エムキチビート『Fight Alone 2nd』感想っ♪(その2・赤チーム) | THEATRE GRENAT ~てあとる・ぐれな~

エムキチビート『Fight Alone 2nd』感想っ♪(その2・赤チーム)

続きです。


赤チームは全ての方の演目で、家族との関わりがテーマとして描かれていました。目を覆うようなものもあれば、ふっと笑わせられるものもあり。見終わった後に「私は家族との関わりを疎かにしていないだろうか」と自身を省みることが出来るような、そんな珠玉のお芝居ばかりだったと感じました。

では、個々の感想を。



■RED TEAM 赤■


斎藤加奈子 『かよちゃん』 (ろりえ)


女の子には珍しい、はっちゃけぶり。なんというか、勇気があります(笑)。貧乏な家で暮らすかよちゃんの、日々の叫び。子供ならではの見栄や羞恥心を、元気いっぱいに明るく楽しく、そしてどこかシュールなブラックさを以って斎藤さんが演じてくれました。
私、貧乏ネタにすごく弱いのですよ・・・。どのくらい弱いかと言うと、とんねるずや志村けんの貧乏家族のコントを見て泣くくらい(笑)笑いの中にも家族愛が詰まっていて、貧乏で恥ずかしいという思いを抱えているにも関わらず、幸せいっぱいに見えてしまう・・・物語としての目新しさはありませんが、斎藤さんの無邪気すぎる明るさに、なんだか心が温まる舞台でした。


NIY 『出来ちゃった婚』 (エムキチビート)


エムキチビート最年長であるNIYさんのお芝居は、積み重ねた人生経験がテクニカルを超えてダイレクトに観る人の心に訴えかける、鬼気迫るものでした。
出来ちゃった婚をした夫婦がすれ違い、子供を虐待し、果ては夫が妻と子供を殺してバラバラにして遺体の前で語るという物語。それはただの語りではなく、妻や子供の人格が夫の体から叫び声をあげるというもの。
サイコな物語というにはテクニカルな部分でもっと追求できた作品ではあると思いますが、ここで大切なのは、そのテクニカルの青い部分を埋めて有り余る心の叫びがNIYさんのお芝居からは伝わってきたということ。
お芝居をする上で技術は大切だけれど、必ずしもそれだけではないと。まるで体現するかのようなNIYさんの演技。「家族との関わりの在り方」、真にその問題と向き合ったからこそ出せるその鈍い輝きを、NIYさんは座ったままのその体から驚くほど表していました。
別チームの演目で、同じ「出来ちゃった婚」での悲劇を描いた作品があります。それはNIYさんとは間逆の、若く最年少である中泰雅くんの作品なのですが、正直、演技力はタイガ君の方がありました。しかし、物語の厚みを感じさせられ、背中をゾクゾクとさせられたのは、間違いなくNIYさん。その違いはやはり、人生経験から得たものの差なのかなと思います。
役者としてのキャリアは短いけれど、表現者としてのNIYさんの資質を確かに感じさせるその存在感は、エムキチビートという劇団に彼の存在が欠かせないものになることを予感させるのです。


田中裕二 『手紙』 (エムキチビート) 脚本・演出:元吉庸泰(エムキチビート)


エムキチビートの真髄である、「生」をテーマとした元吉さんの作・演出作品。太平洋戦争で特攻隊として命を国の為に捧げる青年の、遺書である手紙を介しての家族愛の物語。
その静寂な空気、照明効果の美しさ、刹那刹那の瞬間の美しさは正に元吉ワールド。私が今一番信頼している演劇人である元吉さんの精神が目の前に存在するという事実だけで、胸が甘く疼きます。ただただ、その世界観が愛しいのです。
演じる裕二さんは、その儚い印象のルックスで、物語の空気感を自然と作り上げることが出来ていました。しかし千秋楽ではややセリフが走っている感があり、時間の経過と心の動きに整合性が感じられず、結果、最後の「お母さん」という言葉に思いが全て載せられなかったような気がしました。
千秋楽には元吉さんが不在だったので、そのせいで演技にブレが出たのかなと想像していますが、元吉さんがいなくてもその思想を演技に載せることが出来たなら、一番古い劇団員である裕二さんが天下を狙いに行くエムキチビートという劇団を引っ張っていく原動力に成りえるのだろうなと感じました。
そして、裕二さんの空気感は確かに独特で素敵ではあるけれど、やっぱり元吉さん自身の演技でこのお芝居を観てみたいなと思いました。「刹那を生きる」という演技で彼の右に出る人はいませんから。いつかFA3があるとしたら、是非にと願わずにはいられません。


ラムキ 『デジタル落語"Tan-meeeeei!!(from落語)"』 (劇団銀石) 演出:斉藤マッチュ(劇団銀石) 音楽:瀬名ヒロキ(劇団銀石)


前回の『頭山』に続き、クールなデジタル落語を楽しませていただきました!もう、私がどうこういうまでもなく、ルックスもファッションも演出も音楽も完璧。何より安定した表現力を持つラムキさんの独特さに引かれ、このデジタル落語というシリーズをもっともっと観たいと思わされます。落語を知らない私でも、その間口の広い表現のおかげで落語の世界を楽しめて、知的欲求をくすぐられる。そんな素敵な作品でした。


(続く)


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