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芳枝さん(左)の手を握る良博さん=横浜市旭区

【及川綾子】 テレビで「認知症」という言葉が出ると、不機嫌になって消してしまう。「ばかになっちゃったみたい」とぽつりとつぶやく。区役所の職員や介護サービスの計画を立てるケアマネジャーが自宅に来ると、逃げるように部屋に閉じこもる。

横浜市旭区の三橋良博さん(60)は、2005年に若年性認知症と診断された妻芳枝さん(61)自身も戸惑っていると感じていた。

良博さんは仕事と介護を両立させるため、介護保険のサービスを利用し、日中に介護が必要な人が通う「デイサービス」の見学に連れて行ったが、芳枝さんに「帰ろう。帰る!」と抵抗された。

同居する両親にも頼らず、学生だった長男にも「お前はいい。私が全部やる」と言った。「自分で頑張る、やりとげるという変な責任感があった。仕事の感覚で介護をしていた」

良博さんは09年、近所の人たちに妻の認知症を打ち明けた。

「みなさんに話があります」

運動会の打ち上げで、同年代の夫婦など十数人で酒を酌み交わしていた時に切り出した。「かみさんが、4年前にアルツハイマー病と診断された。これから、徘徊(はいかい)や大声を出すこともあるけど、見守って下さい」

「あのかわいい芳枝さんが」とみな驚いていたが、口々に「よく言ってくれた」「大変だな」と、言葉をかけてくれた。

やがて芳枝さんの徘徊が始まった。近所の女性から「商店街で芳枝さんを見かけたと、夫から連絡があったけど大丈夫?」と電話をもらった。エルメスバッグ 近くの公園で座っていた芳枝さんをみつけ、手をつないで自宅に連れてきてくれた人もいた。

「内緒にしても、みんな薄々、知ってしまう。当事者が言わないと、何をしたらいいかわからない。話したことで、助けられることの方が多い」と良博さんは言う。

◆キーワード <ケアマネジャー> 介護支援専門員。介護が必要な人の心身の状況や希望に応じて、自宅や施設で適切なサービスを利用できるように計画を作る。介護施設や訪問サービスの事業者との連絡・調整も担う。介護保険法で定められた専門的な資格の一つ。