書く仕事をしている人たちの苦しみは、締め切りをまもること。
脚本家も締め切りを守らない人がたくさんいる。
私は、そういうい人はプロではないと思っている。
だから、私は締め切りを落としたことは一度もない。
でも、実際は、天才的な戯曲家に締め切りを守れない人が数人いる。
三谷幸喜さんも何度かニュースになっているし、
やはり私が大好きだった、井上ひさしさんは、
ご自身の劇団こまつ座の初日に幕が開けられなかったこともあった。
締め切り間際になると、予想外の力が働き、物凄いアイデアが湧き上がるモノ。
そういうパワーが実際存在するのだが、
それを締め切りを守れなかった言い訳に使う人がいる。
それはこういった実績と才能のある作家だけ言ってもいいこと。
締め切りを守れないのは、プロではない。
実際、小劇場界には、そういう人がたくさんいて、
その人がその劇団の主宰の場合は、周りの人が文句を言えない。
全ての芝居作りは、戯曲が出来てから始まるのだから
なるだけ早く脚本を仕上げるのが礼儀。
『ゴーストライター』で、作家が「書けなくなった」状態が描かれている。
締め切りを落とすレベルではなく、
筆が進まない、何も書けない状態。
小説家でも戯曲家でもアイデアが溢れている時期には、
何も書けない人のことなど想像出来ないだろう。
が、書けなくなる恐怖というものは、私も最初から持っていた。
私の身近にいた人が、遅筆だったせいもあるかと思う。
彼は、本当に書けないのか?書いてないのか?
何を悩むのか?天才なのか?愚鈍なのか? 単なる甘えなのか分からないが、
稽古場に来るといつも向こうからこう言った
「来週には台本持ってくるから」
稽古は始まっている。台本がないと稽古は出来ない。
月曜日になる。
彼が持ってきた台本がたった1ページだったこともあった。
そして言う 「週末には書き上げる」
聞いてもいないのに、いつもそうやって自分から言って、
そして約束を守れないことを繰り返した。
なんであんな嘘言うんだろう?と思った。
書けないならば、もう少し待ってくれと言えばいいのに。と思った。
言い訳なのか?それともそう言うことで自分にプレッシャーをかけているのか?
私とはタイプが違うので分からない。
分かろうともしなかった。
私にとって大切なことは、
稽古を進めることだったからだ。
だから私が戯曲を書くときは、決して遅れないように
いつも準備を万全にしていた。
準備中に、書きたくなることがある。
が、絶対に中途半端な状態では書き始めない。
怖ろしいのは途中で筆が止まることだ。
だから、途中で止まらないように、準備万端になるまで書き始めないのだ。
おかげさまで一番つらい、書けない、締め切りに間に合わないという
怖ろしい経験をしなくて済んだ。
そもそも私は超計画性のある人間なのだ。
つまり天才ではないということにもつながっているように思う。