作:大島里美   
とてもいいドラマを見た。


渡辺美佐子さんがパーフェクトに素晴らしいおばあさんになっていた。

久しぶりに渡辺美佐子さんのお芝居をきちんと見せて頂いた気がした。

顔がパーフェクトなのだ。

以前知っていた女優さんが、

おばあさんとしてパーフェクトの顔になって登場したことにまず驚いた。

おばあさんなのに、

いまだ歯切れも声もしっかりしていた。

舞台を続けているということはこういうことなのかもしれない。

(舞台を続けていてもそうでなくなる人が多いので、それ単体が理由ではないのはもちろん承知のコト)

この素晴らしい女優さんについては別記させていただきたいと思っているので、

ドラマの話に移る。

舞台は世界遺産の白川郷、白川村である。

白川郷は一度訪れたことがあるので、その時も写真も差し込む。


stingのブログ

この村が舞台。

原作モノではないので、白川村にちなんで作り上げたオリジナル作品だと思われる。

この村の絵がそこここに差し込まれることによって、

セリフやドラマに趣や重さが増す。

stingのブログ


「先祖代々守ってきたこの家で死にたい」

末期がんの老女が、家で死にたいという。

入院を勧める子どもたちとぶつかる。

孫が「会いたい人はいる?」と聞くと

祖母は「会いたい人はみんなにいる」という。

この作品の中で私は何度もその迫力に圧倒されて落涙した。

祖母が、典型的な日本の朝ごはんを作って待っていたシーン。

今日も少し寝坊をしてしまった婿が2階から降りてくると

小さい頃に母親を亡くした彼が夢だったという和食の朝食が並べられている。

渡辺さん演じる老女は、新聞を読んでいて何も言わない。

朝食を見て驚いている高橋さん演じる婿。

老女は、黙って囲炉裏に掛かっている味噌汁の鍋の蓋を取る。

「いただきます」と自分で味噌汁をよそって食べる婿。

退院の準備をしっかり済ませてベッドに座って婿を迎えるシーン。

試しに老人介護施設にしばらく入居した老女。

このままここで生活することを勧められた婿は、

「とにかく本人に聞いてみる」と言って、彼女の部屋に入る。

と、ベッドの上に正座して待っている老女がいる。

退院するという意志を示しているのだ。

隣にきちんと荷物が置かれ、

きちんと正座しているが、

具合がわるいのは一目見れば解る。

婿は、質問をすることもなく、

家へ連れて帰ることを決断する。

そして、「よう帰ってきた」と娘を迎えるシーン。

どれもこれも渡辺美佐子さんの圧倒的な演技によるものだった。

そのお蔭なのか、娘の夫役の高橋克典さんも良かった。

あまり親しくない妻の母親との溝を感じつつ、

仕方なく言われるままに家の手伝いなどする時の表情が素晴らしかった。

役者はいい年の取り方をすることでどんどん魅力的な上手い役者になっていくが、

高橋克典さんもきっともっともっと素敵な役者さんになっていくのだと思った。

高齢化のせいか、

最近老人を主役にしたドラマも少し増えた。

民放の連続ドラマにはそういうモノがほとんどなく、

NHKの特番くらいしかないのは残念だが、

そういうドラマを見ていると、

私もこういうドラマの一役をやってみたいと思うことがある。

そもそも、やりたい役が存在しないことに苦しんできたのだが、

素敵なドラマを見るとそう感じることがある。

そして、いいドラマを見ると、いろいろ考えさせられる。

私はいつもドラマを見ながらいろんなことを考えて、

更に広い世界を旅する傾向があるのだが、

終わってからもいろいろ考えさせるドラマは素晴らしい作品だと思っている。

そういうドラマを私も舞台だが、作ってきた。

観劇された方から数日後に

「あの舞台を見てからこういうことを考える」と知らされるととても幸せな気分になれた。

そう、このドラマを見ながら多くのコトを考えた。

それらのことをまた反復しながら、ここに書いていくつもりである。