過去の思い出というのは、それを共有する人が必要なのだ。


友人を失った時に思った。

数日前一緒に持ったあの時間は消えてなくなるのだ、彼女と一緒に。

一緒に過ごした人がいなければ、もうその時間も私にとっては思い出にならないと。


亡くなった母とのことをなかなか思い出すことが出来ない。

いえ、母のことはよく思い出す。

が、幸せな時を思い出そうとするとき、

それは、母が病気などではなく、

私に何の悩みもなく、母の愛情に包まれていたころ

7歳の私が小学校に出かける時、

玄関先で 「いってきまーす」と大声で言い、

揺れるランドセル越しに見えた母の笑顔だったりするのだ。

が、それを思い出すことが出来ない。

思い出そうとすると辛くなるから、思い出そうとしない。という意味だ。


母が居たら、きっと話題にのぼるであろう楽しい過去の出来事を

話す相手がいない。

だから思い出さない。


私の夫の記憶はひどいモノだ。

一緒に行った場所の名前をほとんど覚えていない。

名前だけではなく、出来事もほとんど覚えていない。

彼の脳は、自分にとって重要なこと以外は、ほとんど頭から抜け出てしまうというという性質を持っている。


結婚して日々生活の中で、

時々旅行などに行って夫婦は思い出を積み重ねているわけだが、

今のあの記憶力だと、

年取って、二人で陽だまりの中でお茶飲みながら思い出話をすることは

ほとんど不可能だと思い、哀しくなる。