『ディア♥ヴォーカリスト』は誰が“主人公”に見えるのか:ディアヴォ5周年に愛を込めて | ツゲにツツジを接いだそれ

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ごきげんよう、柘榴です。

先日、Twitterでこんなアンケートをとってみました。



Q.ディアヴォを知らない人に質問です。この画像の中で、誰が“主人公格”に見えますか?



【©Rejet/ディア❤ヴォーカリストサバイバル5周年記念プロジェクト公式PVより】






以前より当ブログにお越しの読者各位には言わずもがな、『ディア❤ヴォーカリスト』の主人公格は左から5番目の男、レオードです。毎期トップバッターでリリースを飾り、Rejet作品合同イベントではディアヴォ代表として度々サイトや宣伝画像で顔役を担う文句なしのメインヒーローぶりを発揮しているでしょう。
ところが彼は、いわゆる主人公格らしい外見記号をほとんど持っていません。
そこで私は、ヴォーカリストの情報を上記画像以外伏せた状態で簡易的なアンケートをとりました。そして、結果は以下の通りです。

1位:ユゥ(20票・40%)
2位:エーダッシュ(17票・32%)
3位:ジュダ(6票・12%)
4位:レオード(4票・8%)
5位:モモチ、ヨシュア(各2票・4%)

元ツイート:https://twitter.com/zkzkr_p5/status/1302154046715785216

結果はユゥやエーダッシュに票が集中し、レオードは4位という結果に終わりました。ユゥとエーダッシュはアンケート開始直後から接戦を繰り広げ、彼らに次いで開始当初票を伸ばしたジュダは後半失速し、最後まで上位二人のビジュアルが“主人公格”として見られているような票変動となっています。

とはいえ、私は自分の中でも「ユゥとエーダッシュが競るだろう」だろうと概ねの予想はしていました。逆にジュダへ早々に票が集まったときは個人的に意外だったので、理由を推察できる方はブログコメントかTwitterかお題箱でご意見お待ちしております。
というのも、概ね人が主人公格だと思うであろう要素が、ユゥとエーダッシュに集中しており、他の四人にはあまり見られないからです。
・赤色の要素やナチュラルな髪型(エーダッシュは赤髪、ユゥは日本人としてオーソドックスな黒髪、二人とも前髪がいわゆるM字分けに見える)
・少年顔
・画面センターや左端など“1番目”と認識できる場所にいる

これらの点は、昨今の芸能題材コンテンツの主人公格のキャラクターにて概ね当てはまると思われます。私もこの辺りに鑑みて、先のように二人が上位にくると予想できました。

つまるところ、本来のシリーズの主人公格であるレオードには、今回のPVでは上記要素が一切ないのです。
そしてこれこそが、『ディア❤ヴォーカリスト』に登場する彼らが《現実》だと認識できる機能を担っていると私は考えています。

本記事では、そんな「ディアヴォを《現実》だと思わせる演出にはどのようなものがあるか」「ディアヴォがいかにユーザー巻き込み型企画としてすごいのか」を、私はディアヴォのここがメチャ好きという感情表明文で伝えていけたらと思います。



【私のディアヴォが好きなところ6選】



①現実を侵食してくるところ

そもそも『ディア❤ヴォーカリスト』は、Rejetの代表タイトル『MARGINAL#4』を越えるタイトル(1)、または昨今のアイドルコンテンツの流行りとは異なるアプローチを目的(2)に生まれた、「ユーザー巻き込み型」を謳うコンテンツ(3)です。

Rejet作品は通例として『Rejet Fes.』に新規タイトルでも参加し、『ディア❤ヴォーカリスト』は『Rejet Fes.2016』にて初参戦、作品ファン以外の多くの観客の目に留まることとなりました。
かくいう私も『MARGINAL#4』でRejetのことを知り、『Rejet Fes.2016』には牧島シャイとテ●ミュ役者以外なんもわからん状態で行った観客の一人です。
元々ゼロ年代ジャンプ作品畑と舞台ジャンル畑からきた人間ゆえ、牧島シャイの声優である豊永利行氏の演技には馴染みがあるためまったく知らない作品でも楽しめるだろうと踏んでいたのですが、出てきたのがあまりに地獄みたいな性格の男だったため「彼には絶対ハマらないな……」と思いながら氏の演技のひとつとして朗読劇パートを眺めていました。



