濃すぎて甘すぎ・・ジャドのポマール | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

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ドメーヌ・ルイ・ジャド ポマール クロ・ド・ラ・コマレンヌ モノポール 2002
入手日    不詳
開栓日    2009年3月10日
インポーター 兼松株式会社

ペノのエム・ド・べーのあとで開けたピノ・ノワールがこれ。
痩せたニュイではなく、陽当たりの良いボーヌで、エチケットには堂々とMONOPOLEと謳われている。
頂き物のワインであるが、相当な値付けのワインであり、実際に現在でもネットでは
8000円の価格が付いている。

しっかり、と言うよりどっしりとした果実があり、黒系果実の豊富な重いワインである。
こってりとタンニンを纏っており、村名格のブルゴーニュとしては最も濃厚な部類に入る。
しかもヴィンテージは良年の2002で、開栓時期もまさに飲み頃であると言っていいと思う。
安直に言えば、ボルドー好きには抵抗なく受け入れられるピノ・ノワールだろう。

ピノとしては常識的で普通に美味しい、が、自分にとっては濃い。
そして甘すぎると感じてしまった。
はてこれがどんな料理に合うのか、頚をかしげてしまう。
ジビエや肉を使ったフレンチのメインの場には相応しいかもしれないが、
ここまで濃くて甘いと、自宅での食卓ではあまり出番がない。

どう客観的に見ても間違いないのは、このワインを和食に合わせることには無理がある、
ということである。
数年前ならこれで幸せな気分になれたかも知れない、まっとうなブルゴーニュ。
それを厚化粧と感じてしまうのは、自分の側の変化から来るものだろう。

暴言と罵られるのを恐れずに言えば、いくら格調があっても、濃いワインを日常的に愛飲する
飲み手というのは五感の鈍い人種である、と思っている。
もっと暴言を吐くならば、いかにブルゴーニュであってもグラン・クルを日常的に
開栓している飲み手というのも、五感が鈍いと思っている。

でなければ、ワインだけにエネルギーを集中できる暇な人か、よっぽどエネルギーに溢れた人だろう。
まあ嗜好は人それぞれだから、他人のことはどうでもいいが、
自分のエネルギーは有限であって、何にそれを消費するか考えなければならない年齢に
なっていることには間違いはない。

音楽の話にすり替えれば、仕事を終えて疲れて帰宅し、安らぎを求めてワイングラスを傾けながら
モーツアルトを聴く、という人は、まったくモーツアルトを分かっていない、と思う。
五感の優れた人間があんなものを聴けば、余計に疲れるのである。

わたしは忙しい町医者であって、自分の大多数のエネルギーを仕事で消耗してしまっている。
だから、情けない話だが、帰宅してモーツアルトに親しむだけの余裕もなければ、
グラン・クルに付き合う余裕もない。

まして、日常の夕餉の場に、濃くて重いボルドーやローヌを侍らす気持ちにはならない。
仕事をリタイアしてしまえば、また好みも変わってくるかも知れないが、
少なくとも現在のところはそうである。

わたしはワインをブランドや価格で選んでいるつもりはないので、
いくら金持ちになっても、DRCを連日開栓する、というようなことはしない。
そんなことをするくらいなら、ベデルのアントル・シエル・エ・テールやペノのデジレを
開栓する方が、ずっと幸せである。

これは経済的背景とは関係のない話である。
良いワインは、開栓のTPOと飲み手を選ぶ。
実際には、金だけある不感症な飲み手の犠牲になっている銘醸ワインも多いのだろうが。