カンヌでパルムドールを受賞し、有名な作品。
どうして、こんな悲惨なストーリーが出来上がったのだろう?
事実に基づいたストーリーとも聞いたが…
盲目のダンサーの話だと思っていたのです。
見始めてすぐ、面白くはないなと感じた。
つまり私の予測したタイプの映画ではなかった。
手持ち主体のカメラワークも好きじゃないし、
何よりも私はミュージカルが嫌い。
ところが、
ある箇所から引きこまれた。
もう目が離せない。
凄い映画だった。
まず、主演の歌手ビョークが、
全く美しくない人なのですが、
とても可愛らしく見える時がある。
それがたまらない。
彼女(セルマ)の周りには、とても素敵な人もいる。
カトリーヌ・ドヌーヴ演じるキャシーという友人と
彼女を慕うジェフ(ピーター・ストーメア)
しかし、親しくしていたビルが一文無しであることを
秘密の告白として聞いて、
その代わりにと秘密を打ち明けた途端に
ストーリーはどん底へと落ちていく。
息子の目の手術のために貯金をしていると聞いた瞬間に、
まずいな。と思ったけど。
それにしても
失明していく……という
ある種、もっとも恐ろしく、もっとも不幸な状態にいる女性を
ここまで突き落とせる人の悪が私には全く想像を超えている。
この映画が素晴らしいのは、
主演のビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴと言った出演者の他に、
なんと言っても、
ミュージカル部分とストーリー部分のメリハリ、バランス。
素晴らしい。
失明していくセルマは、
辛いことがあった時、ミュージカル仕立てで空想を膨らますことで、
毎日を楽しく乗り切る方法を持っていた。
辛いことがあると、
映像はセルマの空想シーンへと飛んでいく。
そして、彼女に対してひどいことをしたその人物さえも
非常に優しく、柔らかく彼女を包むように、
そのミュージカルシーンに現れる。
彼女が警察に逮捕されるシーンでは、
警察官が登場する少し前から彼女の空想に入り、
空想のミュージカルの音楽の中で、
彼女は美しく警官にパトカーまで運び込まれ、
ドアがバタンと閉じる音で、シーンを切られる。
その空気の切り方が素晴らしい。
それは、ラストシーンでも使われている。
裁判所のシーンでも、
彼女に冷たい人々が一緒にリズムを刻む。
決して笑顔ではなかったりするが、
それがアンバランスではない。
非常にうまく成立させられている。
空気の緊張と緩和。
つまり、メリハリ。
素晴らしい。
最後まで見てから、もう一度最初のシーンを見てみた。
セルマが、まだ幸せに暮らしていた頃の映像。
今度は、手持ちカメラのそのシーンが、
気分が悪いどころか、
非常にセルマのその日常をうまく映し出していることに気づく。
全てが非常によく計算された芸術作品でした。
それにしても、
ここまで暗い、不幸せな、悲惨なストーリーの映画は、
そうそう作れないものです。