しかし数十分後のライブパート、その男が歌う「泡唄」秒で落とされた。







フェスのライブパートは不親切で、曲名も歌唱者の名前もキャラデザも教えてくれない。当時は、絶対ハマらないと思った地獄男が歌っていることを知らないどころか、名前もキャラデザも登場タイトルも曲名も知らない男の歌だった。なのに一瞬で落とされていた。
どころか、何も知らない男なのに、現実に確かに“いる”と確信し、牧島シャイ目当てにきた私は完全に目の前にいたヴォーカリストの歌へ必死にライトを振っていました。

当時は自分のRejet作品への無知もさることながら、『ディア❤ヴォーカリスト』も発表からも間もないコンテンツだったため、いわばモモチも基底現実ではほぼ無名の状態です。その状態で牧島シャイ(=『MARGINAL#4』)を目当てにきた観客を引き込んだモモチは、ある種目標や設定としてだけつけられたストーリーラインを現実に変え、作品の枠をものともしなかったのです。あまりにもロックが過ぎる。

モモチはその場で立ち止まりません。作品の枠を超越したモモチは、数年後ついに『ディア❤ヴォーカリスト』の名が登場しないフェスに現れました。
『Rejet Fes.』では毎年オープニング映像としてフェスでの登場作品紹介が入るのですが、それは朗読劇パートが存在する作品に限ります。『Rejet Fes.2019』でモモチのライブがあったのは千秋楽公演、それは『ディア❤ヴォーカリスト』の朗読劇パートがなく、すなわち作品タイトルが出ない回でした。

その回のライブ、モモチは大トリとして登板しました。当時の新曲「SCARLET GAME」を艶やかに歌うモモチを間近に、前列の観客は常にどこかのブロックが阿鼻叫喚を呈していました。私もその一人だった。そして歌が終わればモモチは軽く微笑むだけで勝手に帰る。数秒後には豊永氏の面白MCコントが始まっていて、そこにモモチのモの字もない。あのとき私たちは、作品紹介はおろか朗読劇パートもなければ名前すら名乗っていないヴォーカリストにフェス千秋楽の感情を滅茶苦茶にさせられていました。
その後の新作告知にもディアヴォの名は挙がらず、その回は本当にディアヴォの名が出る要素が何もありません。モモチは本当に、大トリで突然現れては観客へ数瞬の夢を見せて帰っていく泡沫のようにさえ思えました。

さて、ここまでモモチによる基底現実での活躍をざっと書いたところで、彼のプロフィールを確認してみましょう。

 

無名にしてNEO GROOVE FESTIVALのトリを務めたことで一気にブレイク。
2ndシングルにて早くもヒットチャート入りを果たした。
ひとつのジャンルに定住を許さない『Veronica』は、
多彩な音でシーンの最前線を駆け抜ける。

(『ディア❤ヴォーカリスト』公式サイトより)


これまででおわかりの通り、モモチは「無名時代フェスのトリを飾りブレイクした」という作品上の初期設定を、現実で丸ごとトレースしてしまいました。
モモチが現実世界を侵食した瞬間には、何の小細工もない。ただただモモチが設定上の経歴を容易く実現させたに過ぎない。そのように、「ユーザー巻き込み型」を謳うにあたって、基底現実にもっとも影響するキャスティングや作詞作曲にも確かに「いる」と思わせる説得力がディアヴォには備わっているのです。
モモチは確かにそこにいた。

 

 

もしも産まれ変われるなら
同じ路を歩みたいと
誰かの夜を砥ぐ様な間に
数え切れぬ粘り
慰めが 其処に在れども
私は眠る

(『カレはヴォーカリスト❤CD ディア❤ヴォーカリスト エントリーNo.2 モモチ』収録、モモチ『泡唄』より)


ディアヴォのこういうところが好きです。


②リアリティラインの管理がいつも極振りなところ

ですがまあ、いざ公式から呈示されているディアヴォのシリーズ概要や説明を見返すと、「社長がパンダ」「ドラマCDは所属アーティストの私生活の盗聴」など無茶苦茶な設定が目立ちます。
しかしながら、それを受けてなお私は、やはりヴォーカリストたちが《現実》にいると認識させるような土台は依然揺るがないと確信が持てます。

