ロ・アラ・ブッシュにて | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

北摂の箕面にあるフレンチ・ラストラン、ロ・アラ・ブッシュに約1年ぶりに行った。
今はなきプラザホテル出身のシェフがオーナーの店で、7月に北浜に支店を出される予定だそうだ。
その関係もあってか、普段はおられるシェフと奥様は不在で、ソムリエの女性が留守を守っておられた。

ソムリエやパティシエを抱えている店だから、ワインもいいものが多くあると思うが、
そこはわたしのわがままで、ブルゴーニュを赤白1本ずつ持ち込ませてもらった。


シャブリ協同組合 シャブリ レ・クロ(グラン・クル) 2002
購入日    2005年8月
開栓日    2006年6月8日
購入先    ヴェリタス
インポーター ヴェリタス
購入価格   4980円

昨年夏に何となくシャブリが懐かしくなって購入したものである。
この協同組合というのがどんな造り手か知らないが、そこは買い付けたヴェリタスの辻さんを
信用して、と1本だけ引いてみた。

ブルゴーニュの白の中でも、正直言ってこれまでシャブリに感激した記憶はない。
シャブリといえば、村名クラスのミネラル豊かで若いもののイメージが強く、上級クラスでは
それほど際立った特徴が思い浮かばず、何となく他の白の産地より評価が低い印象がある。

昨晩は、そんなシャブリでも評価の高い特級畑、レ・クロを冷やして持ち込んだ。
最初はたいへん繊細で花のような爽やかな香りが飛ぶ。
酸味は強くなく、角が取れており、口当たりもまあるい。
グラン・クルだけあって、いかにも優しく上品なシャブリで、余韻もそこそこに長く続く。

・・・という状態は、わずか30~40分しか続かず、早々と下降を始めた。
「おいおい、これ、グラン・クルやろが」と思うが、最後は少し余韻を引っ張るものの、
花の香りも優しい酸味も空中分解(水中分解?)して、1時間ほどでご臨終となった。
まさに「へたれグラン・クル」の典型と言える。

1本開けただけで断定するのは気が引けるが、
「ブルゴーニュは畑ではなく造り手が最重要で、無名の造り手の掘り出し物など稀である」
という金科玉条を今さらながら再確認した結果となった。

このヴェリタスというショップ/インポーターは大変良心的であり、特に安価なワインで
掘り出し物を探してくるのを得意とされていると思うが、今回のようなものに出合うとガックリくる。
大きなお世話だが、このレベルの造り手のワインなら、店頭に置いておかない方が、
店の信用という点でははるかにましだろう。

このような少し高価格帯のもので、飲み手を納得させるワインを提示する、というのは
非常に難しいのである。
グラン・クルレベルのワインこそ、定評のない造り手のものには手を出さない方が無難である、
という思いを新たにした。


ミシェル・グロ クロ・ヴージョ 2001
購入日    2005年5月
開栓日    2006年6月8日
購入先    かわばた
インポーター モトックス
購入価格   7580円

さて、赤もグラン・クルである。実はこのワインをこの店で開けてみたかったわけで、先のシャブリは
元からゼンザブロニカ、じゃなくて前座のつもりだった。

同じワインは5本もあって、これが最初の1本である。多少?かなり?若いだろうとは思っていた。
ところが、最初からすばらしく豊かな香りが立ち上る。同席したワインに詳しい男性も、若い女性も、
そしてソムリエの女性も、一斉に感嘆の声を上げる。

村名クラスでは線の細いグロではあるが、果実味の凝縮感も十分にあって、甘みが酸味を
ふくよかに包み込む。
しかしやはり若開けで、タンニンの輪郭があまりにくっきりしており、複雑性や神秘性には欠けている。
時間とともに柔らかくはなるが、もしピークで開けたら、もっともっと何かがあるはずだ、
という大きな可能性を感じさせた。

さすがミシェル・グロのフラッグシップである。最後までブーケは衰えず、飲み手を裏切らない。
今年飲んだワインでブーケという点では、これが最高である。
残念ながら2002を買い損ねた。2003はもはや1万円の値段が付いていた。
それでも安いとは思うが、これ以上価格が上昇しないことを切に願う。

このフレンチ・レストラン、料理は洗練されていて、北摂では有数の店だと思う。
料理を評する表現力はないので、抜粋写真のみで勘弁していただきたいが、
たっぷり3時間以上、楽しい時間を過ごさせていただいた。
料理に流れがある、ということだけでも感じていただければ幸いである。

 
  
 

前日とこの日で、贅沢にもブルゴーニュのグラン・クルを3本も開けたわけだが、2本がハズレで、
最後のクロ・ヴージョだけが大当たりであったことになる。
これを喜んでいいのか悲しんでいいのかよく分からないが、クロ・ヴージョのブーケが
あまりに素晴らしかったので、十分に納得している自分がいるのに気付く。

ブルゴーニュ飲みは、心理的な面において、明らかにギャンブラーに似ている。