再び目が覚めると、例の男が視界に移った。
「思ったより長いこと眠っていたね。でも、もう大丈夫。君の身体は完全に回復した。」
「ありがとうございます。」、わけが分からないまま、とりあえず礼を言う。
「君は今まで随分酷い目にあってきたんだね。」
そう言って男が指を鳴らすと、モニター越しに映像が浮かび上がる。
あの時のトラウマが蘇る。
思い出したくもない過去、消したい記憶。
クラスでの壮絶ないじめ、それが僕を死にまで追いやった1つの原因だ。
柳沢真紀という女が仕切っているグループがいじめの加害者だ。
彼女は気が強く、主張がはっきりしているため、グループの中心になりやすいのだ。
また、仲間内では一定の人気があり、彼女が仕切っているグループはクラスで最大規模だった。
良くも悪くも人を操る技術に卓越し、ある種のリーダーシップがあった。
真紀は遊び心で、夏あたりからクラス内でターゲットを決めて、いじめるという遊びを始めた。
それが面白いとでも思っているのか、彼女に逆らえないだけなのか、取り巻きたちは標的を容赦なくいじめた。
日常適任暴言を吐いて精神を疲弊させたり、トイレで水をかけたりする悪質な行動が長期にわたって続けられる。
質が悪いのは、彼女たちは被害者に目に見える外傷を負わせないということだ。
僕も散々痛めつけられた。
だが、怪我をしていないために、周りの大人たちは話にまともに取り合ってくれなかった。
怒りと憎しみで全身を震わせていると、男が言った。
「奴らに、復讐したくはないか」
僕は黙って頷いてしまった。
「じゃあ、まずは弱そうな獲物からだ。」
男が指さした先には、谷口詩織の姿があった。
僕を直接いじめていた主犯格の1人だ。
真紀は直接ターゲットをいじめるような真似はしなかった。
自分より弱い立場の者にそれをやらせ、いざとなれば自分だけ逃げようというわけだ。
詩織は普段はとてもおとなしい性格だが、真紀たちのグループと一緒になると、強気にいじめを実行した。
はっきり言って、相手によって態度を変える所が好感を持てない。
「彼女は拍子抜けするほどあっさり罠にはまってくれたよ。」
男は意味深な言葉を言うと再び指を鳴らした。
すると、台の上で四肢を拘束された詩織がそこに現れた。
「あんた、何なのよ。私に何の用?いじめられっ子の分際で何しようっての?」
言葉自体は強気だが、目が泳いでいて迫力がない。
僕は彼女の両足にそっと指先を当てた。
「あの時の、借りを返すだけだよ。」
そう言うなり、彼女の足裏を指先でなぞりはじめた。
「ちょっ。ふはははは。待って、待ってよ。くすぐったいってばぁ。」
彼女は予想以上に激しく身体を動かして悶えていた。