なぜなら、彼らの本編ドラマつまりアーティスト活動のパートでは、フィクションらしく華やかにインフレした仕事はこないし、楽曲作成にあたっての障害も現実的な問題ばかりが浮上し、かつ解決の過程でも過度にドラマチックな演出を始め非現実的な演出が手助けしてくれるわけではないからです。
彼らは公式Twitterで曲作りの進捗をオーディエンスへ報告しては、それすら言えない窮地では生々しいほどに怒り哀しみ錯乱し、その上で新曲ができたらささやかに喜び、完成した新盤が基底現実のオリコンに入ればリアルタイムで喜ぶ。この要所で一気に彼らへ現実での人生を味わわせる両極端なリアリティラインは、おそらく意図されてバランスを調整されていると自分は考えています。

リアリティラインの調整が0か100でしかできない。それが『ディア❤ヴォーカリスト』です。

たとえば、ジュダは前者のときは暴れまくっては無人島だろうがアマゾン奥地だろうが作曲を始める正統派狂人として描かれますが、後者の描写ではトラブルや家庭問題に対し暴れるだけは解決しないシビアな判定の下楽曲を作ることになります。そこにご都合主義などありはしない。常識外れの言動が幅を利かせる登場人物にさえ、わかりやすい派手な逆転劇は用意されません。

 

誰かの理屈ならば 百年先で考えろ
研ぎ澄まされていくよ ふたりの感覚、これからさ
Believe Me
Believe Me

(『ディア❤ヴォーカリスト Roit エントリーNo.2 ジュダ』収録、ジュダ『New World』より)


だからこそ、現実的問題に現実的にぶつかった上で自己の生き様や恋人への愛を謳う彼の歌は、途轍もない求心力で響いてくる。上記引用の「New World」も然りです。彼がぶつかり乗り越えたことが《現実》として、彼の綴る歌詞の深みをグッと増させてくるのです。
ディアヴォのそういうところが好きです。


③ヴォーカリストが“役割記号”を放棄しているところ

たぶん個人的にここがトップクラスに好き。
冒頭で挙げたアンケートのように、ヴォーカリストには作劇上の役割記号が存在しません。これが、彼らを“キャラクター”ではなく“現実の人間”だと思える仕組みに一役買っていると考えられます。

次の引用は、Rejetの人気タイトル『MARGINAL#4』『DIABOLIK LOVERS』の公式サイトに記載されているキャラクター紹介文と、『ディア❤ヴォーカリスト』のキャラクター紹介文です。

 

【1】
荒っぽい×俺様×負けん気が強い
荒れ狂うシューティングスター

(「MARGINAL#4」ポータルサイト アーティストページより)

【2】
問題児三つ子!
逆巻家のトラブルメーカー
逆巻家三つ子のひとりであり、
六兄弟の中で自分が一番偉くて強いと思っている。
常に上から目線の俺様ドS。
悪戯好きないじめっ子。
スポーツは得意だが勉強は嫌いで、
授業中はほとんど寝ているためいつも赤点スレスレ。

(「DIABOLIK LOVERS」ポータルサイト キャラクターページより)

【3】
クライマックスレコード所属、バンド「LUMIERE」のVo.
14歳でPlatinum Vocal Auditionに応募。稀有な才能を見出され、8600人の中からグランプリを受賞する。その後『LUMIERE』を結成し、都内のライブハウスを中心に活動。
若者からの絶大な支持を集め、近年ではアリーナツアーの他、CR所属バンドでは年間の最多ライブ敢行記録を保持。

(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve』公式サイトより)


【1】【2】は各人物に対して「俺様」「ドS」といった属性やキャッチーな肩書で人物紹介をしているのに対し、『ディア❤ヴォーカリスト』の【3】はそういった肩書がほとんど見受けられません。そもそも個人のパーソナリティに触れることが少なく、大半はアーティストとしての経歴やバンドの紹介を主としています。どころか、【3】はヴォーカリストの最新プロフィールからの引用ですが、初期のプロフィールにはまだ個人への言及があったもの、それが削られて今の記述になりました。
すなわち、彼らの紹介で優先的に残るものはバンドマンとしての為人であり、現実の芸能事務所のアーティスト紹介に非常に近いつくりとなっているのです。

