老いることの美学・・メイエー | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ジュリアン・メイエー ピノ・ノワール「ハイセンシュタイン」アルザス VV 2002
購入日    2007年4月
開栓日    2008年7月16日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター コスモ・ジュン
購入価格   4800円

あれ?このワインもう1本あったんだ、と偶然発見して開栓。
今や在庫整理もできておらず、何が何本残っているか分からない、びっくり箱状態の
わが家のワインセラーの混沌状態が恨めしい。
1月に開けた1本目際の印象はこちら

2002だから、熟したワインを期待できる時期ではないのだが、妙に老けている。
しかし、老けて行きながら、老いることの美学を抜け目なく実践している。
枯れていく過程にあるような、哀愁を感じさせる老け方ではない。
これがこのワインの最大の特徴だと思う。

出汁のようなじわ~っとした味わいに、紅茶の芳香が伴う。
このワインにおける果実味とは何なのかを問うのは、禅問答のようである。
こんなピノ・ノワールは、ブルゴーニュではまず経験できない。

前回の1本と本質的には印象は変わらないのだが、決定的に違う点がある。
今回のボトルは、2日目にもほとんど落ちておらず、加齢に伴う美をまとっている。
わずか1日の酸化などでは、びくともしなくて、安定感がある。
それを思うと、前回のボトルの状態は万全ではなかったのかも知れない、と推察される。

若い頃に健康的でないのに、美しく老いるとはちょっと想像しがたい。
2001も2002も、このワインは開けたときから老けている。
だったら若いときがどうだったのか興味あるところだが、気品のある美人以外に考えられない。

若いときの姿から将来を予想して点数を付ける、という気の毒な行為を
多くのテイスターの方がされている。
このワインでは、そんな未来を占うテイスティングなどする気にならないだろう。
それより、若かった際の美しい立ち姿の方に想いを巡らせる方が楽しい。
奇妙と言うか、哲学的というか、何とも不思議なワインである。

「ヤナーチェクの草陰の小径」とは、我ながら言い得て妙だ。