わたしが大阪で好きなフレンチは、カランドリエ、エテルニテ、アキュイールだと
普段から言っているが、この3つの店は正直どこもお勧めである。
このレベルのフレンチが当たり前になってしまうと、もうホテルの宴会料理など
食べられなくなるし、ホテルの立食パーティの料理だったら、ほんの少し口にするだけで、
帰宅してからいつも口直しにワインを開ける。
さらに言えば、北浜に本店のある有名なイタリアンでも、この3つの店の足元にも及ばない。
前菜の凝りようからして違うし、チェーン展開などしてしまうと、料理の一皿一皿から
シェフの個性が消えてしまう。
上記3店では、アキュイールだけ☆☆で、あとの2店は☆だが、まあこれは他人の評価
なのであって、自分は自分なりの評価をすればいいと思う。
どの店のシェフも間違いなく腕利きで、自分の個性を料理に込めることにかけては、
お見事な仕事をされる。
例えばUTAさんは、最もオーソドックスなカランドリエがお気に入りのようだ。
あとは店の照明とか、食器とか、フロアスタッフの笑顔とかいった味以外の演出の違いで
どう個性を出すか、ということで☆が増えたり減ったりするのだと思う。
その演出が最も個性的であるのがHajimeで、☆☆☆はその結果だろう。
特に理由はないが、エテルニテには1年ほどご無沙汰してしまった。
先週の木曜日の18日、☆がついてから初めての訪問が叶った。
この店は靱公園の南にあり、カランドリエやエテルニテより周りは閑静である。
若いカップル3組とあと中年2組(われわれ含む)でこの日も満席であった。
前菜その1 自家製鴨の胸肉の生ハムとフォアグラのムース ローズマリーのラスク
前菜その2 仏ロワール産ホワイトアスパラ 大分県産龍の卵とハマグリ
前菜その3 フォアグラと静岡県産キャベツ
玄界灘のヒラメ ホタルイカと山菜 うすいエンドウのソース
この料理はお見事だった。
葱のような野菜で囲まれた中にホタルイカとヒラメが鎮座し、薄味のソースの味付けも
素晴らしい。
シャサーニュともばっちりの相性である。
美深産乳飲み仔羊
上州和牛のヒレ肉
自分のチョイス 鳩の胸肉 肝のソースで焼いたもの
今回は3人での訪問で、3人ともメインは異なるチョイスとなったが、どの皿も視覚的にも
楽しめた。
この3品以外にも、シャラン産の鴨、カナダ産の牛、青森産のブタもチョイスできたから、
何と6種から選べる。
これもシェフのレパートリーの広さと客の多さがあってできることだろう。
選べるチーズのいろいろ
1品目のデザート
イチゴを飴でくるんで、パリパリと食べる。これはおかわりしたかった。
2品目のデザート デコポンのムースグラッセ ミルフィーユ仕立て
中に挟まれているのがデコポンのムースで、ミルフィーユとの食感の違いが面白い。
上品な甘さ、お腹がいっぱいになりすぎないのもいい。
リシャール・シュルラン カルト・ドール・ブリュット NV
インポーター ラシーヌ
グラスで頂いたシャンパーニュ。
ピノ・ノワール 70%、シャルドネ 30% だそうだが、シャルドネが30%も入っているとは
思えないほど赤ブドウっぽい。
ドライで筋肉質なシャンパーニュとは違い、サクランボの実のような果実を感じる。
ドメーヌ・フォンテーヌ・ガニャール シャサーニュ・モンラッシェ 1er レ・シュヌボット 1999
インポーター JSRトレーディング
ドメーヌ・デ・ランブレ クロ・デ・ランブレ 2002
インポーター ジェロボーム
店のリストから選んだ白ワインだが、これは大当たりであった。
シャルドネの押しつけがましさは皆無で、花の香がふんだんに香り、どこまでもたおやかで可憐。
いつまで行っても落ちることはなく、晩餐の始めに開けて最後まで中心に酸が溢れ、
個人的にはこの日の最大の立役者であったと思う。
最近はこんな白が最も気に入っているが、悔やんでも悔やみきれないのは、
自宅のセラーにこんなものがほとんど存在しないことである。
バックヴィンテージでブル白を購入しても、外れる確率が高くて、冒険する気にならず、
置き場所もなく買うのをためらっている。
赤のクロ・デ・ランブレは持ち込んだものだが、これが微妙なハズレであった。
リリース直後に入れて、セラーでずっと動かさずに5年保管したものだから、
こればかりはどうしようもない。
グラスに注いですぐは香りが立つが、その時点から直ちに落ち始めて、
30分くらいで枯れを感じさせる。
90年代前半まで、特級畑とはいえ評判の良くなかった造り手だが、5年くらい前に飲んだ
1998がとても良かったので、この2002には期待したのだが・・
3カ所から3本購入し、まだ2本あるから、追って開栓してみよう。
1年ぶりに行ってやっぱり思ったのだが、このシェフの力なら☆1つは足らないくらい。
コースのどの皿にも、実直で真面目な性格が出ている、と感じたのだがいかがだろうか。
ちなみにシェフの年齢は、アキュイールやHajimeのシェフと同じ35歳である。
最近4ヵ月ほどの間に、カランドリエにもアキュイールにも行く機会があり、
どうしても比較してしまう。
エテルニテが他の2店と最も異なるのは、店の北側が広い公園で閑静であるため、
日暮れてから訪れると暗いことである。
でありながら店内の照明も3店中最も暗く、外とのギャップが無さ過ぎる。
良く言えば落ち着いているものの、悪く言えば料理の色調を強調するのにも
暗すぎるのではないだろうか。
黒門の六覚燈は、がちゃがちゃした外界から、決して美しくない階段を上ると
照明が眩しい別世界が待っている、という演出が上手い。
エテルニテも、店内の照明をもう少しお洒落にして明るくし、壁の絵の色彩感も浮き立たせた方が、
閑静な外から入った際のインプレッションが際立って良いのではないか、と思った。
ブロガーだからデジカメを使うのだが、その際に最も苦労するのがこの店で、
一昨年デジカメを買い換えたのも、この店の料理をきれいに撮りたいがためだった。
ミシュランの改訂版が出る際には、演出に凝ってぜひ☆をもう1つ「だけ」増やして欲しい。
まあ、わたしには☆の数なんてどうでもいいのだが。