冒頭で紹介した主人公顔アンケートの結果も然りです。
また、冒頭のアンケートでは、自分は当初記載しようとして意図的に伏せた注釈があります。つまるところ“並び順が関係ないこと”です。
元々Twitterでざっくりとったアンケートのため恣意的な部分も多分に含まれるのですが、並び順がキャラナンバリングとは無関係なことは、無関係になることもまた《現実》らしい演出だと考えあえて記載しませんでした。

大抵の集合ビジュアルではレオードがセンターにくることが多いなか、今回それが絶対ではなかったというのは『ディア❤ヴォーカリスト』の、フィクション的な役割記号を取り払い基底現実のアーティストと同等の扱いを優先するスタンスが関わっていると、私は考えます。
同作を始めとするRejet作品のPVを手掛けた株式会社キュードット(4)制作の以下のPVと見比べても、キャラナンバリングやリリース順を無視する並び順の自由さについては、同作の特色と言っていいでしょう。





さて、冒頭で書いた、ユゥがもっとも“主人公顔”と認識されたということに話を戻します。
実際、ユゥは外見のみならず彼が持つストーリーもきわめて王道で、毎回自身の出自や過去、そしてシエルへの感情といった物語の主軸がまず明確に提示される辺りにも取っつきやすさがあります。「自分の力で自分らしい音楽を目指す」といったテーマを武器に打ち出される楽曲は毎回が集大成だと思わせるほど、自己選択を貴ぶ歌としてのクオリティが非常に高い名曲揃い。

 

とまどいを消して 裸の顔、見せてくれ
"そこから" はじまるから
荒れている傷と 本音の先、知りたくて
ありきたりな台詞
素晴らしい日々へと

(『ディア❤ヴォーカリスト Xtreme エントリーNo.4 ユゥ』収録、ユゥ『NAKED』より)


『ディア❤ヴォーカリスト』を薦める際、よくレオードやヨシュアが初心者向けとして挙げられる印象がありますが、私は上記「NAKED」のような楽曲、そして本編シナリオ共に王道と安定したクオリティを維持している点から、ユゥから始めることをよく薦めています。

ユゥのイメージカラーはその容姿の印象に違わずこれまた王道の赤色です。そんな王道を進む男の公式ナンバリングは初期キャラクターでは一番最後の6番だったり、くわえて赤髪少年のエーダッシュがイメージカラー緑担当だったり、ナンバリング1番の主人公格はピンク担当なのが『ディア❤ヴォーカリスト』なのです。そういうところも好きです。


④トップアーティストが不在なところ

『ディア❤ヴォーカリスト』のスタンスを象徴するものとして、もうひとつ決定的な世界観があります。本作には、トップアーティストの存在がありません。

基本的に芸能活動を題材にしたコンテンツには往々にして、実力の指標や憧れの対象としてメインキャラから見たトップアーティストの存在が初期から描かれます。『MARGINAL#4』ではスターメイト、ディアヴォと同じくRejetのシチュエーションCD発の『√HAPPY+SUGAR=DARLIN』シリーズに至っても、さとぅ始め続編にて先輩ユニットが登場していることから、Rejet作品においてもその傾向は無視されていません。

ところが、『ディア❤ヴォーカリスト』にはそんな人間存在しない。マジでいない。社長が実は音楽業界の元すごい人とか音楽畑出身のユゥ両親が詳細に描かれるとかそんなことも一切ない。サバイバル参加者トップの実力であろうシエルですら「あの人って前からそこそこ売れてたよな?」くらいなのです(4)

では、王が不在の『ディア❤ヴォーカリスト』は空席の玉座を争う物語なのか。そうですらない。
本作品には、いわゆる「目指せトップアーティスト!」を標榜とするバンドはひとつもありません。もちろん中には向上心が強いバンドマンもいるので一概に否定はできませんが、少なくともそれが第一目標のストーリーに立とうとするヴォーカリストはいません。
彼らはトップを目指すまでもなく自分の音楽が最高だと思っているし、自分の音楽に惹かれた人間がついてくればいいと思っているし、届けたい人に自分の音楽が届いていれば究極的にはそれでいいとさえ考えているような口振りがしょっちゅう出ます。換言すれば、トップである以前に自分が生きられる音楽が作ることが彼ら共通の第一義だと思われます。 皆が皆、生きることに必死でいるのです。

 

くれくれくれ→Everybody タラレバならいらんもん
端から仕留めるつもりです
じぇらじぇらじぇら→EveryNight ショゲてる暇はないから
可笑しくなれる?
可笑しくなろう!

