岡田蕙和さんの脚本

主演 小泉今日子、中井貴一で見せてくれた大人のドラマ。

1話からセリフの妙味で見せてくれたこのドラマを私は楽しみに見た。

取り立てて大きな事件は起きない。

それぞれの個性と恋愛、言葉のやり取り、などで見せるドラマである。

いい作品と言うのは、

見ているうちにどんどん中に引きこまれていくものだ。

そして私は9話を見ながら大爆笑してそれを体感していた。

少々無理のある、双子のそれぞれのキャラクターも

特に内田有紀さんが、きちんと演じ続けてくれたお蔭で、

9話に来て私は爆笑しまくっていた。

ドラマは大きな事件が起きる必要はない。

ただ、小さな事件はたくさん必要である。

私たちが日常生活の中で遭遇する色々な小さな出来事、

それによっておこる微妙な感情の変化。

そして言葉遊び。

それでドラマは出来るし、

笑ったり泣いたりできる。

このドラマは基本的にコメディであるので泣くシーンは特に必要ないが。

その9話だったが、

テレビドラマのプロデューサー役である小泉今日子さんの台詞に

「ドラマの中で人が死ぬのは厭」というモノがある。

シナリオライター岡田蕙和さんの言葉なのではないかと感じた。

人が死なないと悲しめない。

人を殺さないとドラマチックにならない。

そんな感覚を受けるコトの多い左近。

私もこの考えに賛成である。

そう、そこで気づいたのだ。

このドラマは私が作ってきた芝居のジャンルと同じなのだと。

だから私は楽しめた。


そこで私は振り返って考えてみる。

果たしてこのドラマはどのくらいの評判だったのだろうか?

私は1話を見て面白いと思ったが、

私の周囲から、このドラマの噂は全く聞かなかった。

つまり、このジャンルは今の時代に求められているのだろうかということ。

(このドラマのことを言ってるのではなく、私がこれまで面白いと思って作り続けてきたドラマのコト)

このようなセリフ劇は、役者としてはかなり難しい。

下手な役者ではなかなかこなせない。

それを小泉今日子さんと中井貴一さんがそれはそれは巧みに演じていらした。

しかし、その凄さが分かりにくいことも問題なのだ。

泣いたりわめいたり、少々問題のある狂気的な人間を巧みに演じると

演技の素晴らしさを取り上げられ褒められたりすることもあるが、

この微妙な上手さはなかなか褒められないのだ…………トホホ

演技とはそれほど微妙で難しいモノ。

それにしても

このお二人は、コメディということをしっかりと認識して

的確な芝居をされている

そう、今の日本演劇に(舞台と言う意味ではなくあくまでも劇を演じるという意味)

なくてはならない役者さんである。

45歳の役を演じる小泉今日子さんは、

それはそれは美しく、

しかし、時々、ドラマで必要とされている「オバサン」像をしっかり見せる。

ただ、やはりこのようなドラマが今求められていないとしたら、

私は残念なのだ。

感情がストレートでその起伏が激しく、

簡単に笑ったり泣いたり出来ることよりも、

もっとジワーッと心のひだみたいなところで、

何層にもなる感情を分かち合う

そんな高度なドラマがどんどん作られていって欲しいからだ。

そしてそれを楽しめる心をずっと持ち続けて行きたいと思っているからだ。