もうすぐ一周忌 | 硝子の中の蒼穹

硝子の中の蒼穹

硝子玉の中にあるのは青い空。心の中にいつも希望があるように。

息子がいなくなってもうすぐ一年。

その日が近づいてくるにつれてなんとも胸がざわめく。

 

去年の今頃はまだ生きていて、でももう死ぬ決心をしていたんだろうか。

どうにかして助ける方法はなかったのか。

 

あの日から何度も何度も数え切れないくらい考えた答えの出ない疑問や後悔がきつく心を苛む。

「この家の敷居は二度とまたぐな」と言い放った。

でも絶対またヘラヘラしながら帰って来ると高を括っていた。

 

母がそんなこと言わなかったらおまえは死なないで逃げて帰って来ただろうか。

 

10日程前、夜中の2時頃ふいに「おるん?(いるの?)」という声が聞こえて飛び起きた。

確かに息子の声だったし、普通に人が喋りかけてきた距離感・息遣いだった。

 

電気を付けてももちろん誰の姿もなく、あまりに「普通の人間の声」だったので、起きて他の部屋や戸締まりまで見に行ったが、もちろん誰もおらず、鍵もちゃんと閉まっていた。

 

死んでもうすぐ一年、やっと家に帰ってくることができたんだろうか。

「おるに決まってるやろ。かあさんはどこにも行かないよ」と声に出して言ってみた。

 

それから今日までもう声を聞くことも、もちろん姿を見ることもないけれど幽霊でもなんでもいいからまた声を聞かせてほしいし今度は姿も見せてほしい。

 

お願い。