(『ディア❤ヴォーカリスト THE BEST ROCK OUT!!』収録、エーダッシュ「KKK→E」より)


エーダッシュはとりわけ、作中ヴォーカリストで「生」とは何たるかの意思表示がはっきりしていて、かつクズと称される彼らの中で唯一「おかしい」を自称しています。そんな彼が「おかしい」まま生きることを全肯定した歌詞を綴るのはとても示唆的かつ象徴的ではないでしょうか。

エーダッシュは肯定の人だ。最愛の恋人でもないいち友人に対する「オマエって変な奴」に続く言葉が「ま、面白ければいいけどね」とノータイムで言って全肯定してしまえる人だ。彼の歌は「十字を背負ったぼくらの最前線は、エーたん」「"なにものか"は証明放棄して きみはきみで、いいから」といったサイコーすぎる歌詞しかない「#HAPPY」も人気ですが、私は上記引用にある「KKK→E」を推していきたいです。

このエーダッシュのスタンスに代表されるように、彼らはスターダムに駆け上がるよりも、音楽を通して自身の生が何たるかを証明する傾向が強いです。この芸能活動との距離感も、彼らの存在がより「生きている」と現実味を帯びる効果を発揮しているのではないでしょうか。好きです。


⑤ヨシュアという男の存在

もはや何も言うまい。過去書いたブログを読んでください。
『ディア♥ヴォーカリスト』のヨシュアに救われること
『ディア♥ヴォーカリストXtreme ヨシュア』に救われること
『ディア♥ヴォーカリストEvolve』のヨシュアの新曲が私信だった
『ディア♥ヴォーカリストEvolve ヨシュア』に救われること
(最近気付いたのですが、正式なブログタイトルの時点でネタバレもいいとこなので今回はタイトル省略してリンク貼りました)

ということだけだとあまりに簡素なので、今までブログで書いてこなかったことでも。



上記の通り先日、ついにヨシュアの公式試聴動画が解禁されたのですが、これが明らかに“よくある精神不安定キャラのキャラソンの変遷”っぽく曲順を入れ替えて初見を騙してきてサイコーになりました。

というのもヨシュア、不安定な部分があると言っても本人はそういった売り出し方をしていません。すなわち、『ディア❤ヴォーカリスト』の楽曲が“キャラソン”ではなく“ヴォーカリストが描いた歌”という立ち位置である限り、ヨシュアの楽曲の変遷が不安定なキャラクターの楽曲集と聞いて想起されるような“初期は不安があり、成長するにつれ明るくなる”といったパターンにあたることはありません。むしろ、初期が明るかったり全能的で、成長つまり自身の精神性に向き合い寛解へ舵を取れたときに初めて不安定なイメージを楽曲として消化できるのがヨシュアでした。
下記の「WRONG」のような歌詞に到達するのは、翻って彼の中で自身の精神性に整理がついた頃になるのです。

 

同じ空気 吸う価値がない
“生きててごめんなさい”と叫ぶ
街にすがり、いつもいつでも
承認欲求

(『ディア❤ヴォーカリスト Evolve エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『WRONG』より)


ヨシュア、マジで好きです。


⑥上記5点のせいで布教しづらいところ

ここまで書いておいて何なのですが、ディアヴォ、ここまで書いてきた大好きポイントのせいで個人的に滅茶苦茶布教しづらいんですよ。

布教と呼ばれる行為は多かれ少なかれ、コンテンツとしてわかりやすくキャラクターやストーリーを記号化する行為や、軽いネタバレを含んできます。そのため、彼らのパーソナリティな部分を説明するには本編ドラマで描かれる彼らの生き様にも軽く触れようとも考えますが、その生き様が物凄く生々しいったらない。

