甘い・新鮮・1人で1本は苦しい・・サン・スフル | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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タケダワイナリー(山梨) サン・スフル(デラウェア)2010
購入日    2011年1月
開栓日    2011年2月5日
購入先    タケダワイナリー
インポーター 輸入していません!
購入価格   1680円

言うまでもないが、サン・スフルとは「酸化防止剤が入っていない」という意味である。
こんな名前のワインを見ると、意味を知らない多くの人は何のこっちゃと思うだろう。

ウィスキーに「シェリー樽熟成」とか、日本酒に「YK35」とか、
ビール風飲料に「糖質オフ」とか、ミネラルウォーターに「塩素ゼロ」とか、
清涼飲料水に「甘味チクロ100%」などと命名するのと同じレベルの話ではある。

デラウェアはアメリカ原産らしく、オハイオ州デラウェアで命名されたから
この名があるとWikipediaに書いてある。
珍しくも何ともない食用ブドウである。

先日山形に行った際、居酒屋の「水鳥」で同じワインの2009が出てきて6人で空けたが、
爽やかな発泡酒で、食中酒としては甘すぎると感じたものの、もうちょっとたくさん飲んでみたい、
と思った。

タケダワイナリーを訪問した際、いくつかの自社畑ブドウによるワインは売り切れていたが、
このサン・スフルは在庫があったので、2009と2010を少しだけ購入した。
サン・スフルは自社畑のブドウではなくて、山梨県産ブドウによって生産される
ワインなのだそうだ。

自宅に着いてから1週間くらい休めて開栓したつもりだが、
スクリューキャップを開栓したら、いつまでも泡の吹き出しが止まらないので泡を食う。
ほっておいたら10分くらいは泡が止まらず、どんどん中身が溢れて無くなってしまう。

これはえらいこっちゃ、とばかり、手のひらで瓶の口を押さえて、ちょっとずつ泡を
逃がしながら中身の液体を逃がさないようにして、じっと数分間耐えていた。

台所の流しで瓶の口を押さえているわたしを見て、家内が呑気に「何してんのん?」と言う。
見ての通り、貴重なワインを失わないように奮闘しているのだが、
はたから見ると滑稽に見えるようである。

放って置いたらおそらく3分の1くらいは流出してしまったと思われるが、
努力の結果、流れ去った天使の取り分は5分の1くらいでおさまった。
よく考えると2010だから、山形ヌーボーとも言えるもので、この程度泡が強くても
当たり前なのかも知れない。

ようやく泡が収まったところで、ロブマイヤーに注ぐ。
ワインが1680円で,グラスが20,000円であるというアンバランスもまた良い。

ブドウの実そのものの香りを嗅いでいるような、甘~~い果実香があるが、
こういうのをワインの芳香とは言わない、と思う。
まさにブドウ自身の香りである。

相当酸味が強いワインやシャンパーニュですら「甘い」という娘も、これを美味しいと言う。
酸性人も納得させるだけの、果実の美味しさを備えているようだ。

2009と比べると,こちらの方が一層フレッシュで泡と酸味が強いが、甘みはやや控えめだ。
だがそれでもしっかり甘く、これを食中酒にするのには向いていない。
数人でパァッと空けてしまうのに最適だと思う。

それを3日かけて1人で飲む、というのはブルゴーニュワイン好きにあるまじき行為なのかも
知れないし、このワインにとって最適の飲み方でもないだろう。
さすがに3日目には飽きてきて相当辟易する。
いくら美味しいブドウでも、大皿いっぱい完食するとイヤになるのと同じである。
それはこのワインにとっての批判にはならない。

タケダワイナリーの看板ワインである、キュヴェ・クニコというシャンパーニュ製法で造られる
限定品のスパークリングワインがあって、クリュッグ1本買える価格で売られているが、
今やワイナリーでもネット上でも売り切れている。

ラブワインさんは飲まれたことがあるようだが、探し回って高価な代償を払ってまで
試すべきか、難しい問題ではある。

しかしこのサン・スフルは、毎年1~2本ずつなら楽しみたいと思う。
ワインの経験値にかかわらず、これを美味しくない、という飲み手はまずいないだろう。
1人で1本まるまる空ける、ということさえしなければ。