今までのあらすじ
Day500-今まで
ついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会ったコオ。
父の身分証を手に入れるため耐えた、不毛な話し合いで消耗したコオは友人美奈に会う。
真面目な顔をして、美奈はICレコーダーから伸びたイヤホンを耳に当てた。
コオは、目がくらみそうだった。
「お願い、美奈。莉子の方が正しいと思うなら、そう言って。ただ、私がどうしたらいいのか教えて」
美奈は、頷きながら、ときおり
「ここ、どれくらい続く?少し飛ばそうか」
といったりする。
コオは慌ててレコーダーを早送りする。
このとき、コオの”価値観”は完全に崩壊していたのだと思う。
莉子がおかしい、
かなりそれを確信していたにもかかわらず。
味方になってくれなかった別れた夫
莉子だけが心配だと言い続ける父
莉子の個人情報を守るだけの行政
そして、今日の浅見ケースワーカー。
悪いのは、おかしいのは私なんだろうか?
心臓がバクバクする。
私がおかしくても。
美奈はそれを、私にわかるように言ってくれるはず。
美奈とだって、いつだってべったりと仲良くしていたわけじゃ無い。
それでもコオの中には、美奈への確たる信頼があった。
はぁっと、美奈はため息をつきイヤホンを外した。
「悪いけどさ。莉子ちゃん、〇たま、おかしいわ。めちゃくちゃ。あんた、なんでこんなのにショック受けてんの。」
美奈は言った。