出のせいにしてしまうんですけどね。

例えば「純愛ディソナンス」中島裕翔と吉川愛を主演に素敵な役者が出ていたのに、つまらなくなってしまった原因を突き詰めていくと、演出家が悪い?となってしまう。例えば、吉川愛演じる高校生の自室の壁に高校の制服が掛けてあったんです。現役高校生は、部屋の壁に制服を掛けたりはしません!これは美術の問題なのだけれど、許した演出家のミスです。

このドラマは、本当に疑問の残るドラマでした。ラブストーリー好きの私なのでとても大切に見ていたのですが、脚本が悪い、セリフが変とか感じていたら、途中から急に良くなった。大人になって碓井先生とか路加が絡んできたあたりで、全ての大人が嘘を言っているような空気になり、そのシナリオの微妙さに脚本の素晴らしさを感じたのだけれど、また酷い脚本に逆戻りしてしまった。シナリオのせいだと思われるが、碓井家族絡みがちょっと嘘っぽすぎて、真島秀和の役も嘘が多いし唐突だし、高橋優斗演じる役が一瞬だけ壊れてあんな酷いことをするのも成立させにくいですよね。脚本家が数人いるドラマはよくあるけれど、ここまで脚本家によって(演出家も)変わるドラマも珍しいです。毎回脚本家チェックしておくべきでした。演技派吉川愛には、主演でなくていいのでもっとやりがいのある役を演じて欲しい!

 

 

脚本賞 プリズム

原作の浅野妙子、脚本:久世寝子、ねじめ彩木

 

誰の力か分かりませんが、世界観、空気感を感じられるドラマでした。最終回前だったかなぁ、森の中で3人で言い合うシーンだけ、突然舞台劇調になったり、それ以外にも突然雰囲気の変わる部分があって驚かされたのだけれど、基本的にセリフも良いし、丁寧に書かれていた感じがあります。それこそ男だとか女だとか一言で表現しきれない微妙な人々の人間関係を描くに当たって神経使わないとセリフは吐けないと思われます。

 

次点:ユニコーンに乗って(大北はるか)

 

このところ、連ドラレギュラーになっている大北はるか。最初に意識して見たドラマの脚本がバランスの悪い説教くさいセリフの多いドラマだったので、ちょっと引き気味に見ていたのですが、今回は文句のつけようのない素晴らしい脚本でした。これまでは本人の希望通りに書けなかったのかもしれません。

 ジャンルで分けるとラブストーリーなのに、ドラマを引っ張るのはドリームポニーというスタートアップ企業の成長。その会社とそこに関わる人々との関係、そして愛。ご都合主義のドラマが多い中、キチンと組み立てられていました。よくある、ドラマの中で、仲間と旅行に行く件も、その経緯から次への展開まで繋がっていて無駄がない。

 

脚本として酷かったのが「魔法のリノベ」夢の話も、ビルの窓が顔になって文句言うパターンも要らないです。なんか愚痴ばかり聞かされて気分の悪い話でした。

NHK「事件は、その周りで起きている」脚本、倉持裕。随分前、多分倉持さんがまだ大学生の頃、当時彼の劇団の芝居を三鷹まで見に行ったことがある。若いのにすごく才能のある劇作家だと感じた。面白かった。今回のドラマは小劇場の作りで、それなりに面白いけれど、テレビドラマとしてはねぇ、ナンセンスコメディ仕立てだしねぇ、でもこれから彼の作品をテレビでも見られるようになるのではないかと期待しています。

そして問題の遊川和彦(家庭教師のトラコ)と坂元裕二(初恋の悪魔)才能のある売れっ子シナリオライターが、偉くなったら面白くなくなった。という話は何度も書いていますが、今回のドラマについては端的に感想を。

まず「家庭教師のトラコ」は、遊川さんが世の中に対して言いたいことがたくさんあり、それをトラコに喋らせている。どれもこれも真っ当で頷く話なんだけれど、このドラマを見ることで客観的にそれを伝えることには失敗していると思う。家庭教師で関わる3組の家庭とその母親が、あまりにもバランスを取りすぎて、3人に(3人の子供にも)同量に喋らせるのでシーンが長く感じられる。「朝顔」の時、子どもとして素晴らしすぎてとても芝居とは思えなかった加藤柚凪が、今回は少し成長して、すっかりお芝居上手な子役になっていました。

