午後のペティアン | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ドメーヌ・ラ・ボエム
ペティアン・ナテュール『フェスティジャール』DOUX VdT 2005
購入日    2006年4月
開栓日    2006年11月9日
購入先    Alcoholic Armadillo
インポーター ヴァンクゥール
購入価格   2800円

わたしは学会の準備はギリギリまでしない。
大学院生のころ、翌日のポスター・セッションの準備のため、夜に研究室でタイプを打っていたら
「griotteさん、何してはるんですか」
と言いながら、恩師の教授がやって来られた(この大先生、なぜか弟子にも敬語を使われる)。
「明日の学会発表のポスターを作っています」と言うと、
「へぇ~、今ごろやってはるんですかぁ~、大物ですなあ」とあきれられてしまった。
栴檀は双葉より芳し、と言えば自画自賛すぎるので、三つ子の魂百まで。

で、今日の午後は、3日後に迫った学会の準備をしながら、このペティアンを1人で空けてしまった。
食中酒としては当然ながら甘すぎるので、どんなシチュエーションで開けるべきものか
考えもののワインだが、何のことはない、何も食べずにこれだけ飲んでおればいいのである。

この甘い方のペティアンだが、2本買ったうちの2本目で、1本目は5月のワイン会で開栓して
数人で30分くらいのうちに飲んでしまった。
わたしには食前酒にしても甘すぎるが、今日のようにカクテル感覚で飲むには抵抗がない。

音楽が相手でも同じなのだが、わたしは対象を分析して語るのが苦手である。
「第3楽章のXX小節で、フルートが弦に乗ってテーマを吹く際に、音程が乱れたのが残念である」
などという音楽評論はわたしはできないし、評価もしない。

だからワインに対しても、
「サンザシとゴムとブルーベリーとカカオと下草と丁字とパイナップルと鉛筆の香りがする」
などという評価はとてもできないし、そう言われても「何のこっちゃ」としか言いようがない。

要するに分析的に表現する能力がないことを弁解しているだけなのだが、
今日のペティアンは、何と言っても色が美しい。


こんなにきれいなルビー色をした飲み物が、不味いはずがない、と思わせるだけの説得力がある。
食事といっしょに飲まなければ、気品がある甘さで、苦もなく1本空いてしまった。

ワインバーでこれを1人で開けている女性がいるとしたら、細くて長い指でグラスを持ちながら、
憂いを秘めた眼差しでルビー色の液体を眺め、凛としてグラスを傾ける美形の大人で
なければならない。

今日は座布団に座ったおっさんが、左手でウサギを撫でながら、膝の上にマックを置いて、
ボルドーグラスで飲んでいた。
こんなシチュエーションで飲まれるとは、ワインにとっては、場違いで迷惑だったことだろう。