静謐なグラン・クル | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る


ロベール・アルヌー クロ・ド・ヴージョ 1997
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開栓日    2006年10月17日
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購入価格   ?

3本に1本はハズレがある、というブルゴーニュのグラン・クルを開けるには勇気がいる。
わたしが定義するハズレには、大ハズレ以外にも小ハズレ、ちょいハズレも含むわけだが、
3分の1という数字は、決して大げさではない、と思っている。

まともなワインと、ちょいハズレとの境界が明瞭ではないが、
単にわたしの好みに合わないワインを、ハズレと称しているのではもちろんない。
実際にはちょいハズレより、飲めたものでない大ハズレの方が、出現確率が高いのである。

そして、どういうわけか3000円程度の普及品ブルゴーニュ(もちろんこの中にも
良いものはいっぱいある)にはハズレがほとんどなくて、1万円前後のグラン・クルになると、
ハズレの確率が大幅に増加するのである。

そんな中、今回の1本は心安らかに楽しめるワインであった。
ブルゴーニュに、感動、幸せより安堵を求めてどうするんだ、という気もするが、
神経を逆撫でされないワイン、というのは誠にありがたい。

開栓してから数時間は、還元香が微かに漂い続ける。
この香りは、決して不快ではなく、翌日になっても鼻の奥に残り続ける。
最近ようやく、ブショネと還元香の違いがはっきり分かるようになってきた。

グラスに注いでテーブルの上に置いておくと、1メートルくらい離れていても、
甘い果実香が漂ってくる。
あ~、これはブルゴーニュのまっとうなグラン・クルやな~、とそこで思う。

舌触りはつやつやして、控えめな甘さと酸味が解け合っている。
どっしりと重くはない。
3~4時間して、ほんのりと酸が細くなって浮かび上がってくるが、いかにも上品である。

エア抜きした翌日は、わずかにへばったかな、と思う程度で、液体の表面が、
初日のつるつる感から少し毛羽立った感じがする。
97というヴィンテージだが、丁度飲み頃であると思う。

このワインにはどことなく清潔感、安心感あり、飲んでいて静謐感をひしひしと感じる。
音で静寂を表現できた音楽家、というのは稀であると思うが、このワインは
ブルックナーのアダージョのように、気持ちを落ち着かせる。
これが、この造り手の特徴なのだろうか。