シリーズ概要の通り、彼らはそれぞれ何らかの、それもRejetらしく容赦のない困難を抱えて生きています。従来の数多のコンテンツでは、そういった問題、悩み、環境、習癖はユーザーの恐怖を煽る演出、あるいは異常者を異常者たらしめるアクセサリーとして使われてきました。
そんな中で『ディア❤ヴォーカリスト』はどこまでもリアリティを追求した、異常者ではなく異状を訴える現実にもいる人間として作劇や演出をするのですから、記号化する隙が一切ない。
中には抱える問題、その描写の精巧さ、それを受けた当事者の精神性が生々しすぎて、現実で同じ状況下に置かれている人間へ一生接する覚悟で聴かなきゃ人によっては厳しいんじゃないかというレベルのヴォーカリストさえいます。これについてはどうやっても簡潔にすることができないし、そもそも『ディア❤ヴォーカリスト』の本編ドラマを聴いて初めてヴォーカリストの置かれている精神性がわかることを楽しむ作風上、0から語らざるを得ない盛大なネタバレ行為にもなっていきます。
だから楽曲以外では布教しづらいと感じています。こういった意味でも、上述通り私は布教の際、諸問題の描写の程度やそのネック自体が予め公式から呈示されているためネタバレせずに済むユゥから薦めています。

彼らが示す生々しさは、どこまでも布教しやすい記号化を阻害し、世界観へのフィードバックにつながります。上述で触れたジュダやユゥの周囲とのトラブルが顕著ですが、彼らは対人関係から始まる諸問題において、ヒロインを除いて「トラブルの相手へ何らかのカウンターを示して相手を“見返す”」という展開には絶対になりません。
トラブルに関わる人間がマクガフィンから出てくることはぼぼないのです。こちらにヘイトを溜める発端となった相手へ一発かまして見返すことができればわかりやすく障害を乗り越えた演出にもなりますし、伴ってかなりのカタルシスを生むでしょう。ですが、ヴォーカリストが生きる世界があまりに《現実》なばかりに、そんなフィクションじみた展開には誰もならないのです。

 

敵も味方も巻き込んで
ありとあらゆる手を使い乗り越えた
古傷がしみるほどに──……
心地よい、弱くて強い夢が
開く扉から新しい未来が呼んでいるよ
信じて 進んでいく ただ、ひとつへ

(『ディア❤ヴォーカリスト THE BEST ROCK OUT!! #2』収録、レオード「Beyond the Limit」より)


上記引用はレオードの楽曲「Beyond the Limit」の歌詞です。
彼らは音楽活動する際、リアリティラインは限りなく現実に近づけられてしまいます。自身の音楽を侮辱した人間に掴みかかればふつうに謹慎になるし、習癖を持つ男はもうやらないと言ったそばから衝動を繰り返すし、過去を清算するまでに五年はかかるし、破綻した人格が更生されていくことさえない男すら存在する。レオードも実直に、かつユゥに次ぐ比較的王道を歩んでいますが、それはリリースのトップバッターという自身の役割に自覚的なだけで、メタ的な“主人公格”として何らかの補正がかかって成長できるというわけではありません。

彼らはただ、フィクション的な記号化できるわかりやすさも持てなければカタルシスもなく歩む《現実》で、自分の音楽と生き様を最高の形で届けてくれるのです。


『ディア❤ヴォーカリスト』のそういうところが本当に好きです。
そして、ここまで紹介してきた彼らが生み出す歌も本当に大好きです。



なので、ここでお願いがあります。





『ディア❤ヴォーカリスト Raving Beats!!!』楽曲総選挙は!






【©Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「Beyond the Limit」!




【©Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「WRONG」!!




【©2015 Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「New World」!!!




【©Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「NAKED」!!!!




【©2015 Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「泡唄」!!!!!!




【©2015 Rejet/『ディア❤ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より】

「KKK→E」!!!!!!




それぞれに清き一票をお願いします!!!!!!!





『ディア❤ヴォーカリスト Raving Beats!!!』楽曲総選挙投票フォーム




投票受付期間が今月25日までなので、まだ決めきれてなかったり投票されていない人は何卒……何卒……。


あと先日自担二人がYoutuberデビューしたのでそっちもよろしくお願いします↓




それでは。


(1)(3)「エモいDear♥Vocalistのお話|岩崎大介(岩D)|note」 (https://note.com/daisukeiwasaki/n/n88d9234d7317)
(2)「『Lis Oeuf♪(リスウフ♪)』vol.3」(エムオン・エンタテインメント)P111一段目L14~17
(4)今回の5周年PVを手掛けているかは現時点不明。
(5)「【CR69Fes.2018】 Dead or Aliveパンダ社長特別監修オフィシャルパンフレット」(Rejet株式会社/クライマックスレコード株式会社/バンダイナムコ ライブクリエイティブ)P41インタビュー二段目L8