「初恋の悪魔」は、主演の4人の芝居がぶつかっていると以前書いたけれど、本当に落ち着く間も無くお腹いっぱいになるドラマだった。ただ、満島ひかりが出た回からドラマは俄然面白くなった。満島ひかりは私にとって別格の女優なので「ずるい!」の一言ではあるが、これは私の勝手な話。登場回の満島ひかりは、爽やかな透明感のある女性を、彼女のある一面の魅力を惜しみなく見せてくれたし、最終回は抜群の間の取り方で私の目を釘付けにしてくれた。満島ひかりが登場するシーンは彼女しか見ていないのです、あしからず。大好きな役者、仲野太賀は、その魅力は発揮できず(悪くはないです、もちろん)林遣都と松岡茉優は、自分の好きな芝居をやりまくり、柄本佑は、他の3人より少し演技力が落ちるところを晒してしまった。脇役たちもこぞって芝居がうるさく、もうどうしたらいいのか…。満島ひかり万歳!です(←ワケわからなくてごめんなさい)

 

 

作品賞 個人差あります

 

悩みました。結局面白かったドラマもどこかでつまずき、最初がたるいか、途中で飽きるか、ドラマ全体を通してつまらないところがなかった点で「個人差あります」が一歩優れていました。ドラマの回数は決まっているのですから、全体で完結させることはどのドラマでも必然考えていることなので。主演の3人が見ているうちに違和感なくバランス取れていった。あり得ない話だけれど、無理なく架空のストーリーとして成立させている。新川優愛、ショートのウィッグにしたら超美人でびっくり。通常はあまりにも綺麗すぎてマイナスになると思ってロングヘアーにしているの?

 

次点:拾われた男

 

事実を元にしているのでしょうが、かなりのどんでん返しで、次どうなるの?という期待を長く持ち続けることができるドラマでした。でも、その話を書いていると言うドラマ中の設定はない方がいいです。

 

「競争の番人」 「石子と羽男」 「オールドルーキー」は、それぞれとても面白かったです。基本的に1話完結になっていて、毎回の話がドラマチックで、レギュラー陣は売れている人気俳優で、こう言うドラマがテレビとしてはちょうど良いのだろうなと感じます。それでも最近は1話完結ドラマの底辺にメインの人々のドラマをぼんやり流し、最後に解決する流れになっているのもレギュラードラマとしては優れている。

あとは、簡潔に、

「新・信長公記」歴史上の人物を現代風にしてみんな楽しそうでした。

「六本木クラス」新木優子が大人になっちゃったなぁ~ってちょっと寂しい思いをしながら、恐ろしく内容の濃い、展開が荒いドラマを見続け、役者が魅力的だから楽しい時間も多かったのだけれど、最後の大立ち回りでみんなが生きていることが無理だし、結局また刑務所に入っただけの男が数年後に同じことをやりかねない、つまり何も解決していないのにーってストレスになりました。

「NICE FLIGET! 」びっくりするほどのご都合主義ドラマ。コロナで低迷している飛行機業界の宣伝ドラマでしょうか。それにしても出会いとかバッタリ会うとかあらゆることがご都合主義で、定番のキャンプシーンもあり、頑張っている出演者たちが可哀想になりました。

「トモダチゲームR4」最近よくある、ゲーム的なドラマ。誰かを騙したり、それを突き止めるようなゲーム? 一瞬たりともドキドキしなかったけれど、これを好んで楽しめる人たちってどういう人たちなんだろう?

「空白を満たしなさい」前半は良かった。内容が濃いわりにその後の展開は薄かったような。

「僕の大好きな妻!」地味ですが楽しめました。素敵な夫婦。

「あなたのブツが、ここに」こちらも素敵な家族と素敵な会社。

 

勝手な感想を最後まで読んでくださりありがとうございました。