今までのあらすじ

ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた、不毛な話し合いで消耗したコオは友人美奈に会い、録音した莉子との話し合いを聞いて客観的な感想を言ってくれ、と頼んだ
 

 
 「美奈、ありがとうね」
 
 コオは心の底から、感謝した。
 
 「私、莉子になんでこんな責められ方してるのか、全然わからなくて、
ケースワーカーはそれを止めることもなくって、ほんとに何もわからなくなってた。価値観が…めちゃくちゃになって。
足元がグラグラになったみたいで。美奈が、『莉子かおかしい』っていってくれて、今どれだけホッとしてるかわからないよ。
ありがとう。無理させちゃったね。仕事から直接きてもらったりして。」
 
 「ひどい声してたからねぇ…こりゃやばい、と思ったわよ。」
 
 美奈は涙を止められないコオにティッシュを差し出した。
 
「出口を塞がれるの。お姉ちゃんにはわからないでしょ、っていうから、分からないから説明して、って言っても説明しないの。でも、責任持ってやれ、とか命令するの。」
 
「うん、うん」
 
「もう、そんなにディスるんだったら、もう私はやらないからそっちで全部やってっていうと、『お姉ちゃんてそうやってかけひきするの。お姉ちゃんはいつもそう!!私はこんなに大変なのよ、そんな中でやってるのよ、って、そういうのお姉ちゃん得意だよね?』 っていうの」
 
「うん、うん」
 
「何を言っても、ただ責められて否定されるだけで」
 
「うん、うん」
 
「でも、私、たしかに子供のときいろんなこと大げさに言ってたと思う。
だって、親に、気にしてほしかったから。」
 
 「わかってるよ。」
 
美奈はいった。
 
「高校の時さ、親は妹ばっかりだから、家に帰りたくないって言ってさー、うちらの部室に入り浸ってたよね。」
 
 美奈は、少しいたましそうに言った。
 そんなこと・・・言ったっけ?
 確かに、『下校拒否症』と笑われるくらい、家に帰りたがらなかったけど。
 
 
 コオは思い出せなかった。
 
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