「まずは一番弱い者からいじめるのが基本よねー。」という真紀のポリシーに基づいて、田沢由奈への壮絶ないじめが始まった。

 

彼女が学校に行くと、机の上に死ね、ブス、消えろなど、大量の悪口が書かれている。

 

詩織は真紀たちに何度も由奈をいじめるなと言ったが、彼女たちは聞く耳を持たなかった。

 

ある日、真紀たちは彼女の椅子の上に新品の画鋲を置いておいた。

 

新品の、というのがポイントだ。

 

古びて刺さりにくい画鋲ではなく、鋭利に尖っているピカピカの画鋲。

 

そんなことを何も知らない彼女は、いつものように椅子に座って悲鳴を上げた。

 

それを見て、笑い声をあげる真紀たち。

 

数学の授業の時間、先生が「この問題の答えは」と言って由奈を指名した。

 

「えっと...その...」

 

「また忘れたの?田沢さん、今日で何回目ですか。正直先生は呆れています。何回言ったらできるようになるのですか。」

 

「ごめんなさい......」、彼女は目に涙を浮かべた。

 

そんな由奈の様子を見て、詩織の心が痛んだ。

 

彼女が答えられないのも無理はない。

 

というのも、彼女のやってきた宿題を真紀たちが毎日のように破ってゴミ箱に捨てていたから。

 

由奈は元から大人しい性格で、決して明るい方ではなかった。

 

けれど、毎日のようにいじめられることによって、今の彼女の顔は暗く曇っていた。

 

 

由奈はその日、学校が終わると一目散に家に帰ろうとした。

 

だが、急いで学校の階段を降りようとした時、後ろから腕を掴まれた。

 

彼女は小さく悲鳴を上げる。

 

「あんた、私たちから逃げれると思ってるの?このドブスが。」

 

真紀は物凄い剣幕で由奈を睨みつけ、彼女を蹴り飛ばした。

 

由奈の身体は階段から転がり落ちた。

 

口を切って血を出しながら、由奈は苦しそうに顔を歪めた。

 

「さあみんな、早めに逃げるわよ。」

 

佐紀の言葉により、彼女と彼女の取り巻きたちは一斉にその場を離れた。

 

心配して由奈をこっそりつけてきていた詩織が、急いで彼女に駆け寄る。

 

「由奈、ねぇ、由奈、大丈夫?」

 

彼女は黙って頷くと弱弱しく立ち上がった。

 

「ごめんね。私、由奈のことが心配でこっそりつけてきたのに、守ってあげられなくてごめん。」

 

「.....詩織の..せい....じゃないよ....」

 

彼女は小さく呟いた。

 

「ねぇ、佐紀、あんなことしちゃって大丈夫なのかよ。バレたらただじゃ済まないわよ。」

 

牧野まどかが心配そうに佐紀に尋ねる。

 

「大丈夫よ。あのくらいで人間は死なないわ。まぁ死んでくれても良いんだけど。それに彼女は私たちのことを誰かに言う勇気もないでしょうから、問題ないわ。」

 

真紀は平然とそう言った。