最悪のマリアージュ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

昨晩は中之島のリ○ガ・Rホテルにて、恒例の医師会の新年会があった。
このホテルは、大阪では最も格式の高いホテルと言って良いだろう。

地元医師会に入って数年になり、親しい先生方も多くなって、会そのものは楽しいのである。
この料理とワインを選んでいただいている先輩の大先生に申し訳ないし、
このホテルの調理師のかなり上の方に、わたしの遠縁の親類もいるので書きにくいが、
「何とかならんか、料理とワイン」

供されるフレンチのフルコースには、大きな不満は、ない・・・
ただし、いつも思うがここの料理、必ずと言っていいほど皿の真ん中に裏ごしした
ポテト、エンドウ豆などが添えられていて、その上に食材が乗っている。

いくらソースに凝っても、裏ごしポテトと一緒に口にすれば、ソースの特徴が死んでしまう。
だからこのホテルの料理は、いつもいつももっさりとしたイモの食感がつきまとい、
ビネガー味などの酸味が、乏しく感じられてしまう。
3wayスピーカーから、高音域のトゥイーターを外して鳴らしたような印象だ。

それを象徴するのが、魚料理と肉料理の間に供されるシャーベットである。
昨晩は「洋梨酒のシャーベット」だったが、これまた酸味が乏しくてもっさりしていた。
まあ、わたしの好みに合わない味付けだ、と言われればそれまでだが、
この味わいのフレンチ・レストランが街にあったら、わたしは自腹では再訪しない。

しかし、何と言ってもとどめを刺すのはワインである。
乾杯の際の「RIHGA」というシャンパーニュは、選択の余地はないが、極上ではないとしても
まだ許せる。
次の赤白のワインは、大先輩の先生のリクエストがあった上で、ホテルのソムリエが
選んでいるのだろうが、毎度あきれるレベルであって、昨晩も期待通りだった。
白:ペイ・ドック・シャルドネ(Luton) 2005
赤:シャトー・レイノン(プルミエ・コート・ド・ボルドー) 2003

250人以上の大宴会で、本数が揃わない、というのは分かる。
しかし、いくら何でもビールの方がまし、というものを出してくるようでは、
せっかくの料理も泣くだろうし、ホテルの沽券にかかわるのではないだろうか。

白ワインは、安物のサイダーの香りがして、味わいにはシャルドネらしい透明感がなく、
料理と共通してもっさりとしていて、酸味などどこにあるのか、という代物だった。
あのシャルドネから、ここまで不味いワインができることにまず感心した。

こんなものを探してきて食卓に載せるソムリエの才能(蛮勇)というのは、ある意味すごい。
感性があらぬ方向を向いているのか、他人のアドヴァイスを受け入れない唯我独尊の
人物なのか、ちょっとわたしの想像の域を超えている。

酸味を抑えた味付けの料理なのだから、例えば村名シャブリの2005くらいを持ってくれば、
ワインの明確な輪郭がよきマリアージュをもたらすと思う。
そちらの方がよほど安直な選択だと思うのだが、どうだろうか。

赤ワインも白に輪をかけてもっさりしていて、香りはまるでない上に、酸味も皆無。
もはや産地やセパージュなど、調べる気にもならないクソワインである。
料理と合わせてもまるで華がなく、最後に出されたチーズも、合わせるワインがないので
残して帰ってきた。
チラリと見たこの赤ワインのインポーターは、麒麟麦酒となっていた。

家庭の事情もあり、昨晩は終宴後すぐにタクシーで帰宅したが、もっさりした料理とワインの
食後感に耐えきれず、いっしょにタクシーで帰った親友の先生から
「先生、帰ったらワインを飲み直しますよね」
とズバリ指摘されてしまった。
この先生もワイン通なので、おそらく同じようにされたと思う。

可能なら、このホテルでの晩餐の際には、こっそりワインを持ち込みたいと思うのだが、
医師会で変人のエチケットを張られると、仕事に差し障るからできそうにない。
今さら手遅れだ、という声がどこからか聞こえてくる気もするが。