ヴォーヌ・ロマネ2010 2本 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

9月のシルバーウィークの連休の後、先週末には土曜日を休診にして東京であった学会に行ってきた。
土曜の夕方にあったイブニングセミナーで、埼玉医大准教授をされている川上理先生と一緒に
プレゼンをした。
わたしは臨床医として自分の結果を提示して印象を述べたのに対し、川上先生は同じ結論を
エビデンスに基づいて引き出されていた。
セミナーの企画者の意図通りだと思われ、人選の妙に感心したのであった。

この先生はわたし以上にプレゼンの達人で、内容もさることながらスライドの凝りようが半端ではない。
Windowsではきれいなフォントが使えないので、もちろんMacを使ってのプレゼンだが、
何とkeynoteではなくPower Pointを使っておられた。
控え室では「何でkeynoteを使わないのですか」と聞いたのだが、
他人に渡す際の互換性・文字化けを避けるためとのことだった。

Power Pointであれだけビジュアルに美しいスライドを見たのは初めてである。
医師としての臨床力とか、学者としての業績がどうなのかは初対面だから分からないけれど、
これだけセンスの良いプレゼンをされるのだから、推して知るべしだろう。



翌日曜日には、シンポジウムの座長とオープニングのプレゼンをした。
これも学会長から直接依頼されて、座長と演者を決めるところから始めたのだが、
会場は超満員の立ち見状態で、4月の総会に続いて大盛況に終わり、大いに満足して帰途についた。
自画自賛するあたり、わたしはほんとうにおめでたい人間である。

そして昨日は堺市の医会で全く違う内容の話をさせてもらった。
1週間で3回も内容の違う話をしたことになる。
京大出身の開業医の先生に座長をしてもらったが、10年以上も前に
この先生が初対面で開業前にわたしの診療所に来られて、一緒にワインを飲んだことを語られた。

お互いあれから患者さんを増やして、事業としては成功した部類に入ると思うけれども、
この先生の患者数は年あたりわたしの1.5倍のペースである。

先日札幌から帰る飛行機で隣になった元京大准教授の4年後輩だそうだが、
お世辞抜きでものすごく優秀な先生で、立地から診療内容まで読みが深いのに驚くばかりだ。
開業医の少ない京大出身の先生としては、良い意味で異様な才能の持ち主だと思った。


グロ・フレール・エ・スール/レシュノー ヴォーヌ・ロマネ 2010
購入日    2012年10月
開栓日    2015年9月
購入先    湘南ワインセラー
インポーター モトックス・八田
購入価格   5580円・5700円

いずれも有名造り手の定番村名ワインである。
村名とはいってもブルゴーニュの頂点に位置するヴォーヌ・ロマネなので、
今や世界的な市場があるため入手はやや困難なものの、まだなんとか買える造り手だ。

グロ・フレール・エ・スールの方は、同時期にかわばた酒店から4680円で購入した同じものが
自宅にあるので、ひょっとしたら購入先とインポーターは間違えているかも知れない。
まあ、それは大した問題ではない。

若開けとは知りつつこんな2本を開栓したのは、イヤミだがこれ以上安くて普段飲みできる
ブルゴーニュが自宅で発見できなかったからである。
ブルゴーニュのピノ・ノワールだけでおそらく700~800本くらいあると思うが、
若いものが多いため、今開け頃のワインを探すのが難しいのだ。

値が張るので基本的にバックヴィンテージは購入しない。
若開けできるACブルゴーニュなどは本数を買わないので、検証だと言いながら
さっさと開栓してしまって残っていない。
結果、1級以上の2000年以降のワインばかりがゴロゴロ残っている状態である。

この2本、2010とはいえ今開けてすでに飲み頃であり若さを感じない。
価格帯も同じで同じ産地のヴォーヌ・ロマネでも、これら2本はかなり性格は異なる。
グロ・フレールの方がエッジが際立っていて酸が明瞭であるのに対し、
レシュノーの方はエチケットの印象通り何となく茫洋としている。
香りも同様である。

率直に捉えるとグロ・フレールの方が分かりやすくて直球勝負、これがニュイのピノ・ノワールだ、
と言えるのだけれど、あまりにストレートな美人であるがゆえに素直に喜べない。
「これだったら誰でも美味しいと思うだろうなあ、これがブルゴーニュのピノ・ノワールだと言えば
 どこからも文句は出ないだろうなあ」
というワインである。

一方のレシュノー、何となく脱力感があってゆるいワインである。
開栓後3日たっても酸が立たないままながら、ちっとも落ちないのは立派だ。
この造り手のニュイ・サン・ジョルジュでもこんな調子で、
旗艦ワインであるクロ・ド・ラ・ロッシュ2008にも共通したゆるさを感じた。

この2人の造り手のワイン、何の不満もないのだけれどストレートと変化球の違いはあるとして、
何となくカリスマ性が無い。
フーリエやルーミエとどこが違うのかなと思うのだけれど、このカリスマ性が言葉にならない。
ワインなんて、所詮は農産物なのだが不思議なものだ。