昨晩は、同業の医師2人と連れだって、約半年ぶりに六覚燈にて宴を持った。
うち1人は、お馴染みの先輩で後輩のヴァイオリン弾き、もう1人は、最近町医者になった
後輩である。
その後輩は研究歴も留学歴もあり、大学に残って研究職の道を歩むことが
期待されていた人物である。
彼が町医者になって、わたしが約5年間務めていた、約500名の会員を有する医会の
会計幹事を昨日彼に引き継いだ。
できれば彼には日本の学会を率いて欲しかった、という思いは残るが、これからは町医者として
大いに活躍してもらいたい、と思っている。
ポル・ロジェ ヴィンテージ ブリュット ロゼ 1996
開栓日 2006年11月2日
開栓場所 六覚燈
インポーター JALUX
3人で六覚燈に行くと、店に入るやいなや、おかみさんが、
「先生、昨日ブログに書いていらしたので、お待ちしていました」とおっしゃる。
ソムリエの中山さんにも、同じように告げられて、大変恐縮する。
ワイン界でこんなに有名な店のおかみさんとソムリエに、ブログをチェックして
いただいているとは、まさにブロガー冥利に尽きる。
さて、午後に3時間ほどパソコンに向かった後の、最初の1杯がこのシャンパーニュである。
オレンジ色がかったピンク色で、花と果実の香りがふんだんに漂う。
泡の木目も細かいく、グラス1杯空けている間に、蜜のようなしっかりした甘さを
感じる。もちろん上品であって、しつこい甘さではない。
ネットで調べると、ウメムラさんでも扱っていて6000円くらい。
(ただしもうこの96は、ウメムラでは売り切れている)
セパージュはピノ・ノワール60%、シャルドネ40%となっている。
この1996というのはビッグ・ヴィンテージだそうだが、まだまだ飲み頃が続きそうである。
ドメーヌ・ルイ・レミー ラトリシエール・シャンベルタン 1983
開栓日 2006年11月2日
開栓場所 六覚燈
インポーター モトックス
例によって、ブルゴーニュを2本、というリクエストしかしておらず、ワインは中山さん任せである。
この店のワイン庫に今どんなワインが寝ているのか、わたしには分からないし、リストもない。
だからこの店に来るのが楽しいのである。
そこで1本目のブルゴーニュがこれ。予想どおりというか、心憎いと言うべきか。
みごとに熟成した古酒で、イチゴかフランボワーズを思わせるふうわりとした
官能的な香りがグラスから漂う。
この店ではデキャンタボトルで出てきて、開栓後の時間は定かでないが、おそらく30分くらい
だろうか。
還元香など一切なく、すんなりとワインに入っていける。
期待通り、きれいな酸味の中に、果実味はしっかりと残っている。
しかもそれはピントがぼけた酸味や甘みではなく、このワインがまだまだ下り坂ではないことが
はっきりと分かる。
このラトリシエールの畑の位置は、シャンベルタンに南側で隣接しているが、ワインの性格は
まったく似ていないと、マット・クレイマーも著書の中で述べている。
男性的なはずのジュブレ・シャンベルタン村のワインでありながら、名前からしてラトリシエール
という女性的な響きであり、ワインも華やかで繊細、そして軽やかである。
この貴族的な上品さは、古酒だからではなく、畑そのものの性格に違いない、
と今回の1本から納得できた。
あえてネガティヴな点を指摘すると、約30分少々で、そのバランスの取れた美しさには
翳りが訪れ、引き締まった果実味がほぐれて酸味に負けてしまったことだろうか。
これは古酒だから仕方がない、とも言えるが、自宅でデキャンタせずにゆっくりと空ければ、
数時間はピークが持続するのではないかと思われる。
こんなワインにこそブルゴーニュの本質がある、とわたしは今では確信しているが、
このことはこの店の中山さんから教わったことである。
自力でブルゴーニュの古酒を集めようとしても、わたしの経験上3本に1本はこけているから、
資金がいくらあっても足りないし、それ以前に堪忍袋の緒が切れそうだ。
もしこの店を知らなかったら、ブルゴーニュの迷路で未だに路頭に迷っていただろう。
余談だが、このワインを飲み出してしばらくして、隣席に上品な中年のカップルが座り、
2人して料理の前に葉巻を吸い始めた。
するとおかみさんが飛んできて、
「申し訳ございません。ご案内するお席を間違えました」と言って、丁重にお二人に奥の席に
移動してもらったあと、わたしたちにも、すみませんでした、と言いに来られた。
ラトリシエールの香りを楽しむわれわれに対する配慮だが、こんな繊細なワインを振る舞うには、
心遣いも繊細である必要がある、ということがよく分かった。
さてこのあと2本目に出てくるブルゴーニュは何だろう・・・続く。