ビオワイン飲み比べ | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

東京からフランス語教師のワインの師匠が来阪し、ワインのインポーター業に携わる友人と
3人で、またまたワイン会となった。
8月にヴァンサン・ジラルダンのレザムルースを飲んだときと同じメンバーである。
今回は、ビオワインで行こうとわたしが勝手に決めて、以下のワインを開栓した。


Providence MATAKANA (ニュージーランド)1997
購入日    2000年ころ
開栓日    2006年10月13日
購入先    ピーロート
インポーター ピーロート
購入価格   10000円くらい

このワインは、5年以上前に1本目(ヴィンテージ忘れた)を飲んだことがある。
それがわたしにとって初めてのビオワイン体験であった。
何とも変わった香りと味わいのワインだなあ、と思ったのを覚えている。

さて、これを今開けたらどう感じるだろうか。
はい、ビオワインとして常識的、というか非常に良くできたワインである。
わたしのセラーの中に5年以上寝ていたものだが、亜硫酸がほとんど入っていない、
と思われるにもかかわらず、枯れるどころか生き生きとしている。
以前の1本は若飲みしたはずだが、今回の9年目の印象がそれと変わらないのは立派ではないか。

師匠は「高級なボルドーワインの香りがするよ」と言った。
恥ずかしながら、わたしはこのワインのブドウ品種が即座には分からなかったのだが、
さすが師匠の嗅覚は大したものだ。

今になって、裏ラベルの小さな字の記載を確認すると、
メルロー70%、カベルネ・フラン20%、マルベック10%となっている。
要するに、ポムロール、サン・テミリオンなどのボルドー右岸系と同じ。
なるほど、熟したサン・テミリオンとよく似ている。

ワイン業者の友人も指摘したように、果実味はしっかりとしており、酸味が勝っている。
開栓してからも、じわじわと旨味が増してきて、芳香がグラスを満たす。
ワイン会の3時間の間、安定して魅力を振る舞い続けている。

途中でイヤになるので、最近1人でボルドーを1本開けることができなくなっているが、
こんなタイプのボルドーだったら歓迎である。
ただし、価格はやっぱり相当高いとしか言いようがないのだが。


フィリップ・パカレ ポマール 2002
購入日    2005年1月
開栓日    2006年10月14日
購入先    ウメムラ
インポーター エイ・エム・ズィー
購入価格   6480円

そして、ブルゴーニュのビオワインである。
先日から苦情を言い続けているパカレなのだが、わたしが所有するパカレの2002は
これが最後の1本である。
これまで開けたパカレの2002は、ニュイ・サン・ジョルジュ、ジュブレ・シャンベルタンの
2種は完璧に土俵を割っていたが、このポマールだけは初日は美味しかったのだ。

3人でなら2時間くらいで空いてしまうので、翌日の惨めな姿を見なくてすむし、
半分捨てなくてもいい、というセコい計算もある。

さてその計算は当たって、これまで飲んだパカレの2002では、最もまともなワインであった。
わたしの中では、パカレは急流下りのイメージしかなかったのに
何と、開栓後1時間くらいかけて昇って行くではないか。

拡散していない果実味もしっかりと感じるし、高級ボルドーのようなMATAKANAと
十分対抗できて、ピノのビオワインとしての魅力に溢れていた。
これなら、この価格も決して高いとは思わない。

ピノ中毒のわたしは、MATAKANAよりこちらの方を好むが、
最も美味しかったのは開栓後1時間で、その後は下降に転じた。
やっぱり翌日まで持ち越せるワインではなく、今回の2本は一見同じように
繊細に見えても、底力には大きな差があるようだ。


シャトー・モンペラ 2002
購入日    2005年2月
開栓日    2006年10月14日
購入先    キタザワ
インポーター トウヤマ
購入価格   2380円

これは、上記2本のビオワインの特徴を際立たせたいと思って、ちょっと開けてみたものである。
プルミエ・コート・ド・ボルドーという、マイナーな地区の産だが、漫画神の雫のおかげで
最近ではプレミアまでついて、2001、2002はおそらく今では入手不能だろう。

半年前の2001は、けっこう香りも立って良い熟成をみせていたので、ちょっと期待したのだが、
この2002はもはや落ちてきているのではないかと思った。
このモンペラ、神の雫の中で2001の方が2002より上出来だと書かれていたが、
当たっているようだ。

師匠は、焦げた香りがする、と表現したが、それは2001の時には感じなかった。
決してネガティヴな意味ではないが、わたしにはその香りは魅力的でなく、
べっとりとした濃い紫の液体は、先の2本の繊細なビオワインと同じ種類の飲み物とは
到底思えない。

一言で言えば、前2者と比べて大きく欠けているのは「気品」である。
ワインを飲み慣れない人には、あきらかにこちらの方が濃厚で甘くて分かりやすく、
支持されると思われるが、わたしには、ワインの粒子の粒が大きすぎて興ざめだ。

まだ4年目だが、結局それほど長熟ではないな、と感じられた。
最近ではウメムラさんもこのワインを評価して販売しているが、
わたしはもはやこのワインを心から好んで愛飲することはないと思う。

今回のワイン会で、わたしが最も大きな収穫だと思ったのは、9年経過したビオワインでも、
生き生きしていることが確認できたことだ。
ビオワインだから早飲みに向く、というのは必ずしも正しくない。

ワインの元になるブドウが力がある、ということは、ワインがビオかどうかということより、
もっと重要なことなのだろう。