六覚燈にて | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

先週末の土曜日は食生活のむちゃくちゃな1日であった。
午後にある研究会があり、大阪のHIV/AIDS治療の第一人者の医師をお迎えし、
「ここまで広がった 大阪のAIDS」という演題で講演をしていただいた。

この先生の講演の司会をさせていただいたあと、そのあとの懇親会で居酒屋風の店で
生ビールで乾杯し、主賓の先生に「ど~もすみません」と言いながら席を立って、
別の会合に駆けつけ、紹興酒で中華料理のフルコースを食べながら会議を終えた。

で、和食と中華でもう何も食えないぞ、となった状態で六覚燈に行った。
大学の後輩で町医者の先輩である親友と、もう一人大病院の副院長大先生との
3人で開栓したのがこれらのワインである。

いくら何でもそこから串カツはもう入らないので、自家性パンとチーズ、
そして、ものすごく美味な熊本産の生トウモロコシとプチトマトが、ワインの相方であった。
六覚燈のおかみは、熊本の出身なのである。


シャトー・ド・ポマール 1990
飲んだ日   2006年5月21日
飲んだ場所 六覚燈

これは内角のストライクボールである。
角が取れてまあるくなった優しいボーヌのワインで、昨年に自宅で1998を飲んだが、
わたしの好みからは、こちらの方がより飲み頃と判断したい。

3人でけっこう重い仕事の話をしていたし、その雰囲気を察してか、
奥深くありながら、決して自己主張の強くないワインを出してくるところが、渋い選択である。

古酒と言うにはまだまだ老けていない感じであり、しっとりしたブーケ、強すぎないタンニン、
しっかりした果実味があり、派手すぎず地味すぎず、中庸を行くワインであった。


シャトー・ボールガール(Beauregard) ポムロール 1989

パーカーのボルドー第4版によると、メルロー70%、カベルネ・フラン30%となっている。
古めのボルドーを、とリクエストしたらこれが出てきた。

これまた、メルローの輪郭がくっきりした若めのワインなどとは相当異なる風情である。
初めて飲むワインだが、おそらく若いヴィンテージでもそれほど個性を強く主張するワインではない。
この1本は、良いヴィンテージであろう1989だが、きれいに老けている。
枯れている感じなどまったくしない。

この店に来るとほんとうに不思議なのだが、どうしてこんなにはまるところにはまった
美しい古酒が出てくるのだろうか。
わたし(たち)の好みを読み切って出してくる、という面もあるだろうが、
手持ちのワインの懐の深さには驚かされる。

自分でネットなどであさっても、こういうハズレのない古酒に遭遇するまでには、
想像を絶する努力と財力を必要とするし、外れたときのやり場のない怒りを考えれば、
忍耐力は無限に必要だと思ってしまうのである。