大阪の素晴らしきフレンチの名店たち | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


12月16日 ポワンでのワイン
お店のシャンパーニュと持ち込んだブルゴーニュ2本
ドニ・モルテ ジュブレ・シャンベルタン ル・サンク・テロワール 2004
フーリエ ACブルゴーニュ 2009

最近本業が忙しすぎて、講演や学会の雑務で診療所を休んで出かける時に
新幹線内でブログを更新する、というおかしなことになっている。

先週の東京の会議で一緒になった、仲良しの山形大学教授(来年1月から新潟大学教授)が、
「会議ばっかりだよ、週に診療時間20時間かぁ・・無理だなあ
 手術や診療に逃げている時間が楽しい」
と言っておられたが、わたしとまるで逆なので面白かった。

「先生、開業したら2日か3日で診療時間20時間ですよ」と言っておいたが、
増えまくる患者さんにどう対応するか、真剣に動き出さなければいけない時期になってきた。

さてそんな日常の中、詳細に飲んだワインを記載する余裕が無くなっている。
もちろんワインは開けているが、ある程度レベルの高いピノ・ノワールが
デイリーワインになっていて、店に持ち込むワインもその延長線上にある。

自宅で孤独にワインを開けていることが多いのだけれど、時には店にも出かけている。
今年後半、大阪、フレンチ、というキーワードで書いてみると、
ユニッソン・デ・クール、コンヴィヴィアリテ、ブザンソン、ラ・シーム、ポワンという
名だたる店に訪れた。

いずれの店も夜のコースで1万円前後なので、価格的に大差はないのだけれど、
どうも東京では考えられない価格のようである。
彼の地では☆が1つでも付いたりしたら、諭吉さんが3人くらい出て行くようだ。

上記の店はいずれも名店に間違いなく、料理に関してはまずハズレは無い。
接客に多少の優劣はあると思うが、初めての訪問者はどこに行かれても失望することは
ないだろう。
さほど訪問歴もないのを承知で、あえて簡明に印象を述べる。

ユニッソン・デ・クール
料理は流れを重視しつつ上品にかつ無難にまとめられていた、
まだ1度しか行っていないので、シェフの明確な個性は見えるところまで行っていない。
シェフ自身にも会っていないので、どんな人かはよく知らない。
ワイン持ち込み可能。店のワインリストはさほど品数は多くなくやや高め。
次に行く時には3000円払ってでもぜひ持ち込みたい。
長身の美人女性ソムリエが非常に好印象だが、細かい点ながら
ややフロア担当者の人不足を感じた。

コンヴィヴィアリテ
ユニッソン・デ・クールと同様、一度は訪れてみたかった店。
良い意味で店内が狭くて、非常におしゃれにまとめている。
料理は極めて繊細、量も意図して少なめかつ軽やかさを意図していると思われた。
女性的と評されるのも分かる。
ワインは持ち込めるが持ち込み料の設定が高く、実質的には持ち込みづらい。
しかしワインリストの価格は驚くほど安い。
シャンパーニュはいずれも格安で、ペウ・シモネが何と7000円台。
ドンペリやクリュッグを24000円で飲める店は他におそらく無いだろう。
ブルゴーニュのリストも充実しており、女性フロアスタッフも気配りが細やか。

ブザンソン
かつてアキュイールにおられた、接客の神様・名物メートル大林さんがおられる店。
シェフと女性ソムリエと大林さんが揃っているので、
この店に行って盛り上がらないわけがない。
シェフはジビエがとてもお得意で、繊細なテイストながらしっかりした量を提供され、
相当な実力者とお見受けする。
何よりコスト・パフォーマンスがすごい。
日常気軽に利用できる店で、これ以上のところは無いのではないか。
シンフォニーホールのそばだが、ランチに利用するのは超おすすめ。

ラ・シーム
京都の食の達人たちが、正統派のフレンチでは最も評価する高田シェフの店。
このシェフは相当な頑固者、いや信念がある一徹な人である。
料理にはっきりした主張があり、全力投球してきて客を圧倒する力を感じる。
11月15日に訪れた際のメインは雷鳥だった。
苦味のある肉に負けないソースの個性の強さには恐れいった。
基本的にはワインは持ち込めないが、リストの価格はリーゾナブル。
打てば響くが、打たなくても圧倒的な風圧を感じる。
軽いランチでは、このシェフの豊かな個性は露呈しないかも。
すでに開店以来大きく羽ばたいており、将来どう変貌していくか非常に楽しみ。

ポワン
旧アキュイールを閉めて丸2年。その約半年後に新福島に店名を変えて移転し、
1年7ヶ月が経過した。
今や押しも押されぬ大阪トップのフレンチと評価され、超予約困難店になっている。
大林さんが店を去られ、もう1人の美人ソムリエも結婚退職となり、
今では育児のためソムリエのマダムが店に出られなくなった。
しかし、この店には若き美人ソムリエの大矢根さんがいる。
彼女は実に素晴らしい!惜しげも無くワインの感想を客にぶつけてくる大胆さがある。
ここのマダムを除けば、個人的には大阪でわたしが知る最も感性豊かなソムリエと思う。
接客には天性のものを感じるが、ソムリエとしてもこんなに勉強していて向上心のある人は
ちょっと珍しいのではないか。
この秋、シェフも若い女性スタッフもソムリエ試験に合格されたということだ。
上記の写真のワインも大矢根さんの判断で、格下と思われがちなフーリエをあとに持ってきた。
最初の3mlでそれを判断されたのは見事というほかない。
一方、和に振った料理のテイストは繊細の極みであり、アキュイールの最後とくらべても
数段グレードアップしている。
味覚と視覚だけでなく、温度、食感、香りなどあらゆる感性に訴える料理を創作し続けている
中多シェフは天才だ。
個人的には最も落ち着き安らぐ店である。

どの店にでも言えることだが、ワインがなければ料理は盛り上がらないし幸せな時間は来ない。
しかし、やっぱりよきワインこそ料理の下僕になり得るである。