1987年製作のドラマ「今朝の秋」を見た。
凄かった。
役者さんたちがみんなすごかったが、
中でも笠智衆さん、杉浦直樹さんが、ヤバかった。

私の大好きな山田太一さんの作品だ。
この間までやっていた「オヤジの背中」でも一作提供してくださった。
渡辺謙、余貴美子主演の回だ。

余さんが、今「ファーストクラス」に出演しているので、
それと比較してみると非常にわかりやすいかと思うので。

「ファーストクラス」は、ゴールデンタイムにおりて来たことで
キャストが一変、豪華になった。
誰もが達者な芝居で、人間の裏側の汚い部分を演じることを楽しんでいる感じ。
余貴美子さんが楽しんでやっていることはよく分かる。
色々な演技的技術を駆使している。
そりゃあ、普段使えないものたくさんあるから。

そもそも演技というのは、何もしないことなのだ。
キャラクターを読み解き、
そのキャラクターで感情を流せば、あとは何もしないこと。
この何もしないこと。という点で、笠智衆さんは凄いのだ。
ま、年を取らないと出来ない部分もあるのだけれど。

余貴美子さんも、「オヤジの背中」で魅力的なおばさんを演じていた。
「ファーストクラス」の時のように、技術を駆使することなく。

この差は何?
脚本だろうと思う。
山田太一さんの脚本には、台詞の裏側に何層にも感情の機微が感じられる。
が、「ファーストクラス」にはない。
表と裏だけなのだ。

責めているのではない。
今の時代にはそういうものが受けるのだろう。

もう「今朝の秋」のようなドラマは見られなくなってしまうのだろうか?
時代が変わっても、良いものは良いと思うのだけど、
それでは生き残れないのだろうか?