エムキチビート『Fight Alone 2nd』感想っ♪(その3・緑チーム)
さてさて。怒涛の緑チームです。既知の役者さんの新しい一面、新しい魅力を知ると共に、チームとしてのまとめ方も難しいなと思わされた回でした。
■GREEN TEAM 緑■
福原冠 『三鷹の女』 (国道五十八号戦線) 脚本:友寄総市浪 (国道五十八号戦線)
冠くんのお芝居を最初に観たのは、一昨年のギリギリエリンギ公演でした。その時から器用で演技力のある方だなとは思っていたのですが、今回改めて演技を観て、その確かな技術は明晰な頭脳に裏打ちされたものなのだなと気付かされました。脚本は別の方の手によるものですが、そのシニカルさを嫌味なく、けれどそこはかとなくブラックに語る姿に妙に感心。また注目すべき役者さんに出会ってしまったのかもしれないなと感じました。
お芝居は、非常に冷めた空気の中で始まります。床に置かれた雑誌や納豆はそこが彼の部屋であることを暗に示しているのですが、最初の「嘘ですから」という前置きから始まって、その巧みな演技と話術の中で、何が嘘で何が現実なのか、そこが本当に彼の部屋と言う設定なのかと観客を徐々に混乱させていきます。
果てはいつの間にか嘘だという事を忘れさせられて「糞みたいに美人な」三鷹の女が許しを請う姿(何故か涎を垂らして果てるイメージ)を目の前に観てしまうはめに。しかし飄々とした声でまた「嘘ですから」と言われて我に返ると、冠くんの目が笑っていない笑顔に出会って混乱。そして、心中したのは太宰じゃなかった?本当は手塚治虫だったっけ?と迷宮に入ったような錯覚に陥ってしまう・・・。書いてて益々混乱してしまいますが(笑)そんなとりとめのない不可思議な時間を与えてくれた冠くんの演技。深入りしたらとんでもないことになりそうだなと思いつつ。
ちなみに牛乳が超苦手な私は、目の前で冠くんが牛乳に手を掛けようとした時に異様に戦慄したことを記しておきます。
太田守信 『硝子の瞳』 (エムキチビート)
珍しく太田さんがシリアスな役を演じると聞いて、どんな作品を出してくるのかと非常に楽しみにしていたのですが、結果、まさかの号泣。多分、時間にして半分以上泣いていたと思います。こんなに泣いたのは前回FAでの元吉さんの『走馬燈』以来で、いつも爆笑させられているはずの"小劇場の神様"(私は太田さんをこう呼んでいます)の驚くほど耽美な世界に呆然としてしまいました。
青チームの感想で触れたように、この作品は秋澤さんの少女人形と対を成しています。秋澤さんが美しい人形を、その人形を作った人形職人を太田さんが演じているのですが、先に秋澤さんの演技を観ているため、また、太田さんの高い演技力のため、お芝居の間中ずっと「愛という感情だけを胸に抱く美しい人形・沙羅」が驚くほどの存在感でその場に影を添えていました。
沙羅の髪を梳かしながら沙羅との排他的な世界に埋没していく人形職人。その人形職人に抱きしめられた瞬間に命を宿し、涙を流す沙羅。その瞬間に二人の世界が深い闇の中に拡がって、儚く美しい世界観に廃墟のようなルデコの空間が一気に彩られ、気がつくとその空気は怖ろしいほどの透明感を伴っていました。
物語の中でも言われていたようにロリコンだとか気味が悪いだとか、その価値観を理解できない人には変態扱いされるであろう狂気じみた人形職人を、太田さんが驚くほどのハマり役で演じていました。長身でシンプルな黒い衣装を来た今回の太田さんは、多分今まで彼が演じてきた役の中で一番美しく見えたのではないでしょうか。
ゴシックでフェティッシュなその空気感は、一見誰にでも共感できるものではないかも知れませんが、「自分だけの美しい世界を守る思い」「自分で作り上げた世界から大切なものが変化していく怖さ」は、フェティシズムの対象に関わらず、誰もが抱き得る感情なのだろうなと思います。ですからこの作品は多分、観た人の殆どを感動させ、舞台上の太田さんの思いとシンクロして一つの纏まりのある空間を作り上げていた、そんな気がするのです。・・・素敵でした。この作品が、今回のFA2の演目での私の一番のお気に入りです。
漣圭佑 『catastrophe』 (エムキチビート)
決して面白くなかったわけではないのです。しかし、順番が悪すぎです(T-T)太田さんの作品で号泣し、深い闇の世界から浮上するまでにかなりの時間が掛かりました。ですから渋さん(漣さん)の作品は、観客参加型(観客はテロリストに監禁されている人達という設定)のコメディにも関わらず、ずっとハンカチを目に当てている状態で・・・。けれど周囲はよく笑っていたし、私も泣いてなかったらきっと楽しめただろうなと思います。
ちなみに渋さんの前回の作品もコメディでしたので、次回は違ったタイプのお芝居を観てみたいなと思います。渋さんの良さはストレートでアニメ的明快さのある表現力だと思うのですが、同じエムキチビート劇団員のNIYさんや太田さんのように、前回見せてくれたお芝居とは間逆の作品を持ってきてくれたら、また違った渋さんの魅力を見出せるのだろうと思うのです。
緑茶麻悠 『リミットのための習作~まちえーるのままに~』 (ochazukewemens)
今回、客演の皆さまの作品はその独特の空気感を楽しむお芝居が多いのですが、反面、初見の役者さんはその世界観を理解するまでポカーンとしてしまうという勿体無さがあり。緑茶さんのお芝居も例に漏れず、そのほんわかとした夢(仕事中の居眠り)の世界に流れるままに心を委ねられるまでに結構時間が掛かってしまいました。というのも、仕事中のお話なので、OLである私は「仕事しろよ」などと心の中で突っ込みを入れてしまっていたので・・・ごめんなさい(汗)
しかしその世界の楽しみ方を知ったら、その空間を彩る淡い光が屈折を伴って様々な色が見えてくる・・・それはモネの絵画のようであり、ドビュッシーの音楽のようであり。つまり印象派のような柔らかな印象で、観る人を優しい安らぎの世界へと誘ってくれる素敵なパフォーマンスだと思えました。(ちなみにオープニング曲はバッハのインベンション。バロックの習作から始まり、印象派へと空気が変わっていく様も素敵でした。)
なお、最後のひつじの意味がちょっと分かりづらかったのですが、あれは彼女が仕事をクビになったことを表していたそうで・・・やっぱあれじゃ、クビ必至ですよね(笑)
(続く)
